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メロディ

1.流星

生きること 死ぬこと
生きている人を上手に愛せないこと
私の身体は女だ 心も女だ 卑しい女だ 男が寄ると男という性別を嫌でも意識する 人ではなく記号を見る 性的に警戒をする 生理的な嫌悪感を向ける 時に身体が酔っぱらう
女が寄ると女という性別に安堵する 人ではなく記号を見る 身代わりを作る 特別のつもりでいる あなたは母であり姉であり叔母である 恋と友情の綱渡りが始まる
父って父であり男だ 母って母であり女だ 夢を見る 私は父に猛烈なセックスアピールをする 間違えてくれるように母が囁いた甘い声を真似て愛称を呼ぶ 夢を見る 私は妹への秘密の劣情を持て余している 悪戯を共有し垣根を無作法に越えたくてたまらない 応えられることのないセックスアピール 風見鶏が鳴らす秋の知らせは2人を美しい野原へ隠し未だ猛る未練の肉欲は荒野にて永遠を思わせる長い煙を一筋浮かばせた 恋人と手を絡める 金臭く冷たい檻はアイスクリームのように私を溶かす
友愛 親愛 恋愛 友達って何をもって友達? 友 親 恋人 その愛の違いって何? 役割って愛? 肉欲って愛? 温度って愛? セックスって誰としたらいいの 誰としたらダメなの 私を戒めてくれたって生き方までは親切にしちゃくれない 別に誰ともセックスしたくない 肉欲と理性って両立すると思えない 打算ならよく見てる ただ愛し合うってよくわからない あなたのことを記号で見てしまう……

だったら噛み合いましょう あなたと私が同じ生き物であること 肉を貫き骨まで砕く八重歯に滴る真っ赤な血で確かめましょう


夢を見る 届かぬよだかの星が輝いている


舞台 星々が逆さまに追いかけっこをする丸く広い丘 上に高台 なだらかに繋がる海 歪んだ鉄棒が天から乱雑に刺される荒野 地平線上に冒涜的に巨大な工場がそびえ立つ

2.歯車

小学生のわたしには変わった食性があり鉛筆の削りカスを食べていた 鉛筆削りで削りたてのものを目の前で咀嚼されると問わずにはいられないのか「美味いの?」とか「どんな味?」と聞いてくるクラスメイト おまえの目には赤青黒のかつお節やさきいかでも見えるのか カブトムシだって蜜を吸うのに木屑が美味いわけがない ほんとは味が気になるわけじゃないとわかっていても「美味いよ」と言ってみせた そんな嘘で凄味を持たせてどうする 互いに体裁のみの二言を終えた後は興味が失せたとみえる オバケが流行る小学校でもわたしのようなものの形容は難しい もしくは馬鹿馬鹿しい それももっともだ うたた寝の社会科では身体をはったエコロジーが関の山である 給食の時間のアナウンス 鉛筆の削りカスを食べているだけの名無しさん 味がしないものを噛み続ける

クラスメイトに腕を噛まれた その頃はちょっとだけわたしに意地悪な子だった ピアノもブランドの服も学力も何もかも上位互換の優等生 わたしの卑しい目が気に入らなかったのだろうか 似合っていない服がお気に召さなかったのだろうか 事の成り行きなんて今更確かめようもないが とにかくわたしは生き物を噛むというアプローチを覚えた 食性を覚えた それは鉛筆の削りカスを噛む人生よりも素敵なことだと思えた オバケのレストラン おしゃべりネコ 流行りの本はいつだって摩訶不思議 クラスメイトには変わった食性があり生き物の腕を噛んでいた 一つ目の機械の部品をはめる 赤い噛み傷が人の生を外す この場においてふさわしい形容ならば わたしの名前はー ー ー

