包みの中
その白茶けた布包みの中には、黒い石が入っている。
掴み上げようとして苦笑された。
「持てやしないさ」
これはある湖の水を全て閉じ込めた石、だから見た目の大きさに見合わず非常に重い。男がこの石を持っていられる理由は、包んだ物の重さを羽のように軽くする希少なその布のお陰なのだとか。
行商の男は荷物を担ぐと、包みを懐に戻した。
「荷物の中には入れないのかい」
「こいつは売り物じゃないんで」
くつくつと彼が笑う。
「危なくて売れやしないんでさ」
聞くと、夜な夜な石の中身が這い出て悪さをするのだという。
「あんたは大丈夫なのかい」
「昼間、懐で温めといてやると割と機嫌がいいんだよ」
そう言って、行商の男は旅路へと戻っていった。
@Tw300ss 第61回 お題「包む」 ジャンル「オリジナル」
Twitter300字ss企画内にて個人的に連作チャレンジ中、今回1作目です。
よろしければ次作も覗いてみて下さい(´-`)
【次のお話:団子の数は】
https://note.com/1_ten_5/n/nfe2dfba10024