見出し画像

2021年〜、押さえておきたい醸造所の話

押さえておくべき醸造所5選みたいなタイトルにしようと思ったけど、独断と偏見が強いので少々控えめに。
前半は現在の動向、忙しい人は押さえたい醸造所の紹介の後半だけ読んでもらえばいいように分けてみたので見出しからどうぞ。

2021年8月現在の動向

一人のビール好きとして色々飲みつつ、ウォッチャーとして情報収集している経過報告を。

2021年周辺の傾向としてはヘイジー人気も定着し、輸入ヘイジーとスムージーにエンドユーザーはまだまだ舌を巻きつつも家計を考えると価格面での戦い、
そこに国産勢では高品質のヘイジー、イタリアンピルスナーやコールドIPAに加えオーストラリアニュージー系、ラガー復興の取り組みや世界的な低アルコール路線を意識する醸造所が現れたりの対立構造となり、まさに群雄割拠そのもの。
正直この中からどれが頭一つ抜けるかの予想は難しいカオス。
どちらも爆発する可能性あるし、どれもが低迷する可能性もある。
そこにいわゆる巣ごもり需要、サブスク勢も絡んでくるので、混迷を極めているのが現状。
以下、具体例で指し示すと

■輸入勢

・ナガノトレーディングによるトップリンゴライアス正式輸入開始
・ザヴェイルのドロドロスムージーはまだ人気があり、うちゅうがついに同スタイルに挑戦
・何度目かのアザーハーフ、アルケミスト上陸


画像1

・トップリンゴライアスは何度かインポーターが定まらず入ってきたことがあったが、今回で安定供給され値段も半額違く下がった形に。
念のためどういう醸造所が補足すると、アメリカはアイオワ州の醸造所で、高品質のヘイじーがアメリカで人気で、RateBeerでも常に高評価されていた今最も人気のあるアメリカ勢の一つ。
上記の写真は2019年僕がニューヨークに行った際に町に貼ってあったポスター。
当時はたまたま飲めてその味の安定感を気に入ってたに留まっていた醸造所だが、この時点でニューヨーク上陸の反響の高さから、期待値の高さが伺えてチェックしていた。

2019年、日本未上陸状態で正規呼称も分からないままレポートしているので稚筆だけど時間がある人はこちらもぜひ。

・うちゅうの新作「GEISHA」は日本でもまだ作っているところが少ないスムージーサワーで、ネーミングも相まってTLが騒然と?なっていた模様。

好みは分かれるが、世界的なメインストリームを正しく汲んでいるのはこの辺りか。
このスタイルの致命的なデメリットは、濃厚なため食事に合わせにくく、特に和食との相性が最悪な点。
ここが日本人に今後受け入れられるかは未知数かと。
定番品で作る猛者が果たして現れるだろうか…

・アザーハーフとアルケミストについては、想像通りの「さすが」「感動」のような反応だったので割愛。
日本のクラフトビール市場の拡大を感じる。

■国産勢

・志賀高原、伊勢角屋、京都、Y.MARKET、VERTERE、奈良、忽布古丹、BLACK TIDE…etc
これらが高品質なんだから海外ビールわざわざ買う必要ないんじゃね?という意見。もとい、
一つのトピックとして、大手の糖質0ビールと低アルコールビール投入のタイミングで「クラフトビールに1000円は高いか否か」という話題が議論を呼ぶことに。
国産クラフトでも高額なビールは枚挙に暇がないが、クラフトブルワリーが求める品質を維持するためには高額のコストがかかっており、醸造家は高級取りではなくむしろ安月給であるという悲痛な現場の声も入り乱れる結果に。
コロナ起因の給料減から、少しでも安くて良いものを消費者は求めるようになり、判断がシビアになっているのが見て取れるやりとりなのだが、
それにより海外ビールのインポーターは致死量のダメージを受けていること、本当の意味で多様なスタイルが日本で楽しめるようになるにはまだ時間がかかることがわかった。
はっきりわかった瞬間である。ドイツベルギーイギリスの伝統スタイルは日本でも冷遇されていると。

