「倉田の右足だぁああああ」 忘れられぬ大阪ダービー

いよいよ7月4日(土)からサッカーの明治安田生命J1リーグが、約4カ月ぶりに再開される。我が愛するG大阪は、いきなり同じ大阪のライバルクラブC大阪との「大阪ダービー」が再開初戦となった。無観客試合「リモートマッチ」とは言え、ホームで迎え撃つガンバサポとしては、絶対に負けられない一戦である。そんな戦いを前に「大阪ダービー」について綴ってみた。

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【僕の好きな選手の一人、倉田秋(10)】

初めてダービーを生で観たのは2005年5月にアウェーでの一戦だった。4-2でG大阪が勝利するのだが、多くのサポーターは「ダービー=ガンバが勝つ」と印象を持っている人も多いだろう。リーグ戦の通算対戦成績は17勝5分6敗と優位に立ち、ホームでのダービーに限れば、過去10戦で9勝1分けと圧倒している。やはり「ダービーに強いガンバ」なのだ。

勝ち方も派手なものが多い。2006年の長居で行われたダービーでは6-1で大勝を収めた。フェルナンジーニョとマグノ・アウベスという当時の両FWがそれぞれハットトリックを達成するという、攻撃型チームらしい勝利だった。さらに遡れば、2004年にはホームでの対戦で7-1というスコアも生まれている。

しかし近年は僅差のゲームも多く、試合のラストまで「ハラハラ・ドキドキ」させ、サポーターにとっては心臓に悪い試合も多い。特に昨季のホームでのダービーはまさにそのような展開だった。

この試合、福田湧矢や髙尾瑠といった若手選手を先発出場させる。リーグ戦では2カ月近く勝利なし。いつもはラフな格好でベンチ入りすることの多い、指揮官・宮本恒靖がこの日は珍しくスーツ姿で現れたことからも、この試合に懸けていたことを感じさせる。若いメンバーが先発したことで「大丈夫なのか」という心配もあったが、前半を0-0で折り返す。「これはいけるかも」正直、そう思った。

そして後半10分、あの名言が生まれる。

「倉田の右足だぁああああ」。Jリーグ公式映像(DAZN)で実況していた下田恒幸アナウンサーの絶叫だ。右サイドでボールをキープし、髙江麗央からピンポイントのパスを受け取ったのは、10番を背負う倉田秋である。倉田はボールをワンタッチすると、迷わず右足を振り抜いた。ボールはゴールへと吸い込まれていった。

そのあとは我慢の時間帯が続く。C大阪にとっても負けらない戦いだ。しかしこの日は、G大阪の身体を張った守備が一枚上手だった。試合終了のホイッスルと同時に安堵(あんど)の表情を浮かべたG大阪の選手たち。「俺たちが大阪だ」。どんなにチーム状況が苦しくてもダービーは、必ず勝たなくてはいけない。かつての先輩たちから受け継ぐ、ダービーに強いG大阪を守り通した。

余談だが、この試合を僕はオフィスで、Jリーグ中継のサイト編集の仕事をしながら観ていた。倉田のゴールの瞬間、思わずガッツポーズをしてしまったことを今でも覚えている。そしてその日の勤務を終えた後、感じたことは今でも忘れられない。「もう十分じゃないか」。スポーツストリーミング配信サイトの立ち上げに参加するため入社してから、3年が経とうとしている時期だった。

立ち上げのバタバタが落ち着き、会社は進化の時期を迎えていた。そんな中で自分は好きなことができているのか。常に悩んでいた。大好きなJリーグ、大好きなG大阪が「大阪ダービー」という特別な一戦で演じた好ゲーム。その試合中継に関わることができて、どこか仕事に対する納得感が生まれ、次のチャレンジに一歩踏み出せる勇気が出てきた瞬間だった。

サポーターとして、そして仕事をする立場でこの一戦への思い入れは格別のものがある。社会は今、不安な空気が充満している。そんなときだからこそ選手たちには、いつも以上に気合いの入る一戦で、社会に力を与えてほしい。2020年7月4日、「大阪ダービー」をはじめとしたJ1リーグの熱戦が、人々の心揺らす試合となることを期待してやまない。

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