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書皮をつける。

*こちらは別場所(しずかなところ)で書いた物を一つにまとめた記事となります。気に入った内容だったのでこっちにも持ってきました。


 本が好きだ。と言いながら本の扱いが雑だったりする。まず本棚を持ってない。あるのはこどもの頃から使い続け、仕切り板が派手に撓んでいる3段のカラーボックス一つだけ。いい加減買い替えないと、仕切り棚割れるんじゃないかってくらい撓んでいる。
(扱い雑なのに、本の状態に一喜一憂するんだねってツッコミは無しの方向で)
 扱い雑なくせに、出来るならきれいに保存しておきたい欲がある。手に取った証でもあるだろうが、角がつぶれたり、すり減ったりするのが嫌だ。移動中に読めるようにと鞄に一冊入れることもあるのだが、ちょっと入れ方が悪いと角がぼろっとなって自分が悪いのに「あーー……」ってなる。
 カバーや帯が捨てられない(なんなら中に入っているチラシすら捨てられない)人なので、掛けっぱなしにしているのだが、読んでいる内にズレて気付いたら角やら小口の一部が変によれたり折れたりしているのが許せない。あと棚挿しで締まって、本の出し入れの際に下手をして帯がぐしゃってなるのもいや。

 ぼくは体温が高くて、手も湿っぽいのだ。手が湿っぽい、汗っかきってことはだ、手汗や手からの湿気で本の表紙やカバーが汚れる、皺が寄る。それが嫌だったりする。
 そんなみみっちい苛立ちを軽減させてくれるのが購入時レジカウンターで巻いてもらう紙カバーだ。あれ掛けてもらってすぐだと本当に簡単に巻いてあるだけだけど、きちんと返し(袖)のところを織り込んでやればズレないし、ずれても犠牲になるのは紙カバーだ。

 ただこの紙のカバーも全能ではない。
 一・二冊程度ならお願いしやすい反面、大量買いしたときにお願いしづらい(ぼくは出来ない)。レジが混んでいるときもだ。さらに紙のカバーなので何の本かぱっと見で判断出来ない。それがもどかしい。

 本屋で掛けてもらう紙のカバー以外で本を保護するための存在を知ったのは中学の頃だと思う。初めてアニメイトという店の存在を知り、そこで透明カバーなるものを知った。こんなすごいモノが世にはあるんだと感動した記憶がある。ぼくにとってアニメイトは下敷きとラミカを買うほかに、トーンとこの透明カバーが買えるお店として刻まれた。
 お小遣いで本を買い、アニメイトで透明カバーを買いだめしていたある日気付いた。カバー足りんし、カバーもいい値段するな……と。そりゃ片っ端からカバー掛けてたら足りないよ。でもぼくはカバーを巻くのが楽しくてやめられなかった。

 でも……カバー買うお金でもう一冊買えるな。

 この気付きはよくなかった。いつしかぼくは透明カバーの購入をやめ、書店で巻いてもらう紙カバーをそのままにする方向にシフトしてしまった。

 グラシン紙、パラフィンの存在を知ったのは実は最近(ここ10年くらい?)だ。古本屋でよく見るというが、ぼくは古書店にほとんど行ったことない。行くこともあるんだけど、チェーンのCDやゲームも取り扱っている系の店ばっかりで、本がグラシン紙に包まれているような古書店に縁が無かったんだよね。
 たぶんついったで知ったんだと思うんだけど、知ったときにこれだ!! ってなったの。でもこれも何故か買うに至らなかった。試しにちょっと欲しいなぁくらいだったんだけど、ネットで買えるものが軒並み枚数が多い、サイズ感がわからないで手を伸ばしにくかったんだよね。
 脳の片隅に刻まれた「グラシン紙」という存在。いつかどこか、実店舗で見かけられたらいいなぁーと思って過ごすこと数年。意外な再会を果たした。やっぱりついったで、神保町にある文具店の呟きだった。
*リンク先の呟きはたぶん当時のものじゃない。いつごろか覚えてなかったので、検索かけて真っ先に出てきたものを添えている。
「行ける範囲の実店舗じゃーん!!」
 いける範囲ではあるが、意識して行かないと行かない場所でもある。あと古本祭りのときだけの限定商品だと思い込んでいたのだ。
*包んである状態が古本祭り仕様で、通常時はお店で一枚から販売しているようだ。

 思い込みとものぐさが重なって、勝手に「近くて遠いグラシン紙」と尻込んだ。そんなぼくのケツを蹴り飛ばしてくれたのが5月のイベントで手にした戦利品たちだった。
 お宝ちゃんたちをぼくなりに大切にしたい。大切って言いながら積み上げてるけど、少しでもきれいに持っていたい。そう思ったのだ。
 そしてぼくはやっと気づいた「世界堂ならあるんじゃね?」と。ここに至るまでに何年掛かってるんだ(呆れ)。
 ちょうど世界堂で欲しいモノ他にもあるし、いい機会だから聞いてみるだけ聞いてみよう。とぼくは外に出たのだった。

 世界堂に着いてまっすぐエスカレーターに乗り、紙類が売っている二階に足を踏み入れた。平日でも込み合うフロアなのに、休日ならなおさらだ。レジにはお会計を待つ人が列を作り、狭い通路は一人立ち止まっていると後ろを通るにも一苦労。並ぶ商品たちは気になるものばかり。

 ここがぼくの同人活動を助けてくれた世界堂の2階!!

