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読書ノート 「西田幾多郎講演集」 西田幾多郎 田中裕編

 「行為的自覚とはどういう事かというと、自分の底に他を見る、自分の内に絶対の他を見る、他が即ち自己である。だから絶対の他において自己を見るということである。これを離してしまって単に自己の中に他を見るといえば、理想主義、唯心論の立場になってしまう。また逆に離して絶対の他において自己を見るといえば、唯物論になってしまう。この二つがくっついているところに真の自己がある。自己において他を見る、ちょうど逆の絶対の他において自己を見る、この二つが結びついて居なければならぬ。これが私の自己というものである」


 私は「無意識は他者の欲望」というジャック・ラカンのテーゼが好きで、この言葉を座右の銘としているが、それと相似をなすような西田の独白である。自即他、一切は空、事事無礙法界に繋がる思想であり、このあたりが東洋の、いや人類の、黄金律なのではないか。


 自己において他を見る  ↓

─────────────── 真の自己

 他において自己を見る  ↑



 わかりやすい話し言葉で書かれた西田の思想は、少し繰り返し読めばすっとこちらに入ってくる。何で人は書き文章になると頑迷で難しくなるのだろう。不思議だ。繰り返し、推敲し、見直すことに要因があるのだろうか。ひとつの言葉やセンテンスに沢山の意味を塗り重ねようとしてしまうからだろうか。


「注解」にプロティノスの事が書かれていたので記す。

「(1)プロチン プロチヌス(Plotinus,205頃‐270)はローマ帝国支配下のヘレニズム時代を生きたエジプトの哲学者で、プラトンの思想を一元論の宗教哲学として展開した新プラトン主義の創始者。主著『エンネアデス』では、全宇宙の根源を一者と呼び、すべての存在の一者からの発出と帰還を説いた。一者は存在の彼方にあって原表できぬ第一原理であるが、そこから発出する叡智と魂を合わせて「三つの原理的なもの」と呼んだ彼の思想は、キリスト教教父の三位一体論(父ー子ー精霊)の形成に影響を与えた」

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