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フラワーロス問題

モノを作る立場としては仕入れに希望するのは高品質&低単価。他には即納・低ロットなども挙げられるでしょうか。
中でも高品質&低単価はもう何十年も強力なタッグを組んでおり、調達のみならず、販売における歴代最強ペアでしょう。

高品質&低単価の罠

このペアが好まれてきた背景には「売りやすさ」があります。
品質の良いものが安く提示提供できる。仮に売り手の説明が足りなくても、品質の良さが伝わる事で説明不足でも顧客ニーズにささりやすいです。そんな使い勝手の良い高品質&低単価は疑う事の無い正義として私の中にも例外なく居続けていました。

そんなある日X(旧Twitter)の一つの投稿が目に留まりました。猛暑でトルコキキョウの育成不足の中開花も前倒しとなり出荷をするも値が付かない。というものです。
添付されていた画像を見ると、中輪で花びらも肉厚で凛々しく茎や葉もしっかりとしている秋らしい上質なトルコキキョウが映っていました。

低単価への違和感

折角きれいに咲いたのに、買い叩かれる。生産者目線ではやってられない状況ですが使う側としては朗報。高品質が低単価で…ん?
なにか違和感を感じ、ここで立ち止まり考えました。
素材が安く入手出来る事は良い事だ。お客様へより安く提供でき、同じ予算でより大きく作れる。生産者は大変かもしれないけれど、それはそれ。自分で選んだ道でしょ。我々の問題ではない。と。全く疑うことなく思っていましたが、いやいやちょっと待て。自分で書いててなんだか居心地悪いぞ…

安い=歓迎の時代はもう過去

自分の持ち場である花屋で、目先のお客様が喜べばOKというのは、会社で言うと他部門が苦戦しようが関係ない。というのと同じで、自分の持ち場だけしか見えてなくて、会社全体の事を考えてないのと同じではないか?
単なるサラリーマンであればそれで良いが、この業界を愛しているのであれば、全体の繁栄につながる立ち振る舞いは必要ではないか?花屋も安さを歓迎する様なマインドのままじゃ業界の繁盛には繋がらない。もっと花のある日本にして行かないと。
高品質はこれからも必要だと思う。じゃあ低単価以外にペアになるのは誰が良いのだろうか?

フラワーロス問題の違和感

ここまで考えがまとまった時、もう一つずーっと違和感を感じていたい疑問が晴れました。それはフラワーロスへの取り組みです。
捨てられる花にを減らしましょう。という取り組みはフードロスの花版として近年取り上げられることが増えてますが私はこの取り組みになんとも言えない違和感をずっと感じていました。

フードとフラワーの違い

どんな食物も空腹を満たすという基本能力があるフードが破棄され、一方で飢餓に苦しむ人もいるこのアンバランスを是正しようというのがフードロス問題。一方で、キレイな花が消費者に届かず捨てられるのはもったいないから何とかしたいというのがフラワーロス問題です。
共にナマモノのロスを減らす取り組みですが
エコという言葉でなんとなく同類に纏められてしまってますが、フードロスの風潮に花弁業界がのっかっただけでありその取組のベクトルに違和感を感じていました。

フラワーロスは常に存続する

昨今のコロナショックにより、冠婚葬祭の省略や簡略化など、花を使う機会が減り廃棄される花が増えてきたためフラワーロスを問題として近年取り上げられてますが、元々20~30%はロスが起きると言われている花屋において、ロスとどう向き合うか?は常に付きまとっている問題です。

ではフラワーロスを減らす為にどんな取り組みが効果的なのか?それには花の持つ役割を再度根本からと理解する必要があります。

花は必需品ではない

花の存在価値は付加価値のみです。
元々花を飾るのはもったいない行為であり
その非日常を愛おしみ、特別視する事が花を飾り花を贈る意味です。つまり余剰に価値があるのが花です。
その為、空腹を満たすという実益のあるフードとは同列には語れるものではなありません。もったいないから飾ろう。という行為自体は付加価値を生まない為、花の良さを伝達する取り組みとは言えないと感じています。

もったいないはもったいない

例えばイベント用のお祝いのスタンド花を、そのまま枯れたり捨てるのはもったいないからイベント中に花束にして持って帰ってもらおう。この取り組みで貰って喜ぶ人はいると思いますが、そもそも一度飾って消費した花を、もったいないの観点で再度消費することはロスを減らした事にはなりません。
また、より多くの人に花の魅力を!と言って
イベントなどをして大量に飾ったり、体験してもらおうと無料で配っても、お店の宣伝にはなりますが、フラワーロス解決の効果はほぼありません。なぜならそこに付加価値がないからです。
付加価値のない花は壁に張った張り紙と同じで、最初は目につきますが、すぐに見慣れてしまい日常になります。結果全く特別感のないただの風景に成り下がります。

フラワーロスは解決出来ない

フラワーロス問題は基本的に解決しません。
解決出来る方法があるとすれば、それは全て予約生産にするなど、生産者が直接消費者へ届けるしか方法はありません。その為ロスを減らすことを目的とせず、ロスを容認できるくらいのニーズを作ることの方が必要です。

佛花などの日常的な花。結婚式などのイベントの花。開店や誕生日などのお祝いの花。そういったニーズを作って行くしかありません。近年では青山フラワーマーケットを筆頭に自宅用のプチブーケや求めやすい価格のユニクロのフラワーなど、自分用の花の開拓が進んでいます。花の定期配達のサブスクなどもそうです。
仏壇が無くなり、墓参りをする人が減り、結婚式をしない人が増え造花のクオリティが上昇している中で、日々消費してもらえる花文化への取り組みは大きな可能性があります。

モノを売らずにコトを売るのが得意な花

とある花屋さんの取り組みで、一輪挿しの花瓶を購入したら数本のお花をつけてお渡し。
というサービスを見ました。
一見オマケ付の普通のサービスに見えますが
そのサービスの素晴らしいところは、お花が枯れた時、花瓶をお店に持ってきたらお花の入ってる同じ花瓶と取り換えてくれる。というモノ。つまり一度花瓶代を払えば、ずっとお部屋に花を飾り続けれます。
そう、この花屋さんは花瓶というモノを売らずに「花のあるお部屋」を売っています

このような付加価値のあるお花の提案こそが
今もっとも注力すべき取り組みと思います。何事も長所を生かすのが最短で最善です。花の長所を再度分析し、新しい文化を創造する事がこのロス問題を払拭するカギになると思いますし生産者さんの販売価格を安定させる近道になると思います。

良いものは生産者さんに作ってもらいましょう。花屋は素敵なシーンを売っていきましょう。過渡期はお互いの強みを活かすのが最善です。
折角咲いた花を効率よく消費者に届ける事よりも、消費者そのものを増やし、消費するシーンを増やすこと。効率よりも絶対数の増加がフラワーロスを「そんな事もあったね」と過去のモノに出来る唯一の方法と思います。

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