3.冬のホットケーキまん

冬の夜 コンビニ帰りの吸血鬼 ついていくのは宙に浮かぶホットケーキまん 背後に長身のバッタ博士 異形の集団
ご存じの通り吸血鬼の主食は血液である カラメル色のケーキシロップではない コンビニで買ったホットケーキまんが欠けたランプになっていないのも理屈が通る どちらかというと説明がつかない関係はバッタ博士だ バッタは噛めないこともないが虫が苦手でわざわざ食料に回さないし側にも置かない 大人になれば好きも嫌いも選択のうちというもの 命の危機さえ覚えるような嫌悪を催す見た目のはずだが長身のわりに不思議と威圧感はない 物静かだが疑問には律儀に答えてくれる 低すぎない声が良いのかもしれない 理屈はないが バッタ博士のことをなんとなく気に入っていた 何より羽音を立てない どんなに良いバッタでもそれだけは勘弁してもらいたい カラメル色の良い香りが鼻腔をくすぐる ホットケーキまんはうっとりするほどかわいらしい 丸くて黄色いものには親しみを与える魅力がある 平坦な蒸し器でポクポクとあたためられていたまんじゅう 夜風にあたり頭が冴えてきている様子 滑らかな軌道をなぞり見上げると双子の月が並ぶ

ホットケーキまんの故郷はコンビニではなく正確には工場だ 大寒波……蒸し器……この温度差は時系列で別の生命体でもないと耐えられない 過酷な製造過程を幾度となく冬に生まれあたためられ食べられてきた先祖が今のホットケーキまんを生かしている 生かしてくれても生き方までは親切にしちゃくれない ホットケーキまんは明らかに思考を放棄していた 私に委ねていた 世界とかくれんぼしてみよう ふたりきりのお呪いを吹く お前はかわいらしいまんじゅう 触れると熱すぎるケーキシロップは柔らかいルビー 冷えきった私が誰かの幸福を恨まないように 絡める脈はあたたかさを 甘い匂いはときめきを届けるために生まれてきた 包み紙をめくると常夜光が夜に紛れた吸血鬼の青い輪郭を浮かばせる ドクンと脈打つ そう 秘密のかくれんぼさ 悪戯は愉快でなくてはならない こうしてホットケーキまんは私の心臓になった

4.夏のバッタ

バッタ博士との出会いは蒸し暑い夏 たぶん 私にもよくわかってない だって出会った時には死んでいたんだもの


丘の上の高台を目指す 一説では馬鹿は高いところが好きらしい 憧れを止めることはできない 息を切らして階段をのぼる過程で馬鹿はのぼった後のことが見えないからのぼれる故に馬鹿と悟る 滝の汗をかき頂に上がる 湿った髪を風が心地よく冷やす 少なくとも馬鹿は空を知るだろう たかが高台をのぼりきるまでにアップデートされる哲学がある

海が見える 海水浴が禁止されているため夏でも全く人気はない 私は広大で底知れない青から逃れられずにいる 波の音が聞こえる 繰り返し押し寄せる波は浜辺まで遠い記憶を運ぶ
小学校では様々な儀式じみたものを教わった 曰く日常 コミュニケーションのはじまり 先生にこんにちは クラスメイトにこんにちは 知らない人にこんにちは 知らない人までこんにちはとはどういうわけだろう 知らない人からこんにちは 見ず知らずの人に馴れ馴れしくあいさつされるほうが気持ち悪い 私が手本を見せてやろう 吸血鬼からこんばんは いただきますをかましてやる 例えが微妙にマズイのか不満に同意を得られたことはない なにせご近所では挨拶するしないで子供の良し悪しに飽き足らず家庭環境まで望遠鏡で覗けるらしい そんなやらしい日常は知らないなあ はじまりの裏には終わりがある コミュニケーションの終わり 忘れることのない 桜の季節 毎年きっかり3月の卒業式の合唱 ピアノが上手な優等生 ハーモニーと伴奏は揺るがぬものを辿る 人はさよならの代わりに歌を送るらしい かなしみをメロディにするらしい 涙を流す日付まで決めようがない だが泣けるまで卒業式を30回も開くわけにはいかない 私は一つ儀式を思い出す いつかかなしみはメロディになる

