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コロコロ変わる名探偵

はじめに

#ショートショートnote杯 というコンテストが開催されています。

簡単に言うと、410字以内のショートショートを書いて応募するコンテストです。作品タイトルは「ショートショートnote」というカードゲームで決めるのがルールです。
ですが、そのゲームを持っていなくても、以下のお題から選んで作品タイトルにしてもいい、とのこと。

1.『しゃべるピアノ』
2.『1億円の低カロリー』
3.『株式会社リストラ』
4.『アナログバイリンガル』
5.『違法の冷蔵庫』
6.『数学ギョウザ』
7.『コロコロ変わる名探偵』
8.『空飛ぶストレート』
9.『金持ちジュリエット』
10.『君に贈る火星の』

これを見て良からぬ願望が芽生えました。全部使って書いてみたい。

心のおもむくままに、全部使ってショートショートを書きました。
ぴったり410字です。どうぞ。


本編(410字)

金持ちジュリエットから、我が探偵事務所に依頼が届いた。
「ロミオ君に贈る火星の石を失くしてしまったの。探して頂けますこと?」

依頼料として渡された1億円の低カロリーカルピスを飲んでいると、助手のしゃべるピアノが報告してきた。ピアノ語で。

「ショッショッパーーーン」
「なにっ、空飛ぶストレートパーマの男が石を持ってるのを見たって!?」
私は無機物と会話できるアナログバイリンガルなのだ。

空飛ぶストパー男は株式会社リストラの社長であった。火星の石を未払い残業代の元手にするために盗んだのだ。
私はストパーを追い詰め、その口にギョウザを4つ押し込んだ!

「喰らえ、素数の数だけ食べないと死ぬ数学ギョウザだ!」
「おのれ…あと1つ…くれ…」

ストパーの遺体は、人体隠蔽専用の違法の冷蔵庫に封印した。

「ジュリエット様、石を取り戻しました!私は悪を許さない!」
「でも、ストパーを殺したのは悪でしょ?」
「必要悪だ!」

「なに、このコロコロ変わる名探偵


メイキング

はい、読んで頂きありがとうございました!
ここからはオマケです。出来上がりまでの過程を書きましょう。

改めて、10個のお題はこちら。

1.『しゃべるピアノ』
2.『1億円の低カロリー』
3.『株式会社リストラ』
4.『アナログバイリンガル』
5.『違法の冷蔵庫』
6.『数学ギョウザ』
7.『コロコロ変わる名探偵』
8.『空飛ぶストレート』
9.『金持ちジュリエット』
10.『君に贈る火星の』

まず、主人公を決めないと。
10個の中で人格を持っていそうなのは『コロコロ変わる名探偵』、『金持ちジュリエット』、あと『しゃべるピアノ』でしょうか。
ここで注目すべきは探偵がいること。探偵がいたらまあ事件が起きるよな、と直感的に連想し、「探偵が事件を解決する物語」にしようと決めました。

では、どんな事件なのか。
王道は殺人事件ですが、それだと最低でも「被害者」「犯人」「疑われる人」が必要で、とても410字に収まりそうにありません。
じゃあ別の事件だ。紛失物を探す話にしよう。
誰が失くしたのか。ジュリエットが失くした物を探す話にしよう。と発展させていきました。

そうなると、「ジュリエットは何を失くしたのか」が問題になります。残りのお題を見てみましょう。

1.『しゃべるピアノ』
2.『1億円の低カロリー』
3.『株式会社リストラ』
4.『アナログバイリンガル』
5.『違法の冷蔵庫』
6.『数学ギョウザ』
8.『空飛ぶストレート』
10.『君に贈る火星の』

これが難しかったです。ピアノや冷蔵庫はデカいので失くすのは不自然。「ギョウザを失くす」のも変だし…

と、ここで気になったのが『君に贈る火星の』。
これを「きみ」じゃなくて「くん」と読ませ、「○○くんに贈る」火星の何か、にするのはどうだ?
じゃあ、ジュリエットがいるならロミオ君しかないじゃん。
ロミオ君への贈り物として用意していた「火星の何か」を紛失した。大変だ探してほしい!なるほど、ジュリエットの動機として成り立つ!

こうして、
「ジュリエットから『ロミオ君に贈るつもりだった、火星の何か』を探す依頼を受けた探偵が、それを見つけるまでの物語」
という骨子が完成しました。

あとは、残ったお題をハマりそうなところに埋め込んでいく作業です。これもずいぶん悩みましたが、長くなるので省略。


こうして完成した本作品ですが、書いた直後はコンテストのルール違反だと思ってたんです。
しかし、「タイトルが10個のどれかなら規定内じゃない?」と気づいたので、「コロコロ変わる名探偵」のタイトルで普通に応募することにしました。

楽しかった!


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