波のカナタ 高校1年生 3

ソフトテニス部 晶 祐一
ソフトテニス部男子に一年が十人入部する。二人は、ほとんど来ない。八人でいつも帰る。

晶は、祐一にちょっと、と手招きして皆から遅れて歩く。
「祐くん、ペアの相手決まってる?」
「んーん。決まってないよ」
「俺と組んでくれない?」
「え。いいけど。北海くんはいいの?」

「え。どして」
「え。だっていつも話してるし、同じ中学出身だよね」話してるのは、圧っつーか、存在感無視出来ないから、仕方なくだし。同じ中学で、合わないってわかってるし。→けど、同じ部活だし、他の人は合うかもしれないし、テニスは上手いし、わざわざ悪く言うのもな……。

「中一んとき、ペアだった」
「え。じゃあ__」
「けど、アイツ、試合当日にドタキャン。連絡もナシで。そのまま、辞めたの」
「__マジ?」
「これが、マジなんだよ。(アイツ怖くて)大きな声じゃ言えないんだけどね」
「あー。なんか、上からつーか、圧あるもんな」
「でしょ。でしょ。つーか、中学んとき、もっと怖かったからね。今は、ちょいマシかなー。つーか、慣れたんかな」黒髪だし、一人だったら、別に怖くない。

「けっこー苦労してんだね。イケメン、イージーモードかと思ってた」祐一くんが笑う。
「なワケねーじゃん。こっちは、機嫌損ねないように必死だし。実は俺、勝ち負けとか、どうでもいいんだよね。揉めずに楽しくやりたい。オリンピックに出る訳でもねーしさ。無理してまで、やりたくねーの」
「陸たちは、勝ち負けに拘る派だよね」前を歩く四人は、勝ちたいタイプ。あと、四人は淡々としている。

「そう。アイツ、ピリピリして、おっかないよー。試合で、ボール入んなかったらチッて、舌打ち」
「マジ?」
「マジー。機嫌悪いの隠しもしないし、挨拶もしない。__理解出来ねーわ」

「そのうち、揉めるかもな」
「やめてよー」
「じゃ、取り敢えずペアになろ」祐一が、晶に言う。
「やったー。よろしくね♡ 」
晶は、岩佐十 祐一(いわさと ゆういち) とペアになった。
八人が、闇に呑み込まれる。

©️ 石川 直生 2020.


功 晶 小田哲
朝の校門をくぐる。佐々木功が晶を見つける。
「晶! おっはよー」佐々木功は晶の背中をポンとしてサッと行ってしまう。

晶は、その背中を口をパクパクしそうになりながら
無言で見送る。
なんで。なんで__?
功を見ると身体が動かない。声が出ない。
自分が、自分じゃなくなる。避けたくないのに、近付きたいのに、一歩が踏み出せない。
ツライ__ どうしちゃったの、俺!? ヘンだよ。

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佐々木 功です。え。ありがとう。晶ー!なんか挨拶だって。晶です。え? えっと。え。柚子です。お金は大事だよ〜♪お気持ちだけで。