見出し画像

「親にゲイだと思われていた」Shigonさんが語る、ひとりで生きていけるけど「友情結婚」を考えた理由|case.3 後編

 X(Twitter)のアロマンティック・アセクシャル(以下Aro/Ace)界隈で行きたいお店に行く同志を呼びかける「#ぐるめ倶楽部」というタグがある。AroAce界隈の集まりながら、セクシャルマイノリティーの悩みや苦しみの共有を前提としない交流会を作った関西在住のShigonさんに「家族観」や今後について話を聞いた。(本記事は後編。前編はこちら

プロフィール
年齢:39歳
出身地:大阪
性自認:シスジェンダー男性
恋愛的指向:アロマンティック??
性的指向:アセクシャル??
好きなこと:旅行
好きな国:スイス

以下はShigonさんのXのアカウント

Q6 今、幸せですか?

――今、幸せですか?
 常に幸せです。いつ死んでもいいと思ってます。

――逆に幸せではない時期ってありましたか?
 高校生のときとかAro/Aceの単語や情報を知らない時は、悩むまでいかないですけど、もがいてはいたと思います。でも根本的には自分が好きなので、自分を否定せず、不幸な時期というのはなくやってこれたのかなと思います。

Q7 パートナー、家族についてどう思うか?

――パートナーや家族観については今、どんな考えなんでしょうか?
 先ほどの友情結婚の話でも少し触れましたけど、一人でずっと生きていくみたいな考えにはまだならないですね。一人でも生きていくことも多分できるんですけど、楽しいかって言われると、自分の今までの生きてきた人生は「一人で」よりも「誰かと」の時間が楽しかったことが多く、今後も誰かといた方が楽しいんだろうと思っています。
 基本的に一人だと掃除やご飯も適当になるけど、誰かといるんだったら今日ちゃんとした料理を作りたいなとか思えたりしちゃう。一緒に暮らす前提の話をしますけど、例えば2DKとかの家で住む時に誰かがいるんだったら気を遣う。同じ部屋で寝るって言われたら無理ですけど、同じ空間でいること自体は自分は何にも思わない。掃除もちゃんとしよう、料理もしようと思えて、むしろその方が自分の場合は、人間らしくなれる気がする。

――より社会的な能力が身につくということですか?
 気を遣う事って、家の中も社会でも一緒、もしくは地続きだと思ってるので。誰かに対して気を遣ったら自分は人間らしくなれるなと考えています。擬態してでも多くの人に存在や価値を否定されない状況のほうが、自分自身の可能性や選択肢が広がる感覚があるんです。
あとはあの人はあーだこーだと言われないほうがラクじゃないですか。“ラク”か“ラクじゃないか”で基本考えていますね。

――とはいえ、擬態した生活って疲れませんか? カミングアウトしたほうが“ラク”という考える人もいると思います。
 基本的に嘘をつくので、生活はしんどくなることもあります。擬態してしんどくなる自分と擬態せずに我を通す自分、どっちの方が“ラク”で選択肢が多いかと考えると、「擬態している自分」なのかなと。そっちのほうが社会との接点や選択肢が多いと思うんです。嘘つくことがいいか悪いかは置いといて、擬態せずにも正直に自分の考えを言ってたら、自分の場合は世界をどんどん狭めてしまうのかなと思っています。

――周囲からの見え方でいうと、ご両親はShigonさんのことをゲイだと思っていると感じたことがあったそうですね。
 
高校の時に「ゲイとは」みたいな新品の本が自分の部屋の机の上に置かれていたことがありました。読まずに捨てましたが、親以外にそんなことできないじゃないですか。今は親に「主夫になりたい」と話したりしてるんですよ。「逆玉の輿に乗れば」みたいなことを言われたりするので、今はバイセクシャルって思ってるのかな?。ただ、高校生の時は確実に同性愛者だと思われていたと思います。
 異性に興味がないって段階でじゃあ同性愛?って考える人が多いと思うんです。だからこそ、アセクシャル/アロマンティックという単語を周知するってことはすごく大事だと思いますし、自分にはそういうことがちょっとできないし、強い信念を持ってやってるわけではないので、周知したり交流会などを開催している人達を本当にすごいなと思っています。

Q8 理想とするロールモデル、今後どんなふうに生きていきたいか?

