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小学校英語はどうやって作られたか

2011年度より17年度までの8年間、小5~6向けに使われていた英語教材を紹介します。

教材です。教科書ではなく。文科省による関連資料はこちら

英語の授業は当時は中1スタートでした。

小学校での英語必修化への第一歩として、2011年度より「活動」の名目で、英語が小5より教えられるようになった際の、教材です。

この二冊の分析は後に回します。小学校英語がどうやって始まったのか、さかのぼってみるのが今回のお話です。

1986 年4月 22 日 臨時教育審議会「教育改革に関する第二次答申」で、英語教育の開始時期について,検討をすすめることが明記されたのが始まりのようです。これたしか中曽根康弘内閣の頃ですよね。ALT制度スタートがこの翌年からでした。

「よき国際人はよき日本人であることを深く認識し、国を愛する心を育てる教育、日本文化の個性をしっかり身につけさせるとともに、諸外国の文化、伝統などについて理解を深めるための教育が確立されな ければならない」 

この「よき国際人」という理念のルーツは1974年のユネスコによる「国際理解、国際協力および国際平和のための教育ならびに人権および基本的自由についての教育に関する勧告」のようです。

同74年に中央教育審議会が「教育・学術・文化における国際交流について」のなかで「世界の中の日本人」を謳いました。ユネスコ勧告を日本流に理解したものです。

そういえば同年4月に、与党議員で元・外交官が英語教育改革の一方針として「20人生徒がいてそのなかに見どころのあるものを1人の割合で英語特別コースを用意してあげればいい」という意の案を出して、これがその後論争となったことがあります。1947年度より学校制度が改められて中1での英語授業が事実上必須となって以来、日本の子どもは中学で英語を習って育つ定めとなったわけですが、その後これといった成果を挙げていないこと、一方で日本が工業品輸出国として躍進していくなか英語のできる人材への需要が高まる一方であったことから「生徒全員に英語習わせてもモノになるのは一握りだ。そもそも1億人いてそのうちの5%にあたる500万人が英語堪能であれば残り9500万人はエーゴワッカリマセーンであっても日本国は欧米相手に戦えるから、中学生が20人いたら見どころのある1人を選抜して英語をみっちり学ばせて、残り19人はほどほどでええねん」と冷徹な案が、与党議員より具申されたのでした。

中央教育審議会が同年に出した「教育・学術・文化における国際交流について」はこれとは別文脈だったと想像します。しかしその後このふたつがいろいろあってブレンドしていったようです。ひとつはALT制度のスタート(1987年)、もうひとつは小学校英語の可能性についての検討開始(1986年)。

1992年、つまり平成ですね、平成4年、小学校英語教育が国際理解教育の一環として指定された研究開発学校にて試験導入されました。

1996 年中央教育審議会「21 世紀を展望した我が国の 教育のあり方について」が答申され「第3部第2章国際化と教育」の柱の一つに「国際理解教育の充実」が掲げられました。

その充実とは、「我が国の歴史や伝統文化への理解を深め、日本人としての自己の確立を重視」する一方、「外国語教育の改善においては、小学校で国際理解教育の一環として、総合的な学習の時間などで英会話等に触れる機会や外国の生活・文化に慣れ親しませる」ことでした。この答申が「国際性豊かな日本人=英語を駆使して活躍できる人」という日本独特の国際理解教育における英語活動を生み出すきっかけになったのでした。

うふふ、上の文はとある方の論考のコピペです。もっとも少しいじりました。私自身の頭の整理用なので、ご容赦ください。

経済界からの要望ですね。使える人材(英語でばりばり対外交渉できるようなひと)をもっと育ててくれって。

1998年、小学校の学習指導要領改訂により、2002年度より小学校において国際理解教育の一環として英語活動が導入されました。

国際理解教育の一環としての英語活動の目的は次のように記されていました。

① 言語や文化に興味・関心をもたせるようにするとともに理解を深める。 ② 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る。
③ 聞くことや話すことなどの実践的なコミュニケーション能力の基礎を養う

国際理解教育の英語活動では、小学校段階で英語を教 えるということではなく、むしろ“英語に慣れ親しむ・ 楽しむ時間”という目的であったのでした。

そして2008年、文科省は2011年度から小学校 5・6 年生対象に外国語活動を必修化することを告示しました。

そし て 2011年度から外国語「活動」が必修化。


以下、年表です。コピペです。

2001:文部科学省は,小学校英語活動の手引き15) を作 成した。 

2003:文部科学省は「英語が使える日本人」の育成の ための戦略構想の策定;5年計画での到達目標を支え る戦略計画を作成した16) 。

2006,3月:中央教育審議会外国語専門部会は,小学 校 5・6 年生を対象に英語を必修化することを提案17) この提案は英語必修化の導入に関する国内での賛否の 議論を引き起こした。

2006,9:伊吹文明,元文部科学大臣は,英語必修化 は必要ないと表明した。 「必須化する必要は全くない。まず美しい日本語が書 けないのに,外国の言葉をやってもダメ」と必修化に慎 重な考えを示した。この声明で,英語活動の必修化が1年遅れた。

2007,8:中央教育審議会は,小学校で英語を必修化 することを提案した。

2007,10:中央教育審議会は,週1回小学校 5・6 年生 に「外国語活動」を教えることを提案した。9月に文部科学大臣が交代し,ここから英語必修化の動きが急激に加速した。

2008,3:文部科学省は,小学校の新学習指導要領を 告示した。それによって,英語必修化は小学校 5・6 年 生に 2011 年度から開始することが決まる。国際理解 教育としての小学校英語活動から外国語活動へと名称 が変わった。外国語活動は,成績をつける教科ではな く,評価はしない必修となった。 外国語活動の目的は,
①外国語を通じて,言語や文化 について体験的に理解を深める
②外国語を通じて,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る
③外国語を通じて,外国語の音声や基本的な表現 に慣れ親しませる

2008,4:文部科学省は,小学校外国語活動のために “英語ノート”を出版した。 テキストは,285 の英単語が含まれている。

2011,4年 小学校外国語活動が実施される。


こんなところですね。こんな資料もあるので参考までに。

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