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不安過去障害

書けども書けども過去である。追いつくことは永遠にできないそれを追っているだけで時々虚しくなる。それでもただ書くことを今はしなければ私にできることが何もない。スタジオの向かいの階段広場に腰掛けて、上段の広い面積を有する場所ではホームレスのおじさんが一人で喋っている、のを聞きながら、少し肌寒いと感じ、ながら、膝の上にノートパソコンを広げてこれを書いている。鳩が足元によってくる。鳩だけは今だ、という感じがする。鳩は、誰が誰だかわからないから今初めてそこに居る感じがする。頭の中にある人たちはみんなもう既に過去の人たちで、頭上を通り過ぎる轟音が電車の音だと、京急本線を通り抜ける早朝の電車の音だということも見ずともわかってしまうほどに、過去だけが私の頭の中に詰まっている。つまらない。つまらなくなってしまったこの街を出ようと不動産屋に連絡をする。今日を明日の支え棒にして、そうして住み始める次の街もきっとまたつまらなくなってしまうのだろうけれど、そんなことを繰り返しているうちにきっと頭の中はすり減っていって、歩いた分だけ靴底はすり減っていくように、知った人に初めまして、なんていう日が来るのだろうか。
寒い、と感じながらも部屋に上着を取りにいくことも、お腹が空いたと感じながらもご飯を炊くことも億劫に感じて、結局またあの人のことを思い出す。もう会うこともないかもしれない、連絡の取れ無くなってしまった人。一言、元気だから連絡しないでくださいと言ってください。

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