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アラレちゃんがメガネっ娘になった本当の理由(その5)

前回のぶん ⇩


今回分析していくのは、残り2ページのうち、右ページです。


前回の分析で、私は唐突ながら「ローマの休日」を取り上げました。


某国の姫様という身分を、お供の男性が、なんとかまわりに気づかせないよう奮闘して振り回される様が、とても愉快で、また同時にこのおじょうさんの純粋無垢さが印象付けられる、そういう映画でした。


これは前回分析した部分。「アラレちゃんはなにのみたい?」「機械オイル」 コケるセンベイ博士。

「ジュ ジュースでいいんだ! ジュースで」(焦りながらの作り笑顔)

正体がわかってまうやんかこのあほー>と焦る彼の様に、読む側の私たちは<おっさんのほうがあほやー>と笑いながら<がんばれー>と声援を送ってしまうの。

そうやって読む側に笑いのツッコミ役を割り振りながら、笑いとテンションの波状攻撃を仕掛けてくるのが、前回のぶん(つまりひとつ前のページ)でした。


今回分析するぶんは、波状攻撃ではなく、もっとじっくり迫ってくる攻撃がきます。

「Z」の左右反転で視線が誘導されて…

センベイさん緊迫の時です。読んでいる私たちも、彼といっしょに緊迫します。<おねえさん何か気づいちゃったのかな、ハラハラ>と。


赤の矢印で、滑り台急降下! 

「ハナのあながない…」 ばんっ

でたーっセンベイさんの最終兵器、目玉飛び出しMAX!


「おのれのだってないだろがっ‼ マンガなんだぞマンガ!」

「あらホント!へえ ハナミズがでないから便利ねえ」と夫婦漫才で締めくくる

巧いわ~


そしてお待ちかね、いよいよ最終ページの分析です。


再びドアが登場します。


社交界デビューを果たしたメガネ姫は、扉の向こう側におそるおそる足を踏み出して…


左右反転Zにそって駆け出すと…

キキーッ ドカン!



この最終コマ、鳥山先生はどういう意図で描いたのか、分かるでしょうか?

アラレの人間デビューが成功して、ほっとしたところに、この大事故が起きてしまった、つまり彼女は人間ではないと丸わかり…


そうですこの最終コマで、作者さんは…


アラレは結局失敗作でした、センベイのあほーあほーだひゃひゃひゃひゃ!


…と読者の皆さんに大爆笑してもらいたかったのです。


この「…………」に注目! これは<せっかくうまくいったと思ったのに、結局アンドロイドだとばれちゃったよ、あーまたわしはやってしまった、ドクタースランプだわ>とセンベイさんが思っていらっしゃる現れなのです。


鳥山先生にとっては、このおっさんこそが主役で、その天才的なアホ科学者ぶりを見せつけるためのアイテムとして、アラレを出したのです。

おそらくこの第一話で出番終了の、使い捨てでした。

それに異を唱えたのが、鳥先生の右横の(青で括ったひと)このお方!


この第一話を担当編集さんが気に入って、ようやくOKを出して、続く第二話のネーム(鉛筆によるラフ草稿)を鳥さに描かせたら…

アラレが出てこないの


「ああ鳥山くん? 第一話のこの子、とてもいいのに、どうして第二話で出さないの? こっち主役にしなよ」

これは有名な裏話です。

鳥先生にすれば、天才的アホとして「ドクタースランプ」の異名を持つこのおっさんの天才的アホぶりを見せつけるために用意した、一回きりの捨てキャラでしたアラレは。

それゆえに第一話のこの最終コマで、彼女は人間ではなく、博士の珍発明でしたーと見せつけて幕としたのです。


ただ、ここではアンドロイドとわかるような描写はされていないのですよね。

鳥先生にすれば「博士の珍発明だったと、喫茶店のお姉さんにばれちゃったー」だったのでしょうが…

担当のマシリト氏はそうは読まなかった。

すごいぞこの子、黒縁メガネのスーパーガールやんか面白い!


そういうわけで、鳥先生とは喧々諤々あった末、第二話でのアラレ続投を彼に吞ませました。

鳥さにすれば、主役はあくまでドクタースランプ、しかしもうひとりの鳥さにすれば、主役は黒縁メガネのかわいいスーパーガール!


いったいどっちが主役なのか? その迷いが、第二話のこの扉絵にはうかがえます。


詳しいことは ⇩ で分析したとおりです。


[追記] この最終コマですが、よく見ると、とんでもない技が使われています。


視線誘導の線を引いてみましょう。


こうやってぐるっと時計回りしてですね…


ぐるっと回って…


アラレに戻ってきます。


ぐるっと時計回り。


まてよ、このほうが正確かな。


左上から視線がすべり台のごとく、アラレに急降下して…


一周して、またアラレ戻ってくる…


担当編集・鳥嶋は、この誘導ベクトルの連鎖を即座に見抜いて、興奮したのだと思います。「主役はこの子だ!



しかし鳥先生は、彼のそのことばに非常に戸惑ったようです。

作者そのひとが、このスーパー・マジックを、あまり自覚していなかったのだと思います。

「鳥山くーん、この子主役にしようよー」

そう言われてしまった鳥さの戸惑いが、この第一話扉絵にはよーく現れているように思えます。


時計回りのベクトル!


おそらくこの最終コマが描かれた後…

鳥嶋さんから「この子主役にしなよ」と強く促されての戸惑いが…


その後描かれた扉絵に、強くにじみ出たものと想像しますね。


詳しいことはここに分析したとおりです ⇩


以上、夏目の目のコーナーでした~(嘘)


つづくよ ⇩


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