ブルーインパルスが飛んだ空を見上げて

2020年6月5日(金)、東京都心を航空自衛隊の「ブルーインパルス」が、新型コロナウイルス感染症に関わる医療従事者への感謝の思いを込めて飛行した。雲一つない青空が広がった当日、多くの人がその機影をひと目観ようと空を見上げた。SNSには「税金の無駄遣い」との批判もある一方、「勇気が出た」や「笑顔になった」との声が上がっている。賛否があるのは当然のことだが、僕は「人の心に響くものの大切さ」を改めて感じた。

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僕は社会人になってからメディアの仕事をずっとしている。その大半がスポーツを伝えるというものだ。新聞社のスポーツ担当記者(スポーツ面の編集を担当した時期も)、スポーツ中継のライブストリーミング配信会社でwebサイトの編集、そして今はスポーツイベントの広報といったものである。学生時代からスポーツを観るのが好きだった。野球、サッカー、陸上、ゴルフから、競馬やボートレースといった公営スポーツまで10代のころからテレビにかじりつき、時にスタジアムへと足を運んだ。そして将来の仕事を考えるとき、常に「スポーツの感動を伝えたい」とメディアの仕事を志し、その道を実現させた。

仕事にしている今でも、スポーツには感動の瞬間があると感じる。僕が記者として初めて夏の甲子園を取材したとき、開会式で球児たちが堂々と入場行進をする様子に思わず「じーん」ときた。それには行進する球児たちが、地方大会の激戦を勝ち抜きようやく手にした晴れ舞台という部分もあるし、全力プレー及ばず甲子園の土を踏めなかった球児を思うと、という2つの背景が重なった。いずれにせよ、ベストを尽くしているからこそ、人々の心を揺さぶるのだろう。

決して10代の高校生だけが「心揺らす」訳ではない。僕はサッカーJリーグのガンバ大阪のサポーターだが、何度もガンバの選手たちには「泣かされた」。2019年シーズンでいえば、第12節のC大阪戦「大阪ダービー」で決めた倉田秋の決勝ゴールには、仕事中ながら思わずガッツポーズしたし、第19節の清水戦では、その試合を最後に退団するファン・ウィジョに対し、チームメイトが胴上げした姿には、チームの結束のようなものを感じた。そんな選手たちの姿を見ることで、自分自身が力をもらい、「より多くのひとにスポーツの感動を」とエネルギーにしていった。

しかし新型コロナの影響で、国内のスポーツはほぼ止まった状態だ。僕も2月末にJ1リーグの開幕戦を観に行ってから、スタジアムに足を運べていない。どこか心がぽっかり空いたような日々を過ごしていた。そんな中でのブルーインパルスの飛行。僕は在宅勤務の昼休みに一眼レフカメラをもって近所の公園へと行った。轟音(ごうおん)を立ててやってくる7機に、夢中でシャッターを切った。「絶対ゴールを押さえてやる」というサッカー観戦時に似た感情で久々に心が躍った。

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ブルーインパルスには、最近ちょっとした縁があった。この春、現職で彼らのことを取り上げた記事作成に関わった。その際には航空自衛隊の「顔」として誇りを持ち、任務にあたっている様子が手に取るように伝わってきた。それだけにどうしてもその姿をこの目で見ておきたかった。

ブルーインパルスの一糸乱れぬ飛行は「かっこいい」の一言だった。一瞬で通り過ぎたあとは、なんだか力が湧いてくるように感じた。それはスポーツを観て、力をもらうことに似ていた気がする。

いよいよ、日本のスポーツ界にも無観客ながら再開の兆しが見えてきた。今月19日にプロ野球が開幕、そして27日にはJリーグの2部(J2)と3部(J3)が来月4日の1部(J1)に先立って始まる。スタジアムに行ける日はまだまだかもしれないが、スポーツのともしびが再びともるのは楽しみで仕方がない。淡々とした毎日から、少しずつ彩りがある日々になっていきそうだ。

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そして今回のブルーインパルス飛行から、改めて人々に響くものは必ずあると感じた。それが何かは人によって違うかもしれない。しかし僕がスポーツに響かされているように、スポーツには人々の心に響かせる力がある。そう信じて、自分の道を進まなくてはならないと改めて誓った。


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