分析はしていないがとにかく新しい醸造所の設立はコロナ影響下でも何故か跡を立たず、初めてリリースするビールのスタイルがIPAというのも全くおかしくない世界になっている。
5年前でも、まずラガーからだったことを思うと本当に移り変わりが早い。
一応ビアジャッジの肩書を頂いた身としては日本で飲まれているスタイルの偏りには本当に危惧を覚えるが、日本の伝統芸能が廃れるのとメカニズムは同じだし話が脱線するのでこの話題はここまでで。。

その中でもう一つの世界的メインストリームである「低アルコールビール」「ノンアルコールビール」に着手している国産醸造所が出てきていることが興味深い。横浜NUMBER NINEもその一つと言って良いだろう。

アサヒによるビアリーの成功も印象的。
アメリカで低アルコールが人気になったのは健康面の理由が大きかったが、日本ではお酒の提供NGでもあるから、と事情が微妙に異なることは頭の片隅に入れておきたい。海外の単なる追随とはニアリーイコール。
そもそも日本人はアルコールに弱い民族なので、度数が低い商品の方が受け入れられる土壌があったというのは当然の指摘だが、
日本独自の進化を遂げる可能性があるのでこちらの路線も今後目を離せない。
ダメ押しでノンアル、低アルコール用のメディアが出てきたこと、

BRUTUSでも(少しだけど)取り上げられたことからライフスタイルとして提案されていることが垣間見える。

画像2

・冒頭の
「イタリアンピルスナーやコールドIPAに加えオーストラリアニュージー系、ラガー復興の取り組み」
は前回のエントリーとも内容が重なるので駆け足言及にするが、
このような枝分かれしたスタイルが隆盛というのは、
いまだに決定打がなく地団駄を踏んでいるように今のシーンは見える。

イタリアンピルスナーについては目白Inkhorn(こちらは下記にて言及)、
AUS/NZは滋賀TWO RABBITSのこの2タイトル(US版もありこのシリーズとしては3タイトル同時)

画像3

画像4

とリリースが細く長く続いている。

その中でまた注目したいのが、ラガー&通販スタイルという取り組みをしたこちらの「ジャパニーズラガーフェス2021」

上で初めて仕込むビールがIPAという新規醸造所が珍しくなくなったと述べたが、その裏にはラガーの方がエールより作るのが難しいという前提がある。
そう、ピルスナーは難易度が高いのだ。日本の大手すごいね。
そこを逆手に取ったこの企画は、他の通販販促よりもユニークだと僕は見ている。(※コールドIPAはIPAという名称ですがラガー製法のビールです!)

様々なIPAなどの濃厚ビールの揺り戻しで飲みやすいラガーの再評価が進んでいることもここから窺い知れる。


押さえておきたい醸造所

ついつい前半が超ボリュームになってしまったが、この前置きがあるとこれから取り上げるところになぜ着目しているのかがより分かりやすくなるので、ご容赦いただきたい。。

①目白/鬼子母神前 Inkhorn Brewing

関東の酒蔵(笑)田中屋さんの近くに醸造所ができるというのもニュースだったが、小さいながら併設したタップルームの人気が安定しているので、
目下大注目。
その店でしか飲めないイタリアンピルスナーが特に好評な様子。twitterで「飲んだ」レポートが多いこと多いこと!

画像5

こちらがその「Flocc Members」というドイツの新品種Diamantをドライホップしたピルスナー。
見た目が濁っているけど実はそれはデフォルトで、ヨーロピアンホップの押し付けがましくない品の良いアロマが白葡萄を思わせる。
加えて余韻のある苦味がなるほどイタリアンピルスナーと。
香りあるラガーだからセッションIPLみたいな口当たり。
確かに初夏に打ってつけかも。これがラガーとしては初作ということなので恐れ入る。

