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「お手玉遊び」

 「お手玉遊び」は、母から娘へ、代々家庭の中で伝承されてきた。
お手玉を作ることで裁縫を覚え、遊びの中で数の数え方を覚え、友達とあそび、社交性が芽生える。お手玉遊びは教育の側面があった。
「手玉に取る」の手玉とは、この、女の子が遊んでいたお手玉のことで、
相手を意のままにすること、翻弄する、ということ。

 あの時、なんでお母さんに電話したんだろうね。
お母さんは「悪いところは直すからって、そう言いなさい」と言った。でも、直すところはないのだと、彼は言った。直すところがない場合、どうすれば直るのだろう? どうすれば元に戻る?

 最初に右手に2つ、左手に1つのお手玉を持ちます。右手に持っていたお手玉を左へ、左のものを右へ、右手にあるもう1つをまた左へ、という順番で投げます。右手に持っていたお手玉を左へ、左のものを右へ、右手にあるもう1つをまた左へ、

 喉の奥が締め付けられて苦しいです。肺が圧迫されて苦しいです。心音もうるさく、絶えず耳の奥に響いています。心臓は中央より少し左側にあるので、身体の左側がより生きにくく感じます。本当に知らなかったのだけれど、気持ちをぶつけ続けるとそれは暴力になります。きれいだとおもっていたものが全部、わたしの中から出てくるものも、外のものも区別無く、汚いものになってしまいました。

右手に持っていたお手玉を左へ左のものを右へ右手にあるもう1つをまた左へまた右へ、わたしご飯食べてないの、熱があるの、背中が痛いからさすって、怖いからそばにいて、今日も眠れない、お酒を飲み過ぎた、薬を飲み過ぎた、かなしい、かなしい、かなしい、そうでもない、ふつう、よくわからない、よくわからないけど、思い出す、思い出すと、しにたい――、そうやってあなたの心配を奪い尽くそうと、した――

 放り投げたお手玉は放物線を描き、私の手のひらに返ってきた。
自分がしたことは必ず自分に返ってくるから、それは宇宙の法則です。ピンとこないまま聞き流していた言葉を今、思い出す。


バナー写真
モデル:s

◎パフォーマンス情報

「右心室・左心室」

日時
2021.10.2(土)16時スタート
雨天延期

出演 安部寿紗、s

開催地
横浜市中区初音町1-18-5
ハツネウイング
(かいだん広場からご覧いただけます)

※展示空間ご鑑賞には会期中有効のフリーパスが必要となります。受付でご購入頂き、検温、アルコール消毒などを行ってご鑑賞頂けます。
詳しくは「黄金町バザール2021」リンクをご覧ください!

https://koganecho.net/koganecho-bazaar-2021/


当日、パフォーマンスはInstagramライブ配信を行います。
https://www.instagram.com/kazusa_abe/



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