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街のきれはし〜代官山はじめてのおつかい、失敗



雨の代官山。本を買い店先で傘を広げていたら、僕と同年配の男性が、すみませんお願いがあるのですが、と声をかけてきた。

「すぐそこの店で限定スニーカーを買ってくれないでしょうか、ひとり一足しか買えないんです、すでに一足買ってしまって、オリンピックのスケボーのヤツ、子どもに頼まれて…。」

危なくなければ怪しいことは体験してみることにしているので、ハイハイいいですよ大変ですねと安く請負った。

男性から三万円と入場QRコードが表示されたスマホを渡され、店に入るときタブレットにスマホをかざした。

あれ◯◯さんですか?と若い女性店員が何やら画面を見ながら怪訝そうに眉をひそめた。

いや息子に行ってこいと言われて、よく分からないですけどね、と自分でもよくわからないが演技に熱が入り、役作り上必要なので、息子として、なぜか千葉真一の息子(次男のほう)を頭に思い浮かべてみたりした。

やっと入店出来たが、頼まれたスニーカーは当日予約だと買えないとのことだった。アクリルケースに収まっていかにも特別扱い、という感じだった。購入の仕組みが理解できなかったが、あの男性はたぶん前日迄に予約を済ませていなかったのだろう。

とっとと店をでた。お金とスマホを返しながら男性に経緯を告げると、木陰に隠れて僕を待っていた男性は、そうですかとビニール傘をさした肩を落としながら街に消えていった。

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