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デフレ社会は良い社会

昨日は営業日でしたが、ご来店いただいたある方から「本屋をやってみたい」との相談を受けました。その相談を受けて私がお話させていただいたのは、今がデフレ社会だということ。このことをよくよく認識する必要がある。デフレ社会をどう生き抜くかの戦略が大事だということをお伝えさせていただきました。

経済評論家に長谷川慶太郎さんという人がいました。長谷川さんの社会分析が大好きで私はよく読んでました。

1980年代のバブルの時には土地の値段が上がりました。株価も上がり、物価が上がり、給料が上がる。すべてが上昇する社会でした。それがバブルの日本でした。

しかし、そのバブルの中で「今から物価が下がるデフレがやってくる」と言ったのは長谷川慶太郎さんでした。ほとんどの人は相手にしなかったですが正しかったのは長谷川慶太郎さんでした。その未来予測できる眼力、すごいものがありました。

長谷川慶太郎さんによると長い人類史の中でデフレ社会というのは本当に数少なくて、最も大きかったのが19世紀のヨーロッパ。その次が現代の日本だと長谷川さんは言います。

デフレ社会では、物価が下がる。

それはモノが有り余るから。
モノの価値が無くなるから。

これは戦争が無い社会にしか起こり得ないものである、デフレ社会とは良い社会だと長谷川さんはいつもおっしゃってました。

デフレ社会は物が売れない。だから商売はしにくくなる。しかしそれがデフレ社会であり、平和社会の宿命なのだとか。

それが嫌なら戦争すれば良い。

そしたら家は無くなり、食べ物は無くなり、たちまち物が必要になってインフレになるというのです。

デフレの時代は頭を使わないと物は売れないと長谷川さんはいつも言ってました。ありきたりな物は十分にある。

昭和の時代に日本全国で展開した店舗はダイエーでした。

駅前の一等地に店舗を持ち、そこに生活必需品を並べる。これがダイエーの戦略でした。売れないわけがない。ダイエーは大躍進しました。

しかし、そのダイエーが赤字に転落します。バブル崩壊後にデフレ社会がやってきた。ありきたりな物はもうみんな持ってる。ダイエーの品揃えが面白くなくなったのです。人々は、もっと個性的で、もっと面白くて、大量生産できない魅力的なことを追い求め始めたのです。

この大量生産・大量消費が終わりデフレ社会になった途端に、やってきたのが、さぬきうどんのブームでした。

裏の畑でネギを取って来いとか言ううどん屋。立地の悪すぎる山奥のうどん屋。薪で茹でる時代遅れなうどん屋。看板も無いようなうどん屋。1時間しか開店してないうどん屋。

こういったうどん屋に全国からお客さんがやってきました。なぜか。他にはない個性だったのです。それは大量生産できない、大企業が真似しにくい、圧倒的な魅力でした。

デフレ社会で物を売るにはアイデアが必要だよ…という長谷川慶太郎さんのサジェスチョン。その答えはこれかとさぬきうどんブームを見て、私は思いました。

世界一のうどん屋とGoogleで表記される高瀬の須崎食料品店とか面白いです。だって、椅子がなくて、テーブルもなくて、うどんの出汁もなくて。(笑)
店主の「うちのやり方はコレ」という個性だけであれだけのお客様を集めるのですから。

なタ書のキキさんもそうです。お店は2時間しかやってないし、座ってタバコ吸ってる。それを言うと「私、キキさんに店番してくれって言われたことあって、店番したことあります!」と昨日の方は言われました。あの店主のゴーイング・マイ・ウエイぶりの凄さ。

つまり。

デフレ社会においてお客さんを確かに集めているのは、圧倒的な個性を放つお店なのです。そして、絶妙な店主のわがままさ加減。

(つづきです)

しかし、個性的なことをやろうとしたり、人と違ったことをやろうとすると、私たちは躊躇してしまいます。

なぜか。

私たちはそういう教育を受けてきたからです。みんなと同じようにやり、人と違ったことはやらないように。答えは常に一つ用意されている物がありその答えを正しく同じように回答することが正義だ、と。

「第三の波」を書いたトフラーは、そうした教育は大企業の大量生産をら可能にするために必要だった20世紀の正義だと指摘しています。

しかし、大量生産の時代は終わりました。

これからは前時代にはなかったニーズや魅力が求められることになる。それには同じことをやっていてはダメなのです。

「躊躇することなく、わがままにやってください。本屋をやるならそういうスタンスでやってください。私たちはそういうことをやってはダメだと教えられてきましたが、時代は変わりました。自分を思いっきり出さないとダメです。」

そういうアドバイスをさせていただきました。

日本一、集客している商業施設はどこでしょう?

それはディズニーランドです。

漫画やアニメの空想を描く作家はたくさんいましたが「あれがミッキーのお城です、パレードもやります」と、その空想を現実にしたのはディズニーが世界で最初でした。

世界一、お客さんを集客している商業施設はどこでしょう?

それはラスベガスです。

街すべてがギャンブル場というドラゴンクエストのような世界。それを作ったのはハワード・ヒューズだと言われていますが、脱日常、普通からの脱却ぶりはぶっ飛んでいます。

豊かな平和社会になって到来したデフレ社会。それは一般的な物があふりかえることで出現した社会です。

そして。

そこが先に求められるのは、ちょっと普通ではない、一段階上の工夫とアイデアが必要になって来る。

長谷川慶太郎さんはお亡くなりになりましたが、私の中でずっとその言葉は生き続けていると同時に、お店にやって来られる若い方達にもそのままその言葉をお伝えしている次第です。

#koko書房
#香川県
#古本屋

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