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【座敷わらし】あの夜聞いた金縛りの音を再現したい

※現在、諸事情で一部の動画を非公開にしています。


忘れられない音がある。

座敷わらしが出ることで有名な某旅館で聞いた音。
当時小学生だった私は人生で初めて金縛りにあい、布団の周りをドタバタと走り回る足音と、謎の声を聞いた。

TASCAMとマイク

最近レコーダーとバイノーラルマイクロホンを買ったため、これで布団の周りを走り回る左右バラバラの音を録音できるのでは、と考えた。
私は今回、あの夜聞いた金縛りの音を再現したい。

夏の自由研究だ!


■音を作る前に旅館の思い出

某旅館には家族旅行で訪れた。
母が当時〇年待ちと言われていた予約を勝ち取り、私たち家族は座敷わらしが出る部屋に泊まることができた。

おもちゃの棚

部屋の棚にはたくさんのおもちゃが並んでおり、歴史のある旅館というよりは小さい子供がいる親戚の家のようだった。
同じ日に他の部屋に泊まった客が、おもちゃが並ぶ棚の写真を撮りたいと何度も部屋に訪れて、私たち家族は写真を撮っている間部屋の隅で静かにしていたことを覚えている。

たまに、写真を撮るだけではなく私たちと話をしていく人もいた。

「まだ昼間ですけど、おもちゃは動いたりしましたか?」
「いえ、特に何も……」と母が苦笑する。

夜になるとおもちゃが動き出すことがあり、それは座敷わらしが遊んでいるということらしい。また、直接金縛りにあうと幸福になるという。

金縛り=幸福

座敷童に絡まれる

なぜ?
よくわからないが、直接座敷わらしに構ってもらえたからだろうか。

話を聞いているうちに母のテンションは下がっていったが、私は「なんかすごい場所に来たぞ」とワクワクしていた。

……母のテンションが下がった理由は、今思うとホラー系が苦手な人だからだ。それならどうして座敷わらしが出る旅館に泊まったのかというと、座敷わらしは怖いモノではないという認識だったのだろう。それが旅館に着いてから、おもちゃが動いたり金縛りにあったりと、心霊現象の話ばかり聞いたせいでテンションが下がってしまったのだ。
これが原因か、旅館に泊まっている間の写真は一枚も残っていない。


■真夜中の音

そんなこんなで夜になると、本当におもちゃが動き出した。
おもちゃが並ぶ棚からカタカタと音が聞こえて、スイッチを入れていない鳥の人形がピィピィと鳴く。

「今、音がしたね」
「鳥が鳴いたよ」
「遊びに来てるのかな」と暗闇の中から聞こえる音を、家族で実況する。

しばらくして音が聞こえる間隔が長くなると、一人また一人と眠り始めた。
最後に寝たのは私で「金縛りにあえるといいな」などとのんきに考えていたのだが――


……真夜中、ふと周りがうるさくて目が覚めた。
私の布団の周りを、誰かがグルグルと走り回っている。
驚いて体を起こそうとするが動けない。

金縛りだ。

人生初の金縛りだった。
最初は嬉しかったものの、ドタバタとうるさい足音は、子供というよりはしっかりとした大人の重みがあった。また、遊んでいるというよりは、まるでこちらを煽るようにわざと大きな音を出して走っているようにも聞こえる。なんのために?

「もしかして座敷わらしではない?」と背中がぞわっとした瞬間、耳元で男の声が聞こえた。



これほし

なんなんだよ。

『これ』って金縛りのこと? 今、大人になってこのことを思い出すと「なんだそのいやらしい言い方は」と笑ってしまうが、当時は本当に怖かった。例えばこの金縛りが夢だったとしても、のほほんと育った小学生の頭には無い言葉づかいなのだ。
夢に出てくる内容は、元々自分の頭の中にあるものだと思っている。ありがたいことに、私の身の回りに言葉づかいの悪い大人はいなかった。大人が見るようなドラマや映画も見ていない。一体どこから出てきた言葉なのだろう。

結局私は「座敷わらしじゃない何かに金縛りにあってる!」と、めちゃくちゃショックを受けて眠った。


翌朝、家族と話すと金縛りにあったのは私だけだった。みんな熟睡だったらしい。母に「金縛りにあったら幸福になれるらしいね、よかったね~」と言われて、私は苦笑い。男の声がしたとは言えなかった。

誰にも言えないまま、ネタにもできなかったからこそ、大人になってもまだ覚えているのかもしれない。
今年こそ、夏の自由研究のネタにしてしまおう。


■録音する

走り回る音を録音するのは簡単だ。

遠いTASCAM

①布団にTASCAMを寝かせる(かわいい)
②TASCAMにバイノーラルマイクロホンをつける。
③布団の周りを走り回る(人を煽るようにわざと大きな音を出して)

終わり。

簡単とは言ったが、ここで予想外に疲れてしまった。
一分も走っていないのに息切れして、運動不足を痛感。
水を飲んで休憩しながら音の編集をする。


できた。
(画像は『いらすとや』からお借りしました)

しあげに「これが欲しかったんだよなぁ?」を録音する。
ボイチェンで声を変えて何度か確認しながら、一番近いかなぁ……というのがコレだ。


めちゃくちゃボイチェンで変換しました!! って感じの男声になったが、こんな感じだった。

聞いた瞬間、子供(座敷わらし)の声ではないとわかる、妙な違和感のある男声。一応身近の男性に頼んで録音させてもらったものの、やっぱりどこか違ったのでボイチェン声を採用した。


■これがあの夜聞いた音

走る音と男の声を合わせる。
これが人生で初めて金縛りにあったときに聞いた音だ。


ぜひ横になって、目を閉じながら聞いてほしい。


Q・これが欲しかったんだよなぁ?
A・はい、そうです。


再現出来て満足。
布団で眠るTASCAMよ、ありがとう。

近いTASCAM


※無事に完成してよかったが、最初に投稿した動画(走り回る音)はなぜかYouTubeに削除された。

画像8

性……的……?
いらすとやの画像を変えたらなんとかなった。
変更前に使っていた『布団で眠る女性』の画像と、ドタバタしている音声の組み合わせが悪かったのだろうか。


■その後の話

当時は変な金縛りにあったことを隠してしまったが、最近になって母とこの話をする機会があった。どんな反応をされるかと思いきや、母は「それ絶対座敷わらしじゃないよね~」と笑うだけ。

安心した。
なぜ当時の私は母に話せなかったか、それは私が怖い目にあったことを知らせて母をガッカリさせたくなかったからだと思うのだ。せっかく家族で楽しく旅行に来たのにね。笑ってくれてよかったなぁ。


最後に、私が再現した金縛りの音を母に聞かせた時の反応を置いておく。


座敷童


結局ガッカリさせてしまったかもしれない……。

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