水族館からイワシの群れを連れ出したい
■思い出の青色
夜の水族館で見た、大水槽のイワシの群れが忘れられない。
2021年、新江ノ島水族館の「DarkAquarium -ダークアクアリウム-」に参加した。ランタンのほのかな灯りを頼りに、閉館後の消灯した水族館を散歩するイベントだ。通常料金のチケット+1000円でお土産のお菓子(おいしい)付きで、当日早く来てもチケットを提示すれば15時~17時の間、通常営業中の水族館を楽しめる。大満足なイベントだった。
たっぷり時間をかけて観察して、一番記憶に残ったのが相模湾大水槽のイワシの群れ。
黄色味のある丸い照明が月に見えて、魚たちは空を飛んでいるよう。海の底から海面を眺めている気分で、しばらく水槽の前から離れられなかった。
夢のような光景を忘れられず、水族館から帰った後もイワシが気になって仕方がない。回転寿司では今まであまり選ばなかったイワシのにぎりを食べて、出先でイワシの定食を見つけると食べて、スーパーでイワシを見つけると買うようになった。日常生活に入り込むイワシ。細かい骨が多くて、その食べ辛さに若干苦手になりかけながらも、なんやかんやでイワシへの愛は膨らんでいく。
水族館で見た宝物のような光景。これを水族館の外でも楽しめたらいいのに。
……。
それなら作ろう。
イワシの群れ(の思い出)を水族館の外へ連れ出そう!
■大水槽の万華鏡
大水槽で泳ぐイワシの群れは青い万華鏡のようだった。あの色を忘れないために、そのまま万華鏡を作ろう。
夜に工作していると、夏休みの最終日に慌てて宿題を片づけたことを思い出す。小学生のときも万華鏡を作った。懐かしい気持ちになりながら作業を進めていき……。
夜のうちに完成。ミラー板をちょうどいいサイズに切れなくて手こずった。硬すぎる。小学生の自分はどうやって作ったんだろう。めちゃくちゃ簡単に作った記憶があるのだけど、もしや工作キットを買ったのか……? 夏休みの宿題でキットを使うのはズルいと思う。
大人がズルしないで作った万華鏡。ミラー板のカットがズレて綺麗な対称にはならなかったけれど、少し歪な感じが良い。気がする。たまに空を見上げているような角度になるんだ。
何パターンか撮ったので動画にまとめた。
イワシの群れの不規則な動きと、大水槽の涼しい青色を思い出す。
大水槽といえば、サメやエイがイワシの群れに突っ込んで列をかき乱すたびに、水槽前で静かに観察していた人々の小さく笑う声が聞こえた。サメとエイは列を乱しても、周りから微笑ましく見守られるタイプなんだな……と思うと更にイワシが愛おしくなる。人の邪魔をして目立たないでほしい。
もっとイワシをちやほやしたい。ちやほやされ慣れてないイワシをさらにちやほやしたい。次はイワシの群れを楽しい場所に連れて行ってあげよう。
■イワシの群れAR
外にイワシの群れを連れて行くためにARを作ることにした。ARコンテンツを作れる無料アプリ「Adobe Aero」を使って、出先でイワシをちやほやする写真を撮ろう。
・3Dか2Dか
ローポリのイワシを作成中、自分のスマホは3Dの群れを表示できるのか……? と不安になり、慌てて別の3D数体を使って確認すると案の定表示しなかった。熱を持つiPhone8……買い替え時か……。
3Dは諦めて2Dでイワシの群れを作ろう。
これは死後も永遠にAR世界に召喚されることが決定したかわいそうなマイワシ。テクスチャ用に買っていた。新江ノ島水族館の相模湾大水槽にいるのもマイワシだ。約8000匹泳いでいるらしい。全く想像できない数。
ちなみに今回作った万華鏡でマイワシを覗くとこうなる。
目が映るとちょっと怖い。
そんなこんなで完成したので、作った画像をAdobe Aeroへ移動する。3Dと違い動作が軽い。iPhone8も大喜び。
試しに部屋で使うとこんな感じ。空中をふよふよする動きをつけて、イワシの群れのデータは完成した。さっそく外に出かけよう!
■ARで遊んだ写真
水族館で暮らしていたイワシたち(設定)が行ったことのない場所へ連れて行きたい。
ということで、電車に乗って……。
緑豊かな場所、昭和記念公園に来た。
彫刻も綺麗だけど、イワシも綺麗だよ。
この組み合わせ、焼き魚の匂いを思い出してお腹が空く。今日もいい匂いがするね、とイワシをちやほやする。
時々、イワシは水族館を思い出しているように見える。なんで自分は宙を浮いているのだろうと考えているように見える。AR世界に閉じ込めたからだよ。
ここはおいしい物を買ってイワシの気を引こう。
イワシは「ネモフィラブルーソーダ」が気になる様子。懐かしい青色だからね。
冷凍のシャリシャリしたライムが入っていて、爽やかな味がする。飲んだら舌が青くなった。魚の舌もかわいいんだよな、と思ってイワシを見つめるものの口が閉じているので覗けない。もう永遠に開くことはないのだ。
閉じた口も可愛いよ!
ソーダを飲み終わり、ネモフィラの花畑へ。
可愛いコスプレイヤーが撮影している傍で、自分はイワシと戯れていた。こっちに目線くださいと言っても、ARのイワシはずっと右を向いている。
右向きが一番可愛いと言ってちやほやしよう。
アヤメの上を飛ぶイワシ。広い公園内で迷子になりかけて、少し疲れている様子。アヤメとイワシの組み合わせイイ感じだよ、とちやほやした。
水族館とは真逆の色のポピーも見た。
ポピーは見頃で、丘全体が真っ赤に染まっていて感動。もっと天気が良ければ、空の青とポピーの赤が綺麗だったんだろうな。遊びに行った日は曇り気味だったので残念。ただ、イワシからすると暑すぎなくてよかったのかもしれない。日差しが強すぎると焼き魚になってしまう。
赤いポピーと青や白の花が混ざった場所もあり、これはこれで綺麗だった。この花束をAR世界のイワシに送ろう。
広い公園を3時間近く散歩して、丘の上でハートの形をした木を見つけたところでイワシをちやほやする1日は終わり! (スマホの充電が切れたので)現地解散です。
1日ARで遊んで、イワシの写真を撮れば撮るほどお腹が空くことがわかった。ともだちなのにおいしそう。おいしくて愛おしい存在。
■イワシと楽しんだ後
最後に、AR用に撮影したイワシを食べて終わる。煮て柔らかくなっているけれど、相変わらず骨が気になる。でも、それも慣れてきた。イワシの味は好きだし、いきいきと泳いでいるイワシも好き、大人になって(少し早い)夏休みの工作をするくらいイワシという存在が好き。去年行った水族館の思い出は、更に大切なものになった。
今回はイワシたちが行ったことのない場所へ遊びに行ったけれど、落ち着いたら海に行きたい。また江ノ島にも行きたい。
なんだかんだで、イワシの群れに一番合うのは「青色」だった。
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