②愛媛 DD4D BREWING

もはやメディア露出が多すぎて今更説明することもないほどのビッグネームだけど、DD4Dが他と圧倒的に違うのは「アパレルブランドを併設している」という営業形態
前述のようにコロナで各社様々な戦い方を模索している中、もう一つの売り上げの柱があることは特筆すべき点。
飲食業界は「低賃金」という近年のネガティブな報道も払拭できる可能性を秘めている、と個人的には捉えている。

画像6

「河内晩柑 ゴールデンエール」は、地元の大型柑橘、河内晩柑を使用した、まるでポンカンのような相性抜群の風味が、ゴールデンエールという軽めのスタイルとの合わせ方でより一層輝いている。
こういったセンスの光り方も今後期待を寄せる要因。

③兵庫  IN THA DOOR BREWING

神戸のビールは関東に入ってくることが少ない上、六甲ビールが強い中、
商店街にある小さなブルーパブであるここを知ってからひっそり注目していた。
時は流れ2店舗目進出、ボトリング、オンラインショップ開設とトントン拍子に事業が拡大できている点も信頼できる。
最後に飲んでから2年経っているので近々早速定番品をお取り寄せしてみたいと思っている。

画像7

2年前の写真だが、「黒汁」というインパクトあるこのネーミング。笑
度数を下げあっさり仕上げたので飲みやすく瑞々しささえ感じるアイリッシュドライスタウトで、名前の由来は蜜月関係にあるディスクユニオンの冊子名からという音楽を大事にしている姿勢も良い。
コーヒー、チョコのニュアンス。

④愛知 OKD KOMINKA BREWING

ビール以外の特色を出すことが武器になるとすれば、古民家を使うというアイディアは類を見ないほどの異彩を放っている。
地元の食材へのこだわり、異業種とのコラボなど、ビール企業としての活動以上にもっと広いものを見ている視点を感じさせる。
今日本に必要なもの。

こちらだけはまだビールを飲んだことがないので自前の写真がないが、JAPAN GREAT BEER AWARDS 2021で賞を獲得したことから、ビールの品質に関しても疑いようがないだろう。


⑤広島 尾道ブルワリー

実際取材もさせてもらったので、この中では最も詳しくどんなお店か知っているわけだけど、
移住して古い蔵をリノベーションするというアイディアもなかなかこの期間には決断できない。
特に地元の人に受け入れられるハードルが高い。
しかしそれをやってのけたのが尾道ブルワリー。俄然今後の展望も気になる。
呉ビールロスをどうか埋めて欲しい。

画像8

尾道といえばレモンなど果物が有名。そのレモンを活かしたペールエール「尾道エール」は、液に溶けた炭酸が元気できめ細かくクリーミー。
例えるならまるで大人のラムネ。懐かしく優しい味わい。
さりげないレモンの風味が幼少期を思い起こさせるような…


⑥おまけ 伏見陽介氏の今建ててる店舗

最後は醸造家でもなくて申し訳ないのだけど、笑
静岡クラフトビールマップを手掛けた伏見氏がとうとう独立起業して、
地元でお店を建てている様子がTwitterで流れてくる。
店名もまだ悩んでるようだしまだ形すらないけれど、
彼の行動力は日本のクラフトビールシーン随一なので、必ずや静岡からまた新しいカルチャーを吹きこんでくれることでしょう。
完成の暁には話題店になること間違いなしなので目を離すなっ


終わりに

というわけで迸る熱いパトスで大ボリュームになったが、ビール好きならサクサク読める内容だったではないだろうか。
執筆中にもまた新しい醸造所オープンの話が入ってきたりして、本当に追いきれなくなっているので、
他にもチェックしたい醸造所がたくさんあるのだが、(静岡醸造とか、brasserie_knotとか)
東京集中型の経済をうまく分散させてくれたら日本の未来も明るくなるなぁなどと考えている。。
地方って表現は好きじゃないけど、日本全国を盛り上げたい!
ビールは自由な飲み物!

ビールと音楽とクリエイティブを中心に少し突っ込んだことをまとめるように心がけています。 サポートしていただけると心の励みになります。