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メリークリスマス🎄

夕方遅くに近所のパン屋へ行ったら、パンはほとんど売り切れていた。

お目当てはシュトーレン。今日に限らずいつも夕方には売り切れてしまうパン屋。今日はクリスマス。あるはずないかと思いながら、ショーケースを眺めまわす。

ケースの中には3種類のパンが2〜3個ずつ残っているだけだった。

お気に入りのバケットもないし、甘いパンは好きだけどケーキも買う予定だしなぁ、今夜のメニューとの組み合わせを考えながらしばし思案していると、奥から店主が出てきてくれた。

私の顔を見るや、「あっ」と気づき表情を和らげてこちらへやってくる。店主とはあるイベントをきっかけに、親しくなり、お店を訪れるとしばしおしゃべりを楽しむ。

目深に帽子を被り、マスクをしているのによく気が付いてくれたなぁとちょっとうれしい気持ちになりながら「シュトーレンはもうないですよね」と、試しに聞いてみる。

「そうなんですよ。シュトーレンはもう無くなって」

「今日はクリスマスですもんね」とこたえ、仕方ないなと思っていると、

「あ、ちょっと待ってください」と店主が奥の工房へ入っていった。
そして「切れ端なら残ってて、よかったらこれ食べてください」とシュトーレンを1枚包んでくれた。

クリスマスメニューに今夜一緒に食べようと残りわずかのパンをいくつか包んでいただきながら「今年はあまりクリスマスらしくないですね〜」なんて話をする。「こんな感じでお正月を迎えるのですかね〜」と。

そんな他愛もないおしゃべりをしているうちに、私の後ろに並ぶお客さんがやってきていた。

「全部買わずに少し残しておいてよかった」と思いながら、失礼しますと挨拶を交わし、クリスマスケーキを買いに斜め向かいのケーキ屋さんに向かった。


今年は確かにクリスマスらしくはなかった。いやクリスマスに限らず、2020年はいろんなことがそれらしくなかった。

でも、私は結構満足している。

それはしっかり立ち止まって、顔を見て、その人と話ができたからだと思う。
決して少なくはない人たちと、よく話をした。
それは心地の良い時間だった。
心からそう思う。

慌ただしく買い物をして、慌ただしく準備をして、慌ただしくこなすような生活にはもう戻らなくていいと思う。

らしくはなくても、ひと切のシュトーレンでほわっと心が温まるそんなクリスマスを味わってしまったから。

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