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もう昔、のはなし

うかつなことに、わたしは、きみを信頼してしまった。


ふたりで一緒に眠る夜は心地よかった。
きみの名前を呼ぶ。その日にあった話をする。
繰り返して。そのまま気がついたら眠っていて。安心がそこにはあった。

誓えるものなんてまだなくて良かった。
次会うときの計画をする。それがふたりの限界で。その先の未来のことはあまり考えようともしてなくて。でも焦りはなかった。


昨日のつづきの今日のつづきの明日のつづきの毎日を。
これまできみと過ごしてきたし、これからもそれが続く予感は結構、あったんだ。


だけれど終わりはわりと単純で。
その時確かに「離れるべき」と本能が働いた。
ふざけて笑いあった延長線の初夏の夜に。
わたしはきみにはじめて、拒絶反応を抱いた。

わたしは、わたしのためにきみが必要だと思っていた。
でもきみは、どうやらそんなことはなかった。


きみにとってはなにもかも、どうでもよかったみたいだね。

うかつなことに、わたしは、きみを信頼してしまった。
それだけのことだと、今は思ってる。
暑苦しい日が続く真夏にひとり、突然の雷雨の音を聴きながら、あの終わりの日に食べたアイスのことをなんとなく思い出した。
なかったことになんて、ならないし、しないよ。


許すとか許さないとかそういうことじゃなくて。
わたしはわたしを、ちゃんとしあわせにしてあげないとなって、反省しているだけ。


きみもきみを、しあわせにしてみたらいいんじゃない?
わたしに見えない、わたしの知らないところで、さ。



ご自愛ください、せいぜい。

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