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頼むから35歳の少女を見てくれ

35歳の少女。

柴咲コウ主演で、全体的に彩度が低くBGMも少ないこのドラマ。

「なんか暗そう」とか「重そう」と思って敬遠した人も多いのではないでしょうか。

しかし私は、どうしても、なんとしても、声を大にして言いたい。

「35歳の少女、めちゃめちゃ面白いよ」と。

今このドラマは三話がティーバーで配信中です。

今からでも遅くない。ここでは

①ざっとした三話までのあらすじ

②何故そんなに面白いのか

を書きます。

これを見て少しでも「見てやろうかな」と思った方。

今すぐ配信へ走れ!

◆ざっとした三話までのあらすじ

主人公の今村望美(柴咲コウ)は、めちゃめちゃ明るい、お調子者に近い小学四年生。

優しい家族に囲まれ、将来はアナウンサーになりたいという夢を持ち、クラスに気になる男の子もいて、とにかくすくすく育っていました。

しかし、自転車で豆腐を買いに行く途中でガードレールに突っ込み、25年という長い眠りについてしまいます。

望美が事故にあった当初は両親も必死に看病していましたが、一度危うくなった時父親(田中哲司)は「もう楽にしてやった方が良いのでは」と迷いが。

母親(鈴木保奈美)はそんな夫を責め、「私はあなたみたいに弱い人間じゃない」と言い放ち、夫婦は離婚することとなります。

その間妹の愛美(橋本愛)は、両親の離婚、母親は姉の看病につきっきりで寂しい思いをします。その結果、仕事はバリバリこなすけどメンヘラかまってちゃんとなってしまいました。

初恋の人である広瀬裕人(坂口健太郎)は望美に言われた「教えるの上手いから、先生になれば」という言葉が忘れられず教師になりますが、ある出来事が原因で辞めてしまいます。今は代行業で日銭を稼ぐ日々。

何もかもが様変わりした世界で、望美は目を覚まします。

母親は看病疲れで憔悴しきっており、三話では家に監視カメラをつけ、外から鍵をかけて望美を監禁まがいに。

父親は再婚先で義理の息子(竜星涼)がひきこもりに。25年前は優秀だった仕事の業績も右肩下がりです。

妹は彼氏(細田善彦)後輩(大友花恋)にとられ、腹いせに広瀬を恋人代行で雇い見せつけるなど、ヘラりまくり。

広瀬も望美に再会した際「目覚めない方が良かったんじゃねえの」と言い放ち望美を大泣きさせてしまうなど、かなりスレてしまっています。

二話で「目覚めない方が良かった」「何で私だけ、高校も大学も行けなかったんだろう」と自暴自棄になる望美に、広瀬は「成長しろ」と諭し、自分も協力します。

三話では成長しようとする望美に、母親が「他の家族と同じように、望美も自分から離れて行ってしまう」と危惧して親子喧嘩をしてしまいます。望美は困惑するも、看病のお礼を言っていなかったことを思い出し、母親に思いを伝えました。

次の四話では、望美が反抗期を迎えるという回です。

◆何が面白いのか

これだけ話すと、本当に重いだけじゃんと言いたくなると思います。

確かに重いんですよ。テーマがテーマだし。

時の止まった少女とか、親の愛に飢えた女性とか、ステップファミリーとか、引きこもりとか、時事問題オンパレードだし。

自分でも「何でこんなに面白いのか」がよくわかっていないので、3つに分けて整理しながら書いていこうと思います。

目次から気になった点に飛んでみてください。

・演技

これはドラマに不可欠なものだと思うんですけど、演技が良いんですよ。

自分は最初、「柴咲コウと坂口健太郎が同い年・・・・・・?」と正直混乱しました。柴咲コウは現在39歳、坂口健太郎は29歳で、10歳もの差があります。

だけどね~最初は「おじさん」と言われる坂口健太郎に違和感を抱きつつも、段々同級生のように見えてくるんですよ。恋仲に発展するんでしょうけど、それが勿体ないと思うぐらい良いペアで。

柴咲コウの演技はとにかくすごいです。いや素人目なんですけど、段々「本当に10歳の少女が入ってるんじゃって思うんですよ。

10歳の望美と、35歳の望美がダブるんですよね。

仕草もすごいんですけど、やっぱり声なんですかねぇ。10歳の声なんですよ。これは本当聞いて欲しい。

あと10歳の望美を演じている鎌田英怜奈もすごい。子役っぽさがないし、底抜けに明るい望美が光みたいなものの象徴になってます。

坂口健太郎の裕人は、口が悪いし自堕落なのにどこかあのときの裕人くんのままなんです。25年後の未来に、適応できてない。そのちょっとしたブレみたいなものが、上手ですね~。