――理想の家族像とかはありますか?
 おそらく自分の家族は一般的ではない。例えば母親しか働いてなかったとか、ほとんどの友達は逆なんですよね。その家庭環境を自分は体験したかった。じゃないと良くも悪くも何も言えないんで、自分はマイノリティーの家庭環境しか知らない。だから、そういったいわゆる「一般的な家族」への憧れはあります。

――1対1のパートナーなのか、思い描く暮らしの理想の人数とかってありますか?
 ワーキングホリデーでニュージーランドに行った時に、シェアハウスに住んでいたので、別に数人で暮らすことに関しては何の抵抗もないし、その方が楽しいと思います。シェアハウスにいる人って言ってしまえば他人ですけど、イベントに参加したらしたで楽しかったし、誰かと暮らすと楽しいだろうなという感覚はずっとあります。人数については、パートナーとか家族ということを考えると1対1にならざるを得ないのかなとは思います。複数人でのパートナー関係?にも興味はありますが、そういったパートナー観については、ゆくゆくはというくらいの感覚で、何か今すぐという考えではないですね。

Q9 おすすめのコンテンツ、アカウントなど

――Aro/Ace界隈の人におすすめのマンガやドラマなどコンテンツはありますか?
 X(Twitter)でフォローしていて、読んでいるのは林史也さんの『煙たい話』ですね。男性2人の共同生活のストーリーになります。男性2人の話って『きのう何食べた?』(よしながふみさんのマンガ、ドラマ化もされた)のように同性愛の物語しか知らなかったんですが、この作品はそういった恋愛的な描かれ方とは違って、毎回更新を楽しみに読んでいます。

Q10 メッセージ&その他追加の質問

――ShigonさんがAro/Aceを「理解して欲しい、認めて欲しい」ではなく「そういう人達が世の中には居るよっていうことを認識して欲しい」とX(Twitter)に記しているのが印象的でした。
 マイノリティーの中でも無い者にされがちな事もあるので、まずは「(存在を)知って欲しい」って思ってますね。
 あとは、(セクシャル)マイノリティーの自分はマジョリティー側の事を全部理解するのは無理と言うか、感覚でしか理解できないと思っていて。そもそも理解が不十分の中で「理解して欲しい」とか言われても押し付けに感じる部分もあるんじゃないかなと。なので個人的には、世の中には色んな人が居るんだよって事が周知されれば良いのになーって思っています。

――「周知されてほしい」でいうと、関西を中心に開かれている「#ぐるめ倶楽部」も面白い取り組みだと思いました。Aro/Ace界隈で食べたいものや行きたいお店があるという動機で集まっていますけど、これはそもそもどういう経緯で始まったんでしょうか?
 以前、以下のツイート「なんだろう、同じセクシャリティで過去の話をしたり共感したりしたいんじゃなくって、ただただ普通にご飯に行ったり何気ない会話ができる友達が欲しいんです」をしたことがあって、何気なく食事に誘えるような人がほしいという感覚にkuuさんelieさんのおふたりが賛同してくれたんです。
 食事会の場でその話になり、そこからトントン拍子で「どういう風にします?」ってみんな仕事帰りにマクドナルドで話し合って、運用方針を決めていきました。すごく学生みたいな話ですけど(笑)。ふたりとはぐるめ倶楽部の活動内で、今日話しているような自認に関する話とか、過去の話とかはしてないです。このお店よかった、良さそうとか、そういう情報共有が多いですね。
 ふわっとした繋がりなので、それは本当にフラっと行きたいと思った時に行けばいいし、活動がないからって言ってつながりが消えるわけでもない、そんなコミュニティです。
 女性/男性だけでは入りづらいお店、そもそも1人では入りづらいお店、量が多くて食べきれなさそうなお店など不定期ではありますが、結構活発に交流がありますね。自分は0から1を作ることはできない人間だと思っているので、こういったコミュニティを作ったふたりにはすごい助けられていますし、本当に感謝です。

――今回のインタビューを通じて、前向きな考えが印象的でした。自分はAro/Aceと自認してからも何気ない一言や他者との関係でどうしても悲観的に、なんなら悲劇のヒロインみたく思ってしまうことも多く、SNSを見ていると、この界隈もそういったネガティブな考えの人も多いのかなと思っています。思わず、ネガティブ思考になってしまう人に何かメッセージはありますか?
 そこそこテキトーな考えの自分が伝えられることはないです。ただ、自分が言える立場ではないというのは前提で、ネガティブよりポジティブのほうが楽しくない? とは思います。自分もネガティブに考えてしまいそうになる時はありますし、人ぞれぞれだと思いますけど、ネガティブになると自分の可能性を失くしてしまっている感覚が自分にはあるので、それよりポジティブに進んでいくほうがいいなって。

前編も読む>

(前編で聞いたこと)
Q1 どんな子どもでしたか?
Q2 アセクシャル、アロマンティックに出会うまで感じた生きづらさはありますか?
Q3 アセクシャル、アロマンティックにはどのように出会ったか?
Q4 アセクシャル、アロマンティックに出会ってからどのような変化がありましたか?
Q5 ラベリングについてどう感じていますか?

サポートも受け付けています!