高台から降りると地面に横たわるバッタがいた そんなバッタは見たことがない 緑色で横たわっていなければまだ生きているよう 干からびていたらこの暑さに参ったんだろうと勝手な感想をつけられたがあんまり奇麗に形が残るただの死体以外になかった バッタを奇麗だと思ったことはない 飛んだりはねたりとせわしなく私はそんな虫が一番苦手なのだ 美しさとは留まることかもしれない ならば止まらない限り誰も美しさを表すことはできない 私はきっとそこらへんの人や虫が歩いているより倒れているか適当な石の上で座ってくれたほうがより美しいと思えるのかもしれない バッタについて何も知らないことを初めて残念に思った 「バッタ博士」 架空の存在に質問してみる 「美しさとは留まることでしょうか 知るとは看取ることでしょうか」

バッタ博士:それは ただ あなたそのもの

穏やかな声 誰にも聞こえぬ波の音は白衣を身につけた何かに届いた 曰く日常に沿わない異形の者 巨大なバッタの頭は青色だった

5.red room

丘の上に彫像が置かれている 冬の冷気で目を覚ます いいや 死者がいる 麗人 カラス ショベルカー 青い死者の首は一様に北を向いている コミュニケーションのはじまり 道に座り込んでいるカラスの前にブリキのちりとりを置く 夜に置き去りにされたショベルカーに花を差し出す 子宮を失った美しい人に約束の小指を渡す 美しい人は毬つきをする 手毬が跳ねる 落とされる 赤い手毬は金臭い 糸を引く 人の頭を堕ろす 跳ねる 跳ねる 手毬が……
次元を裂くような爆音 手毬がガツンと音を鳴らす 軽やかに手に戻る おもちゃ箱が丸ごとひっくり返される 手毬は明日へ飛ぶ 瞬きすると手毬は軽やかに手に戻る トン パチ トン 唄いましょう 唄いましょう 唄いましょう

轟音 巨大な工場の稼働音

dancing 死者の踊り 北を向いたまま地面を踏み締める 手を大きく振り上げる あれはリズム 巨大な工場が壊れたリズムを刻んでいる
dancing 引き裂く爆音 手毬が大きく跳ねる 小さく跳ねる 頭が転がる 予想がつかない 死者は示し合わせたように同じ振り
dancing 死者のコール・ド 私はブリキのちりとりを置く 花を差し出す 約束の小指を渡す 死者と全く目が合わない 鏡に姿は映らない

分断された丘は夢と現を噛み合わせる 時が止まった荒野 無数の星が夜迷う獣を貫いた 恋人のように鉄棒を抱いている あの獣の名前を 思い出せない

「バッタ博士」私は叫ぶ

真っ赤な頭 何度も刺したインクが滲んで穴を開ける みるみる腐った黒に侵食されていく 不吉な羽音 巨大な工場が分解し黒いバッタの大群が押し寄せる

バッタ博士:stone-cold 冷めきった料理は二度とあたたまらない

6.小さな街

道に座り込んでいる猫みたいなカラスなんて見たことがあるだろうか 一目で先がないとわかった わたしはカラス1羽くらいなら運べそうなブリキのちりとりを持ってくる 広い道だが動いたら車に轢かれてしまうかもしれない カラスの一生だって場所を選びたいだろう 考え無しなりに道端で死ぬのを憐れんだ 上空で機嫌が悪そうなガアガア声を鳴らしているカラスが2羽 あれは儀式か 曰くカラスの日常か お悔やみというものかもしれない やかましく思いつつわたしはちりとりを置きお入りよと導く 静物は動かない 地面との接着面を剥ぎ取らんと擦ってもカラスに期待する以上にちりとりが金切り声を上げるだけだ なすすべなし ひとまずカラスを眺めることにして膝を抱く ガラス玉の瞳は何も映さず寄り添うことを望まない つれなさがおとぎ話の真実の鏡を思わせる 黒い鏡 カラスの首は幻想的な角度を保つ 生き物は間違いなく死に向かいながらもあまりに長い距離が生の実感も死の予感も存在を薄れさせる 折り目のついた真っ白な紙の舞台 観客に背を向けスポットライトで伸びる影とのシンクロナイズ 目の前に 斜めに すぐそばに 羽一枚の揺れさえ確かにカラスは死の予感を取り戻していた カラスのために用意したブリキのちりとりは鏡の中でショベルカーに差し出された花となる これは道に座り込んでいるカラスだ コメディアンの小道具は悟りのための隙間を空けている 立ち上がる カラスから遠ざかり影は薄れゆく 折り紙の舞台は遠目からは家の屋根のようにも見える

