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1.5(イッテンゴ)
2019年10月5日 23:48
鼻を摘まれても分からないような真っ暗闇の中、何処からともなく金木犀の香りがして、僕は顔を巡らせる。 訳もわからず、長いこと、只ひたすらに歩いている。 足元はずっと浅瀬の様で、歩く度にチャプチャプと音がする。 突然誰かに手を握られ、ギョッとなって隣を見た。誰も居ない。只、温い手の感覚だけがある。「また君かい?」 苦笑まじりに溜息をつく。 いつもほんの短い時間、誰かが手を引いてくれる。