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「銀河ノコモリウタ」出会いと想像力にここまで、はないはず<声を使うこと・後編>

<声を使うこと・前編
<声を使うこと・中編

さて、1人でもホッとできたのには会場の力もあった。ホールには植物の葉や枝がしつらえられ、床にはちらばるどんぐり、そして美術家・安野谷昌穂さんのオブジェが部屋のところどころにきらめく。どこからどうみても、嬉しくなる空間。

やがてどこからかビリンバウの音がして、途端に部屋の空気が変わった。Kawoleさんたちが入場してきて、宮沢賢治の夜がはじまる。

IsaGuitarraさんの、物語を編むようなギター。渡辺亮さんの、森のざわめきをそのまま一身に引き受けるようなパーカッション。精霊そのものの安野谷さんが格好よすぎる。
そして、Kawoleさんの声は、ああなんて素敵なんだろう。大地からお話を託されて伝えてくれる、そんな佇まい。
「どんぐりと山猫」
「農民芸術概論」
「銀河鉄道の夜」
これらを読んだことはあったけれど、Kawoleさんの声とこんなに素敵な音楽で、掴みきれない賢治の世界と新たに出会うのは、なんて幸せなんだろう。

終盤、ジョバンニに見えているものを思い描いているうちに物語が終わりを迎えたあと、にぎやかにメンバー紹介が行われて、ライヴの夜は幕を閉じた。途中に出てこられた女性の精霊さんがものすごく美しかった。

ライヴの後で、ミュージシャンの方々と、一緒に朗読で参加する方とで顔合わせをしていただいて、ご挨拶の場面だからマスクくらい取れば良かったとあとでうじうじすることになる。ほんとうに私は不甲斐ない。ふがふがである。刺激の多い夜に、完全に閾値越えだ。

レコーディングはおそらく2月頃だろうということでそれまでの間に何度だってうじうじふがふがしながらできることを何でもやることにしよう、自分なりに声を出すことも、賢治作品を読むことも。

こうして私は知っていたと思い込んでいたはずの世界がほんの一部だったことを知る。ひとりひとりは宇宙だから私の世界も決して小さくないはずで、ただ内側から見るばかりでなく、扉が開いていると感じたときには外を覗いてみたり、思い切ってドアの外に出てみたらいいんだと思う。

内側を耕すことを大切にしながらも世界の扉を開けていきたい。変化を恐れなくていいんだと思う。そもそも宇宙は膨張しつづけているんだもの。光の速さよりも早く。
出会いと想像力にここまで、はないはずだから。

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