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宇宙食は箸でたべる

あるとき、宇宙空間が大爆発してたくさんの小さな塵が浮遊した。
それが寄り集まって星がうまれ、やがてわたしたちがうまれた。
わたしの骨は宇宙の塵でできている、
だからわたしの中には宇宙があり、
宇宙のなかにはわたしがある。

そうしてわたしは日本という国にうまれ育ったので
毎日お米をたべている。
わたしの骨はお米でできている、
わたしが吐く息は、炊いたお米に含まれていた水蒸気なのだが、
死んで箸でつまみあげられるまで
それは内包され、密やかにわたしを構成しているに過ぎない。


うんと昔、人は手で食べ物を掴み、そのまま口に運んだ。
箸の起源を辿ると、神具に由来する。
大切な神様に捧げ物をする時に、ばい菌が入ってはいけないという衛生観念から、
長い竹を二本使って食べ物をつまみ上げた。

無菌状態の国際宇宙ステーションで、箸を使って食べ物をつまむ。
足のあるものも無いものも
羽のあるものも無いものも
胸びれのあるものも無いものも、
人も鳥も魚も
特別な能力の区別なく、
三千大千世界にガンジズ河の砂粒のごとくオハシマス無数の仏もまた、
宇宙では皆が等しくぷかぷかと浮いて漂っている。

無相の法身と無二無別
食べられるものと食べられるものと食べられるものと、
食べられるものと。

やがて8万粒にくだけ散ったシャリが漂う。


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