7.鉛の心臓がかなしみを打つ

鉛の心臓がかなしみを打つ

stone-cold 冷めきった料理があたたまることはない
stone-cold 冷えきった魂は二度と蘇らない

大寒波 冷えた石は鍛えられる 部品となる 歯車となる 歯車は機械を繋げてやがて巨大な工場になる 布を敷かれたベルトコンベア 無数の煙突 工場は小休止中 染みついている錆のザラザラとした表面を撫でる 腕を振り上げ金槌を打つ 音が鳴る 目を焼く玉が散る それは真冬をいっそう凍えさせる鋭さである 音が鳴る 金染みに打つ かなしみに打つ かなしみを打つ ホットケーキまんが手を温める 手を絡める 手をカラメル テとテをカラメル ここはホットケーキまんの故郷 冷めきったまんじゅうをあたためる神秘 お前は工場でどんな不思議を作られるのか知っている 絡めるを食べられないけどカラメルのテって甘くてあたたかいはじまりの音かしら かなしみを打つ 夜に亀裂が走る 砕けた破片はきらめきながら夜空でお星さまになる 散り様をうっとりと眺める 私の砕けた胸はなんて綺麗なんだろう 垣根をなくし高鳴る心臓が浮遊する 月が輝いている 目を焼く魂が散る 心臓が脈打つ かなしみを打つ がらんどうが空いている 愛したのは月ではない がらんどうを愛している ホットケーキまんを愛していない 不思議を愛している リズミカルにお呪いの火花を散らす いる ない いる ない 生きている人を 愛せない
工場の規則正しい稼働音 次第に波は激しくなる 蛇腹が揺れ震える毒を空に吐く もはや金槌を打つ音は聞こえない

小学生のわたしには変わった食性があり鉛筆の削りカスを食べていた 鉛筆の削りカスを食べているだけで何者にもなれない 味がしないものを噛み続ける

クラスメイトには変わった食性があり生き物の腕を噛んでいた 一つ目の機械の部品をはめる 赤い噛み傷が人の生を外す 私の名前は吸血鬼 八重歯が通らぬ石を噛む

金臭く冷たい檻の中 はだかの獣は冷えきっている

8.da capo

美しさとは留まることでしょうか
知るとは看取ることでしょうか


地面に横たわるバッタについて

孤独相 低密度で相変異が生じた緑色の個体
群生相 高密度で相変異が生じた黒色の個体

さまざまな生活条件 特に個体群密度の変化によって異なる姿と習性をもつ個体が生じる これを相変異と呼ぶ

バッタ博士:それは はじまりと呼ばれた 我々の愛である

夏に生まれ 冬に死ぬ

9.バッタの夏

人の血には2つの色がある 赤い血が流れる 最も誘目性の高い色である 激情 欲情 炎 危険のシグナル 赤い薔薇の下には秘密がある

人の血には2つの色がある 青い血が流れる さざめく波が残骸を運ぶ 水深1万メートルの海の底 名も無き孤独が眠っている

はじまりの裏には終わりがある 疑問があり結末がある 死者とは揺るがぬ結末である 地上の者は必ずここに辿り着く

父の帰りは遅い 仕事って人のためにするものだ 互いに生きるために働いている 帰ってきた 振り返らずにゲームをしている 人は人のため以外のことだって持てる 自分のため 自分のための言葉 自分のための絵 自分のための音楽 自分のためを持つ人には孤独な時間がある きっとそっとしておくのが一番いい

