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個別最適化を目指した通信制高校の面接指導(その1)目的編

公立の通信制高校で数学を教えていますかとうです。

前回の記事で面接指導の文部省時代から続く通信制高校の面接指導の問題意識について書きました。※ 面接指導は全日制における授業に相当します

今回からは,それを踏まえて現在自分がどのような面接指導を実施しているのかについて書いていきます。

今回は面接指導の目的について書いていこうと思います。

まず初めに,自分の面接指導で最も意識していることを挙げるならば「個別最適化」です。

文部科学省が2018年に発表した「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」の中で,取り組むべき政策の方向性の1つとして「公正に個別最適化された学びの実現」が示されました。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/06/1405844_001.pdf

この個別最適化された学びの実現は通信制高校において,より切迫した必要性があります。

通信制高校には全日制進学校から転入学してきてほぼ毎日予備校に通いながら難関大学を目指すような生徒から,小学校から不登校で義務教育段階の学習内容がほとんど定着していない生徒まで,学力層が非常に幅広いという特徴があります。

(ちなみに自分の勤務校では,年齢層も10代後半から70代までと非常に幅広いです)

そんな生徒一人一人にとって学びになる,誰一人追いていくことなく,退屈させない面接指導をするためには,個別最適化を実現せざるを得ないという実情が通信制高校にはあるのです。

この「個別最適化」というキーワードを念頭に置いて読み進めていただけると幸いです。

面接指導を改善するにあたって,まず最初に目的を考えました。何のために面接指導を実施するのかと。そして「学習指導要領解説 総則編」を参考に以下の3つを設定しました。

目的①:自学自習で理解できなかった基礎的な学習知識の指導

目的②:自学自習の方法を身に付けさせる

目的③:その後の自学自習への意欲付け

面接指導においては,個別指導を重視して一人一人の生徒の実態を十分把握し,年間指導計画に基づき,自宅学習に必要な基礎的・基本的な学習知識について指導したり,それまでの添削指導を通して明らかとなった個々の生徒のもつ学習上の課題について十分考慮し,その後の自宅学習への示唆を与えたりするなど,計画的,体系的に指導することが必要である。(「学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編」)

通信制高校の学習の基本は「自学自習」ですので,この目的も自学自習を強く意識したものとなっています。

通信制高校における面接指導の機会は限られています(自分の勤務校の数学Ⅰでは年間わずか10時間です)。そんな限られた時間で指導するためには,それまでの自学自習で理解できなかったことに絞った効率的な指導が求められます。それが目的①です。

目的①:自学自習で理解できなかった基礎的な学習知識の指導

自分の勤務校の校訓は「自ら学ぶ」です。校訓とは,「学校で,教育上の理念・目標を成文化したもの」とされています。すなわち,入学時点では自ら学べない生徒も自ら学べるように育てることを目指すということです。

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/11/16/1363591_2.pdf(【参考】「校訓を活かした学校づくりの在り方について」)

ゆえに,自学自習の方法が身に付いていない生徒に,自学自習の方法を身に付けさせることが重要です。それが目的②です。

目的②:自学自習の方法を身に付けさせる

通信制高校では,学校で学習できる時間よりも自宅等で学習できる時間の方が圧倒的に長いです。ですので,学校でいかに学ばせるか以上に,自学自習でいかに学ばせるかが重要になります。学校から帰ってから,生徒に学習を継続させるための意欲付けを行っていくことが大切となります。それが目的③です。

目的③:その後の自学自習への意欲付け


このような目的を設定するにあたって,学習指導要領の「その後の自宅学習への示唆を与える」の「示唆」の部分について非常に考えさせられました。

広辞苑(第6版)で「示唆」を調べると,「それとなく気づかせること。また,暗にそそのかすこと」とあります。よく意味がわかりません。(ただ,「その後の自学自習を暗にそそのかす」というのは,教育なのにそそのかすというのがなんだかいいですね)

ですので,自分なりに,「示唆を与える」を方法を身に付けさせることと,意欲付けを行うと解釈し,目的②・③を設定しました。

このように「個別最適化」を念頭に3つの目的を掲げ,面接指導の改善と実践に取り組んできました。次回は面接指導で参考にした理論について書こうと思います。