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1.5(イッテンゴ)
2019年4月6日 23:47
伸ばした指の先、綻びかけのその一輪は、季節はずれの寒波にその身を凍らせ、今まさに枯れ落ちようとしていた。 ため息が白く凍る。 この春ようやく残った一輪だった。 以前はあんなに咲いていた花も、今は数年かけて、たった一輪。 屈み込み、薄く雪の積もった地面に触れる。「まだ、怒っているのかい?」 あの日、雪の上に無数に散った、赤い花を幻視する。 僕は今でも覚えている。 満開の花々を前