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数学者は物理学者が嫌い、逆もまた真

この本で物理数学を学びました。この前にも違う本を使っていますけどね。


ディラック論文の解読に手こずりながら、自分の数学理解に少々自信が揺らいできたので、久しぶりにこの本を開けてみました。

尻切れトンボの連続やんか!


高校生で数学大好き物理学にも興味津々な子が手を出してみたくなるような作りになっていて、私もそれに心惹かれて手を出した口ですが、今読み返すと、ソフトカバーで割と分厚いのでずっしり感があるのとは裏腹に、何も頭に残らないなーって感じます。

相対論のあの方程式(ううん $${E=mc^2}$$ ではないほうの方程式)の導出までを手際よく語った本が、この著者さんにはあって、そちらにはずっと前にお世話になってます。あれはあれでいろいろ弱点がありましたが、とにかく勢いで最後まで読み通せてしまう勢いがありました。

しかしこの本はというと…たとえば量子力学において必須の抽象ヒルベルト空間を理解するためにベクトル空間の説明がされていて、いちおう基本はカバーしてはいるのだけど、それがどういう風に使われるのかはいっさい説明されないまま、次の章の扉になって、違う話題が始まってしまう、そういう作りです。

著者さんがとても苦心されているのが今読むとよくわかります。泣く泣くいろんなところを省いているなって。

物理数学はとても扱いにくいです。中学の理科は、計算については小学校の算数で済ませることになっていて、高校の科学はというと中学数学で間に合わせるようにカリキュラムが(文部科学省によって)定められているのに、いざ大学に進むと、大学の数学科で習うような数学を物理学の初歩でいきなり使うような無茶ぶりがふつーにあります。ひどいと大学院で習う数学を、物理学学徒の一年生に使わせるような大無茶さえあるところです。

大げさに言いすぎたでしょうか?

この段差をうまく処理するために「物理数学」という区分けを設けて、とにかく使い方をマスターしろお前らとごりごり学ばせています。

学ぶ側にすれば大いなるジレンマに晒されるわけです。物理数学をマスターしないと量子力学どころか解析力学の初歩すら学べない、それでいてそうした力学について学ばないと、物理数学は本当にはわからないという、どうしようもないジレンマ。

これは遡れば、数学者と物理学者の長年の不仲に根差しています。

物理学者側が「便利やからこういう計算法でええやん」とバリバリ使い倒すやり方が、数学者側から見ると「お前らAHO!?」だったり、反対に数学者たちが「どうだ美しいだろう」と体系化していった数学を、物理学者たちは「あかんこいつら何もわかってへん」┐(´д`)┌ヤレヤレ だったり、そういう不仲が19世紀いやもっと昔からヨーロッパで続いていて、今も世界規模で続いています。

何かこう、じっくり腰を据えてのオリエンテーションに時間を割いてもいいのではないかって、前から考えています。学徒たちに、長年の両者の確執について語っていく、そういう教え方があってしかるべきではないのか!

「うーん」

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