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忘れられた小5英語

英語を習うのが中学スタートでなくなってすでに何年も経過しました。「活動」の名目で英語学習が小学校で義務化されたのは、2011年4月から。そうです東日本大震災の翌月から、つまり福島原子力発電所の原子炉制御で大混乱が続いた頃のことでした。

この2011年4月から、最終的に2018年3月までの7年間、小学五年生と六年生用にそれぞれ文部科学省から配布され、使われ続けたのが、この教材でした。

念押ししますがこれは教科書ではありません。「教材」です。英語の授業スタートが小5に繰り上げられたのは2020年4月からです。上の二冊はそれよりもっと前である 2011年4月 より 2018年3月 までの7年間、全国の小5、小6生に使われた「教材」です。なにしろ「活動」扱いだったから。

それぞれ60頁にも満たない、薄い本です。ワークブックと呼ぶのもおこがましいような薄さです。

この二冊、ガイジンの英語教師(いわゆるALT)たちにはあまり評判がよくなかったようですね。「使い物にならへん」みたいな。

そういう前知識とともに目を通してみたのですが…

うーんこれはこれでとても慎重に練り上げられた教材、というか教え方が、おそらく都内のいくつかの大学附属小学校で何年もかけて試行されながら形になったものだなって気がします。

私が興味深く思ったことがらを、以下思いつくままに箇条書きしてみると、

① 徹底して耳から英語になじむようになっている(テキスト文にあまり頼らない)

② 読み書きは後回し

③ 日本語脳から慎重に英語に移行させていく

ほかにもいろいろあるのですが今はこの三つについて考えていきましょう。

③からいきます。小5篇の最初の単元で、生徒たちに自分用の名刺を作らせて、名刺交換ゲームをさせるようです。これ、現行の小学校英語でも継承されていますね。英語を学ぶ(少なくともなじませる)のだからローマ字で名前を書かせるのかと思ったら、どうもそうではないようです。「与謝野晶子」(小5)さんであれば名刺に「与謝野晶子」と書き込ませるみたいですね。どこが英語活動やねんとツッコミを入れているようでは青い。日本語だろうが英語であろうが氏名は同じ発音「ヨサノ・アキコ」になるので、名刺上は日本語でも、それを声にしてしまえば英語への越境を果たしてしまうのです。

とはいうものの実際の授業では担任の先生が事前に全生徒にローマ字表記による名刺を作っておいて、それを各生徒に配って、それをお手本に各生徒が同じものを各自何枚か(おそらく自宅で)作らせて、そして名刺交換ごっこをさせているようです。そのほうが子どもたちもその気になりますよね。「YOSANO Akiko」のほうが与謝野さんもかっこいいと思ってくださるだろうから。

名刺交換にあたって、担任教師の裁量でいろいろ工夫できるようです。この方はじゃんけんゲームを取り入れてるようでした。

A「はろー」
B「はろー」
A「ほわっつゆあねーむ?」
B「まいねーむいずヨサノアキコ。ほわっつゆあねーむ?」
A「まいねーむいずテヅカオサム。ないすとぅーみーちゅー」
B「ないすみーちゅーとぅ」

ここまではデジタル教材にあるテンプレートらしいのですが、ここにさらにこんなゲームを取り入れているのだそうです。

A&B「ろっく、しざーず、ぺーぱー、わんつぅーすりー!」

じゃんけんポイです。英語です。負けた側は「ひあゆーごー」と笑顔で自分の名刺を渡します。5枚集まったら席にもどってこの教材に貼り付けさせるのだそうです。

このやり方は巧いですね。小5生ならこんな幼稚で頭の悪いことでも楽しんでくれるでしょうから。

これは嫌味で言っているのではありません。小5生はこの手のゲームを楽しんでくれるのですが、小6になると嫌がるのです。これは実際に当時この教材で教えていた方の話です。

個人的な話になりますが私も子ども英会話教室に小5まで通っていました。たしか小2~3のとき旺文社系のところに、それから小4~5のときはおとなのひとも通っている(ようでしたが見かけたことがない)英会話学校に通わされましたが、何の手ごたえもないし、何も身に付かないまま、クリスマスに向けて変な英語劇をやらされた覚えがあります。小6からはあるつめこみ塾に送り込まれて、中1で習う英語を習わされました。それまでの英会話教室とあまりに違うので、本当に同じ英語なのかと思ったほどでした。

今の子たちは、全員が同じ目に遭っているのでしょうか。

そうそう現行の小5生の英語「教科書」はこんな風です。


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