見出し画像

前からずっと訴えてきたことだけれど

実はすでに他の社の中学英語教科書すべてに目を通していて、今回「New Horizon」とりわけ中1のものをじっくり分析していくにつれて、いろいろ頭蓋骨のなかをモヤモヤしたものがもやもやしだしたので、そのモヤモヤしたものに輪郭を与えるべく、午後ずっともやもや歩きまわって、このモヤモヤの正体について、以下のように輪郭を与えていいともやもやしながら輪郭を掴みつつあることを以下の三つに要約できるのではないかと今、思うのです。

① 教科書の英文が正しく改まっても「日本人の英語」は撲滅できない
② 国語教育が英語の授業の足を引っ張っている
③ 日本の英語教科書は「戦後民主主義」の残照である

教科書の英文がそもそも第一章からおかしいことはかなり前から気づいていました。それを腐すこともさんざんやってきました。しかし今回「New Horizon」現行版をじっくり読みこんでみて、ことはもっと大事なのだと気づいてしまいました。この教科書、少なくとも歴代の旧版に比べればずっと英文が改善されているのです。そこは評価したいのですが、分析していくにつれて、違うことが気になっていきました。それが①です。正しい英文に改まっても「日本人の英語」は撲滅できないだろうという懸念です。

今の、少なくとも「New Horizon」中1~3に関してはかなりの改善が英文テキストに見られるのですが、それは小5~6ですでに食いだめがあるからです。これって食いだめしておかないと、まともな英文を中学教科書には用意してあげられないということでもあります。この食いだめぶんに「日本人の英語」発症の菌がいっぱいあるため、中学英語が殺菌されたものであっても、いずれこの菌が各人のなかで発芽してしまうだろうと見ます。

②についてですが、私たちは「国語」を徹底的に植えつけられているので、外国語対応の母語脳「日本語」が育っていないのです。これは話すと長くなるのですが前者は旧・大日本帝国における「内地」のことばで、後者は「外地」の公用語として名付けられたものです。敗戦によって公的な歴史からは抹消されてしまった「内地/外地」の二重帝国のダブスタが、小学校国語にしっかり受け継がれてしまっています。これが英語教育に影を落としているのです。

③について。たかが語学教材に社会科的なトピックをやたら盛り込みにかかるのが中学英語教科書の特徴です。これは日本国憲法の前文が具象化されたものとみれば謎は解けます。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

戦争に大負けしちゃって、日本は加害国であり恥ずべき三等国であり、野蛮でファッショでミリタリーな忌むべき近代化の道を歩んで破滅したという思いを、これより世界は大きな秩序に取り込まれていく、日本はその一員として、世界の国々と仲良く平和にやっていくつもりだから今までのことはもうつつかんといてちょという懇願的宣言です。

これがどういうわけか、中学英語教育の世界で具象化されていったのです。

どうしてこんな風に、日本のどこにも存在しない、まぼろしインターナショナルスクールが中学校の、そして今では小学校の英語教科書の基本形になっているのでしょう。

日本における「民主主義」の幻影、残照とわたしは見ます。

これは歴史的な目線で眺めることで、見えてくるものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?