鈴木保奈美の「優しいお母さん」と「介護疲れてぼろぼろの女性」の対比もすっごい良いし、田中哲司のしなびた感じもすごいです。話せば話すほど、情けなーくなっていくような・・・・・・。

橋本愛のとにかく愛に飢えてる演技も良いです。目がね、すっごい底冷えしてて、唯一望美の目覚めを歓迎してない愛美を見事に演じています。

・演出

このドラマ、王道から結構外れてる演出が多いです。

BGMは本当に少ないし、予告は白黒で無音です。

だけどその一つ一つが、全ての魅力を増幅させて、「よくある」とか「くどい」とか思いそうな描写もすっごい切なく感じるんです。

そんなシーンが続いた後に心温まるシーンなんかきちゃうと、もう笑顔がとまりませんね(は?)

メリハリがきいてるんだと思います。BGMはここぞという時に出すことで、胸に迫ってくる度合いが異常に高まっていて。予告は言葉がないからこそ、瞳や主題歌の美しさに心が奪われます。

自分が一番好きなのは、ロゴの出し方

なんとこれ、話が進んでいってラストシーン、望美の顔に思いっきり重ねて「35歳の少女」って出すんですよ。これにking gnuの主題歌が重なり、超かっこいいんですよね! よくある手法なんですか? 私は初めて見ました。

・爽快感

これ「は?」ってなると思うのですが、私が思う35歳の少女の面白さって爽快感に帰結すると気づきました。

35歳の少女は見たくないものを眼前に突き付けてくるんですよ。

望美が初めての生理に戸惑うシーンとか、父親が義理の息子が足を踏み鳴らすだけでびくつく所とか、裕人が駐輪してある自転車を蹴り飛ばすシーンとか。

時事問題にもすごく絡みついていて、裕人の言葉の中には鋭い風刺が織り交ぜられています。

2話で望美が同級生に会った場面では、望美は彼女らの昔の夢を投げかけますが皆違う道を歩んでいました。

そして一人のインスタをみると、「私だったら生きていけない」という文字。自分が「細かいなあ」と思ったのは、投稿のハッシュタグ。

「#子供の時の夢」

「#完全に忘れてたw」

これすごくないですか? いるじゃないですか、この人。

むしろ読んでる方の中に、いや私でさえこれやっちゃいそうじゃないですか?

SNSで何か伝えると「いやw 必死すぎw」って半笑いの人ばっかりでしょ? 人の主張を笑い飛ばして、蔑ろにされた自分の主張を守るじゃないですか。

誕生日会の代行業で助っ人をした望美が、依頼主に「こんな嘘誕生日会して何が楽しいの?」って言い放つ場面とか、3年A組とかMIU404とかに近いものを感じました。

だけどそれだけだったら、胸糞悪いだけじゃないですか。

なんだけど、35歳の少女はそこで終わらないんです。

みんなが「これで本当にいいのかな」って思うようなことを、眼前につきつけて「良くない」って言うだけじゃなくて。むしろ膿が出されたような不思議な感覚になるんです。

「間違ってるってわかってて、だけど生き抜く人」に浄化されるんですよね。SNSで偉ぶるとか、匿名で人を叩くとか、炎上に燃料投下っていって暴露するとか、合ってるわけないんですよ。

望美はすっごい正しくて、でもそれは子供でしか無いです。現実の話、LINEが無ければ仲間外れだし、炎上してればRTして簡単に正義側に立てる。

それを見せつけてくるけど、「だから変わろう」っていう話では全くない。そんな簡単な話じゃないって、登場人物一人ひとりがわかってる。

認めるわけじゃないけど、変わろうとか正義を振りかざしてはこない。望美の純粋な視点と、裕人の淡々とした視点がよく絡み合って、「今ってこうだよね」、でも「そんな簡単な話じゃないんだよね」って肩を叩いてくれる。

みんな上手くいってないから。

なんかサウナみたいな、熱いんだけど出たら爽快じゃないですか。重いものを見せられたのに、見終わると軽くなってるんですよね・・・・・・。

ただ単に重い話じゃなくて、笑っちゃうような演出もあって、汚い物を見せてるのに美しいみたいな・・・・・・アンバランスなのに良い塩梅なんです。

「そんなことあるわけねえだろ」って人は、騙されたと思って一回見てみてください。全然違ったらすみません。自分は少なくとも救われています。

長々と書いてきましたが、普通に話しごとの感想も書きたいのでこの辺で。

35歳の少女は毎週土曜夜10時放送です。


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