SNSの外にある、彼女の魅力。
彼女は、SNSをあまりしない。
それはとても彼女らしい。
ハイテクよりもローテク。
新しいものより古いもの。
派手なものより慎ましいもの。
直接的より間接的。
完璧より隙のあるもの。
格好良いものより面白いもの。
真面目より不真面目。
語るより行動。
表面的なものより、本質的なもの。
彼女とは、高校入学と同時に出会った。
同じ部活で、同じ楽器だった。
彼女は頭が良くて演奏も上手だったが、なぜかいつもへらへらしていた。
へらへらしていたが、学生の指揮者になった。
そして学生指揮になっても、へらへらしていた。
へらへらして見えた彼女は、自分を持っていた。
チームの雰囲気や過去のやり方を、変えることが出来る人だった。
同じ楽器の仲間という存在を超えて、わたしは、人としての彼女にとても興味を持っていた。
部活を引退して、受験シーズン前。
みんなが自習時間に受験勉強をするなか、彼女は久石譲の本を読んでいた。
「久石譲はクインシー・ジョーンズが好きだったんだよ」と言っていた。
この余裕はどこから来るのだろうと感じていた。
大学時代には、彼女は突然アイルランドに行くと言って、
数年を過ごし、帰ってきた。
久しぶりに会った時、外国に住んでいたはずなのに、彼女は以前となにも変わっていないように見えた。
武勇伝のようなものの1つも話さない。
聞きたい気持ちを抑えて、わたしも何事も無かったかのような態度で接した。
社会人になり、関西に遊びに来た際には、大阪や神戸ではなく、岡山や直島に行きたいと言った。
地域に馴染んだ料理屋さんや、手作りの雑貨屋さん、美術館などに興味を持つ。
若くして易々と「ゲストハウス」に入っていく彼女を、語らずとも旅慣れた人だと思ったことを覚えている。
最近の彼女は、生け花をしたり、アルプホルンを吹いている。
たまに、ギャグ漫画や詩集を貸してくれる。
わたしが好きなものと彼女が好きなものはいつも、完全には一致しない。
少しだけズレている。けれど、とても近い。
そして、彼女が好きだというものを、わたしもとても好きだと思う。
彼女はあまりSNSをしない。
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