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短編・詩集

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自創作の短編や詩をまとめております。
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記事一覧

むにむにとさわる肉球やむなしと 悟り顔して細いまなざし

ふわふわの体に顔をうずめると にゃあと鳴く君 陽の当たる床

冬の窓、晴天のもとで

星降る街

幾多の困難を乗り越え、ようやくその街に着いた。 「お兄さん、どうだいこれ、安くしとくよ」 「必要ない」 【星降る街】のどこにでもありそうな露店で勧められたのは、奇妙な色をした豆のような粒である。 店主曰く、一応珈琲豆の一種なのだというが、空色をした珈琲豆など存在しないと、私の中の常識が告げている。 「珍しいでしょう。普通に暮らしていては、到底お目にかかれない珍品でして」 「だから必要ないと言っている」 「そう言わず、一杯だけでも…。天にも昇る気持ちになれますよ」 はっきりと断

眠れぬ夜のうちから

夢をみている ゆめから物語はうまれる そう思えばこのときだって 無意味、ではないのだろう

気のせい

ひとはつねに檻の中にいる あたらしいところへいくと何もかもから自由になったような気がするが 何のことはない 今までの檻から抜け出てあたらしい檻へと入っただけなのだ

天のこたえ

むかしむかし。 神様が人間たちに一本の杖をお授けになって、言いました。 「その杖を使えば、願いがなんでも叶う。しかし、ある時、合図を送るから、それに応えられなければ、お前たちが願いの対価を払わなければならないぞ。」 人間たちは不思議に思いながら、その杖をありがたく受け取りました。 幸運なことに、その杖を託された人間たちは皆善良な者達だったので、杖を託されて争いや諍いが起こることはありませんでした。 誰もが皆、思い思いに幸せに暮らしていました。 ある日、杖を持つ者たちがとあ

Caja de música.

私がそれを見つけたのは、古びた骨董屋の中だった。 Caja de música. その骨董屋を見つけたのは、ある休日の夕暮れ時のこと。 その店がある通りは決して人通りが少ない訳ではないが、誰もその骨董屋には見向きもしない。 店内も薄暗くて、何だか不気味な感じ。 その店に、人の気配はない。 店員さんもいないのかな?と思いながら店に近付くと、 私は突然、その店の一枚の窓に施された美しいステンドグラスに目を奪われた。 窓の外から差す夕日の光が透けて、綺麗な色が店内に差し込

principio.

むかしむかしあるところに、ちいさな村がありました。 その村では、皆がしあわせに暮らしていました。 principio. その村は、努力ができる者たちが集って、つくった村でした。 周りは山に囲まれ、清い水がありました。 ひとびとは、動物をつかまえたり、野菜やくだものを作ったりして生活していました。 村にはひとりの、ふしぎな力をもった少女がいました。 その少女はふしぎな力を使って《精霊(トーリエ)》と話ができたので、村人たちから《精霊の使い(スリータ)》として、あがめられて