 スクリーントーンの棚に誘惑されつつも、奥へ進む。紙コーナーのそびえたつ棚の前で、在りし日のぼくが「次のコピ本の表紙は何にしようかなぁ」とウロチョロしているような気がした。気だけね。あと思わず「表紙に使う紙の候補」を探したくなった。違う、そうじゃない。大きめにカットされている紙の棚をとりあえず眺める。それっぽいモノが見つからない。しばらくウロウロしたけれど、やっぱりない気がする。製図用のトレーシングペーパーも代用できるだろうけど、今回はそっちじゃなくちゃんと「グラシン紙」が欲しい。これは店員さんを捕まえるしかない?!
 品出ししているような店員さんはいない。レジはフル稼働。お客さんの待機列は途切れない。うろうろと不審者のようにさ迷って、気付く。レジカウンターの隅っこに人気のない「紙カウンター」があることに。視界には入ってたし、存在は知っていたけれど、ぼくはいままでカット済みの紙しか買ったことがなく、そこにお世話になったことがなかったのだ。
 紙のことだし、ここに立つ店員さんに聞けば置いてあるかわかるかもしれない。売り場にないだけで、奥から出てくる商品かもしれない。
 その日はじめてぼくは、世界堂2階の紙カウンターのレジ前に立った。
 休日の世界堂のレジカウンターは平日に輪をかけて忙しそうだ。それでも1階よりはマシだよなぁ。なんて店員さんに声を掛けてもらえるのをぼんやり待つ。しばらくして手の空いた店員さんに「お待たせしました」と話しかけられた。

「あ、あの、グラシン紙? パラフィン紙? っておいてますか?」

 なんで両方言ったの?
「ございますよー」と流れるように接客が始まった。世界堂でのお取り扱いのあるグラシン紙は四六判で1枚60円とのこと。やっす!! とりあえず3枚でいいかな? と戸惑いつつ欲しい枚数を伝える。と店員さんはその戸惑いを察知したのかすかさず「なににお使いですか?」素晴らしい接客。
「本にカバー掛けたいんですけど、やったことなくて」
「どのくらいのサイズが多いですか?」
「文庫と四六判ですかね?」
「それなら」
 店員さんは話しながら流れるように移動し、紙のサイズ見本の前でぼくのふんわりしたブックカバー計画の相談に応じてくれた。
 3枚を予定していた買い上げ点数は2枚増え、計5枚となった。現物は売り場ではなくレジカウンター奥にあるようで、お会計も含めレジへ戻る。しばらくお待ちくださいと離れて行った店員さんの後ろ姿を眺めながら、ここで大きな紙買うのはじめてだなとようやく思い至った。はじめて目にする店員さんの動きにワクワクが止まらない。巻かれた紙を買うなんていつ以来だろう。ポスター買ったとき以来? 目の前で枚数確認され、大きな包装紙に丸く包まれたはじめましてのグラシン紙。こんなに大きい紙を触るのはきっと小学生の頃までさかのぼるのではないだろうか。壁新聞を作った模造紙。これを書くためにいま、ちょっと検索したら模造紙も四六判なんだね。そりゃデカいよ。

 ついにうん年越しの小さな願いをまた一つ叶えた(最近そういうの多いな。いいことだ)。ほくほくとグラシン紙と共にぼくは帰宅の途に就いたのだった。

 さて四六判でお持ち帰りしたグラシン紙は、切るところから始めなければない。丸まったままの状態からとりあえず1枚剥がして、試作することにした。
 どの本にどれだけカバーを掛けるのか、まったく考えていなかったからだ。あとイメージもわかない。用紙サイズ四六判で文庫ならこのくらい取れると教えてもらったが、不器用なぼくでもそうなるのかわからなかったのもある。
 机では作業出来ない大きさなので床の上にグラシン紙を広げた。
 でけぇ。改めて思わなくてもでけぇ。すげぇー、これが本物のグラシン紙!!
 その昔、グラシン紙の存在を知ったときに、いろいろ調べてざっくりクッキングペーパーで代用してもいいのでは? とクッキングペーパーでいくつかカバーを掛けたことがある。個人的には悪くないと思うのだが、グラシン紙の手触りが知りたかった。あとグラシン紙の方が柔らかいと聞いたのでそっちも気になっていた。
 うおー。やわらけー、手触りがちがーう。
 深夜に一人テンション高くニヤニヤする。試作でカバーを掛ける候補はA4判のTRPGのルルブ、四六判とB6サイズ、一緒に買ってきた井上のきあさんの新刊(B5変形)、文庫となった。
 選出の理由はとにかく紙のサイズ感を知りたかった。切った紙のサイズ感、各種サイズに合う大きさ、実際に巻いてみてのサイズ感。とにかく手探りなので思い付いただけやろうかと。
 広げていた四六判を2つに折る。こんな大きさの定規もカッターマットもないので、折りこみを入れ真ん中から切り離すことにした。半分にしてもでけぇ。さらに半分に切る。四つ切にした紙の上にカバー掛ける候補の本たちを乗せサイズを一度確認。A4サイズのルルブはカバーありなのでこのサイズで包むことに。それ以外はさらに半分の八つ切がよさそうだ。
 ……しかし紙が柔らかい。柔らかくて本当に気を付けないとすぐにぐしゃってなる。折り目をきれいに付けるために折り返して反対側からも同じように折り目を付けたいのに上手くいかない。不器用が、不器用が唸り声を上げる。刃物怖い人間にカッターの刃も怖い。これ調子のいいときにやっておかないとだめかもしれない。手が震える……っ。
 試しに巻いた冊数は全部で7冊になった。うちカバーや帯があったのが6冊。付属品無しは1冊だった。

