無になる

いつ終息を迎えるのかもわからない事態に心身ともに疲れきっている職場の仲間。加えて、ややこしい人間関係や事案が毎日のように起こって、その度に、相談に乗ったり愚痴を言い合ったり、いい仲間に恵まれて自分は幸せ者だ。

言葉にすることで、かなり気分が楽になり、共感することで、それぞれが糧になっている。だいたいの人間は、相談する時には既に答えは出ているのだ。ただ、聞いて欲しい、うなづいて欲しい、わかる、わかる、と言って欲しいのだ。

今、抱えている問題は、なかなか厄介で、そう簡単には解決できそうにない。仲間とぐるぐる渦巻くやりとりで、そうだよ、そうだよ、と何とか、鎮まっていく。

真面目な人ほど、一度気になると、とことん気になるものだ。しまいにはその事ばかりが気になってしまって一日中、その話をしている。

解決できない理由は、問題の相手が生身の人間だからだ。性格なんて、変えられるものではないし、こちらの考えが正解かどうかなんて、誰にもわからない。ただ、どうしても、気になって精神衛生上良くない状況だ。

どうしたらいい?と相談された。こんな自分に答えられることは、ひとつだけだった。

無になる。

それしかない。


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