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1.5(イッテンゴ)
2020年7月5日 00:05
吊り橋の目前、その高さと下方のせせらぎに、足が竦んだ。「ほれ、渡るぞ」 背中を押され、嫌な記憶が蘇って、強く足を踏ん張った。「何だ、怖いのか」 からかいの交じる声音。 が、すぐに尋常でない様子に気付き、顔を覗き込む。「どうした」 震えて声も出ない。「…そう云えば、川岸に流れ着いてたっけな」 男は呟き、ひょいと、おれを抱え上げた。 汗で冷えた体に、男の体温がぬくい。 と、その