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個別最適化を目指した通信制高校の面接指導(その2)理論編

公立の通信制高校で数学を教えていますかとうです。

前回の記事で面接指導の目的について書きました。

今回は参考にしている理論について書こうと思います。

自分が参考にしている理論は個別化教授システム(PSI:Personalized Instructional System)です。

PSIはフレッド・ケラー(Fred Keller)によって1960年代に提唱され,アメリカの大学で実施されてきました。

PSIの特徴は次のような点にあります。

(1) 完全習得学習を指向している

(2) 自己ペースで進める

(3) 講義は生徒の動機づけを高めるためだけに行う

(4) 印刷された学習ガイドを使う

(5) プロクター(指導者)が通過テストの成績を評価する

つまり,教師は基本的には講義を実施せず,生徒は独習用教材に自分のペースで取り組み,質問には個別に教員が対応し,単元ごとに通過テストを受験し,合格しなければ次の単元に進めないようにすることで,完全習得を目指しています。

通信制高校には,中学校や前籍の高校で,クラス全員で同じペースでの学習についていけなかった生徒や,指名されての発言やグループワークなどに抵抗感のある生徒も存在するため,自分のペースで個人で学習を進めていけるPSIが合っているという生徒が多いというのが,自分の面接指導で実施したアンケート調査の結果からも見て取れました。

そして,これまでの算数や数学に苦手意識が強い生徒の割合も高いので,スモールステップで確実に習得していくことで,達成感や学びの成功体験を感じてもらえるのではないかと思っています。

個人的には,サルマン・カーン(Salman Khan)さんの本「世界はひとつの教室」を読み,数学は完全習得学習(masterly learnning)で学ばせなければ!と思っていた頃だったので,PSIはぴったりの方法だと強く感じました。

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教師の役割は,苦手な生徒には個別に支援や指導をすることとで手をかけ,得意な生徒にはやりがいのある課題とたっぷりとした時間を与えて見守ることで目をかけ,クラス全体に気を配る。

たとえ50分の面接指導の時間内に全ての内容が終わらなくても何も心配はありません。通信制高校の学習の基本は「自学自習」であり,自宅に帰ってから続きに取り組んでもらえばいいのですから。

生徒一人一人にとって学習内容の習得に必要な時間は違います。そして,私はその生徒にとって習得のために必要な時間さえかけることができれば,高校の必修科目の数学Ⅰの内容であれば,必ず習得できると思っています。

この考え方はキャロル(Carroll)の時間モデルに基づくものです。

キャロルの時間モデルでは,学校で同じように同じ時間をかけて教えたのに成績の差が生まれてしまうのを,生徒個々の能力の差ではなく,かけた時間の差であると考えたモデルです。

私は初めてこのモデルに出会ったときに大きな衝撃を受けました。このことについてはまた別の記事で書こうと思います。

色々と脱線もありましたが,自分が面接指導の拠り所としている理論はPSI(個別化教授システム)であり,その背景にある理論としてキャロルの時間モデルを紹介しました。

次回はこれをどのように実践に落とし込んでいるか書いていきます。