チカチカと光る赤い部屋 男の怒声 爆音 奥の扉から水面の光が漏れる 男が泣いている 幼い妹を抱いて泣いている わたしは境で立ちすくむ

クラスメイトに腕を噛まれる なぜ食べるの? なぜ噛むの? そんな質問って馬鹿馬鹿しい あなたがわたしを噛んだこと それしか覚えていないのが悔やまれる 噛み返す勇気がほしい あなたがいてわたしがいること 孤独に呑まれて忘れたあなたに気がつくように

かなしみを化け物のように扱うのね
金染みは人から滲むことを忘れるのね

だったら噛み合いましょう あなたと私が同じ生き物であること 八重歯に滴る真っ赤な血 瞳にたゆたう深い青 私の名前は吸血鬼 名も無き孤独を探しにいこう

……高台にのぼる人を見た 冒涜的であり罪であり決して揺るがぬ黒い城を組み立てた異形の者 広大で底知れない青から目を逸らすまいとじっと立っていた やがて地上に降りることを選んだ……

10.地上の星

:私のかなしみを映していたの
:それが我々の愛である
:私の金染みを映していたの
:それが我々の愛である
:バッタについて何も聞いたことがなかったのに

波紋が広がる 白衣に青い血が滴る 吸血鬼は地面に臥したバッタ博士を噛んでいる

北の扉を開く 丘の向こうには海が広がる あれは父の涙 掬い出して飲む それを人は終わりと呼ぶ 二つ目の機械の部品をはめる

:それを私ははじまりと呼んだ

心臓が呼んでいる ホットケーキまんのカラメルが切なく請う 吸血鬼はホットケーキまんを噛む

冬に食べられる運命のホットケーキまん 身代わりになるために生まれてきたホットケーキまん やわらかいルビーに八重歯を立てる 冬の道をあたためていた その優しさに甘えていた

柔らかすぎるまんじゅうと固すぎる歯 全く違う生き物に与えられたお呪いを遡る あたたかいカラメルと冷たい手 食べられたいホットケーキまんは寒さに負けてしまいそうな吸血鬼を忘れたことに気づく

夢の彼方 時が動き出す 鉄棒は丸い丘を巡り放たれた赤い影は現を見据える ドクンと脈打つ 外れた人の生をはめ直す 記憶の彼方 名も無き孤独に食われる鉛筆の削りカスがある 躊躇わずわし掴み赤い血と共に散らす 火炎は空気を踊り食い木屑にまみれた女の身体を猛然と燃やす

歯車が噛み合う 飲み込んだ喉がチクリと痛む
星がのぼる 冷えきった魂が永遠へ行こうとしている

:ふたりは冬を越えられない

ハーモニー:この世のものを噛んでやろう わたしの身体を差し出そう 地上を燃やし狼煙を上げ足は大地を踏み鳴らす 水深1万メートルの海の底 名も無く泣く孤独まで お前の名前を探してやろう

:何者にでもなろう 生まれ変わろう やがて孤独が名前を見つけていく

ハーモニー:stone-cold 揺るがぬ魂 歯車が繋げる地上のリズム

あなたの名前はー名前はー名前はー



音楽 ジョゼフ・モーリス・ラヴェル『ボレロ』



轟くリズム 北の大地の果て 木屑を燃やし真っ赤な丘で踊るメロディ 地平線上にそびえる巨大な工場は共鳴するように煙突から煙を巻き上げる 腕を振り上げ祈りを捧げるように固く組む その姿は冒涜的であり 苦渋であり 快楽に悶えるようであり 地を這う獣の意志である

轟くリズム 地上の者を呼び寄せる 炎を囲む黒い影 はじまりを踊り終わりを踊る それは人間の儀式 曰く日常 繋がる海と噛み合う 白波が繰り返し寄せる 浜辺に子宮を失った美しい人がいる 赤い薔薇に隠された秘密 あれは私の孤独の残骸 構わず身体を差し出す 腕を伸ばし約束をする 噛めと誘う 倒れるまで 止まるまで 何度でも


メロディ

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