夕餉
皆が箸を付けるまで膳に手を付けてはならない、と厳しく躾けられてきた。
家族の食べる座敷の膳はとても豪勢で、村で頭抜けた贅沢が許されるのはその家にお役目があるからだが、土間に座らされる子供に同じ膳が出された事は無かった。
子供はこの家の末子と云われている。がその実、血の繋がりは欠片も無かった。
未曾有の嵐が到来したある晩、風呂に入れられ、座敷の上座に座らされた。
供される、豪勢な膳。
【おとうさま】が 笑って言う。
「さぁ、お食べ」
「さっさと先に食っちまえ」
頑なに動こうとしない子供に溜息をつくと、男は中腰のまま自分の膳から芋煮を摘み上げて自らの口に放り込み、子供の髪をわしゃわしゃと混ぜた。
「その癖、早よ直せ」
@Tw300ss 第68回 お題「夕」 ジャンル「オリジナル」
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Twitter300字ss企画内にて個人的に連作チャレンジ中、今回8作目です。
よろしければ前作他も覗いてみて下さい(´-`)
【前のお話:水底に棲むもの】
https://note.com/1_ten_5/n/n463483651526
【関連のあるお話:団子の数は】
https://note.com/1_ten_5/n/nfe2dfba10024