 □次回以降のための覚書□ 


  • 四つ切までは問答無用で切っていいと思う。四分割してから大きいモノがあるか考えた方がいい。

 ・四つ切で包める大きさ:A4 / B5

  • 思い付かなければ八つ切しちゃっても大丈夫。おそらくこのサイズがオールマイティーに使えると思う。

 ・八つ切で包める大きさ:A5 / B6 / 新書 / 文庫(A5)
 ・十六つ切で包める大きさ:*新書 / *文庫

  • 文庫に関しては好みになると思う。八つ切で文庫包むと袖側がだいぶ余る。余るが、*鈍器とかだと十六切だと巻けないし、薄いのも袖がつんつるてんなので本当に好みだと思う。

  • 世界堂で買うならカットしてもらえるか聞いてみる。神保町のとこはすでに半切だからそっちを候補にするのもあり。


 カバーありの巻き方は深く考えず、書店さんで付けてもらう紙カバーの要領で巻いてます。
 巻き方を考えないといけないのは本体のみの子たち。折り込むだけで落ち着いてくれないので、切り込み入れたり、糊付けしたりしてあげないとカバーにならない。そのための手間を惜しむかどうか。
 あとはどの本にカバーを掛けるかも決めた方いいかな。薄い同人誌も含め、書籍全部に掛けてもいいんだけど、ちょっとそれだと手間が掛かるし、紙を切り出すのにくじける可能性がある(たぶんこれがぼくにとって一番の障害)。必要な大きさはわかったので、カットされ袋詰めになっているモノを買ってもいいかも。それで賄いきれない大きなものだけ自力で切り出して巻く方向で。
 それとグラシン紙自体の保存場所と方法も考えないとなぁ。買ってきた原紙は丸めたまま縦置きでいいかなって気持ちある。デカいし下手に出して広げてぐしゃってさせるくらいなら。中に包装紙で芯も作ってもらってそこに巻き付いてるから。裁断したとしても四つ切までは丸めて保存かなぁ。八つ切も丸めて保存になるかな。とにかくぐしゃっとさせないことを考えるとそれが一番かも。

 そしてぼくは思い出した。以前クッキングペーパーでカバー掛けたことを。本はA4、それで縦(短辺)の長さ間に合ったのだから、八つ切ならラップの芯に巻いて、空き箱に保管できるのではないだろうか……と。
 ラップの芯と空き箱はいくつか捨てずにとってある。芯は主に足踏みマッサージのため。空箱はマスキングテープを収納するために。お仕事なく暇を持て余してる空の大きいサイズがあったはず。善は急げ? 思い立ったら吉日? 雑に置いてある空箱一式を持ち出し、まず中身を確認。ちゃんと芯も残ってる。早速芯を取り出して、八つ切を巻き付けた。短辺が芯より少し短く、箱にも収まる。おおおおおおお! きれいに保存できる最強の箱を見つけてしまった。ぼくじつはあたまいいな? よしこれで八つ切以下のサイズの保存方法は決まった。見た目? 気にしないよ。

 こんな感じで運用方法はだいたい決まったかな。これから一体どれだけの本にカバーを掛けるつもりやら。カバーや帯ずれが気になるのでカバーの掛かっている商業誌は下手したら全部カバー掛けるハメになるかも。……書籍持ってない方だと思うけど、必要な数を切り出すのちょっと……震える。作業量に震えるんじゃなくて、マジで手が震える方(カッター怖い)。コスパを考えると自分で切り出した方が安く済む=その分巻けるカバーの数が増えるんだよなぁ。悩ましい。
 積みあがっている物、部屋の奥に追いやられている物、一気にやっても収拾がつかない。焦ることでもないので、のんびりやることにしよう。
 同人誌は申し訳ないけど特殊装丁、特殊紙も巻こう。特殊装丁、特殊紙巻いたら意味ないじゃーんって思うけど、手に取るたび指の湿り気を気にするよりはいいかなって。

 はぁ、楽しいなぁ。透明カバー片っ端から掛けてたあの頃みたい。やっぱりぼくは本っていう物体が好きなんだなぁ。ふふ、楽しい。


公開後追記
 サムネに付けてた写真があまりにあまりだったので変更しました。