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おげんさんに学んだ「豊かさ」とミュージカル

11月3日にNHKで放送された「おげんさんといっしょ」を観た。
このシリーズは第1弾から観ているけど、今回も星野源さん扮する「おげんさん」による弾き語りや音楽談義など盛りだくさんでありつつ、アットホームなゆるさもありつつ、「音楽っていいなあ」と改めて思った。
放送から1か月以上経った今でもふとした時に録画を見返しちゃったり。

ダンスを観るだけの時間

この中でダンスコーナーがあった。おげんさんが歌うのでもなく、星野源の曲で構成されたインストゥルメンタルの楽器演奏をバックに、ダンサーさんたちが踊るというもの。セットも白背景と少しの段差というごくシンプルなもの。
このコーナーをやるきっかけは、1963年に放送された番組『「夢であいましょう」~上を向いて歩こう特集~』のアーカイブを星野源さんが観たことだそう。この中で坂本九の音楽にのせてダンスをするだけのコーナーがあった。
星野さんは「今はテレビでダンスだけを5分くらい見ることってない。それを当時は皆で観て楽しんでいた。その様が豊かだと思った。これを今できるのはこの番組しかない」と言っていた。

ダンスが無駄な時間だと思っていた

このダンスコーナーは本当に素敵で、星野源さんの曲をクラシカルなアレンジにしつつ、振り付けには「恋ダンス」などを交えていて、家族で観ても楽しめるようなものだった。

このダンスコーナーを観て思い出したのが、以前観たミュージカル映画「雨に唄えば」だった。
この映画はとても好きなんだけど、ずっと思っていたことがある。
ジーン・ケリーのダンスシーン長くない?と。
例えば、主人公の俳優が「こんな映画を作ろう」と提案する『ブロードウェイ・メロディ』のシーンはなんと13分超もあり、終わったころには、今なんの話だったっけ状態である。
長いなあ、そんなにダンス見せつけたいのか?と思っていたが、
その考えが違っていたことが、今回「おげんさん」を観て分かった。そのシーンを見ること、それは「豊かさ」なんですよね。

芸術鑑賞としてのミュージカル

ミュージカルにおいて歌やダンスは、感情を表現したりストーリーを展開させたりする機能を持っている。
確かにそうなんだけど、自分はその機能を求めすぎていたのかもしれない。
ストーリーにはあまり関係ないけど、素敵な音楽にのせてダンスをするだけの時間があっていいのかもしれない。そんな考えに変わった。
そもそもミュージカルはオペラ→オペレッタ→ミュージカルと派生して生まれたとされるが、例えばオペレッタ「こうもり」ではストーリー展開とはあまり関係なくただバレエを観るシーンがあったりする。
ここはちゃんとプロのバレエダンサーがパフォーマンスして、観客はそれも楽しんでいるのだ。
そういったことも考えると、格式高いオペラから大衆向けに変化したミュージカルの中で、上質な音楽とダンスをじっくり鑑賞できる機会が得られることはとても「豊か」なことなんじゃないかなと思いました。
(とはいえ子どもの時の自分だったら飽きていただろうから、それが分かるくらい大人になれたということかも)

古き良きミュージカルをあらためて

おげんさんに学んで考えを改めました。ジーン・ケリー、ダンス長いとか文句言ってごめんね。
最近のミュージカル映画は、より情報量が求められるのか、ジーン・ケリーがやるようなダンスシーンが入っていることはあまりないですね。『ラ・ラ・ランド』後半の長回しシーンくらいか。(これも過去名作のオマージュという意味合いが大きいかも)
劇場に足を運ぶのもままならず、ドラマや動画にしても「情報量」や「伏線」をモリモリにされているこの時代、おげんさんの言う「豊かさ」のアンテナを持ち続けられるようになりたいと思った。
「雨に唄えば」をもう一度観ようかな。

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