教員残業代請求の棄却について
60代の男性教員が埼玉県に教員の残業代の未払いの違法性を求めた裁判の判決が下され,原告の主張が棄却された(2021年10月1日)。
根拠は1972年施行の「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)である。この法律は公立学校の教員に残業代が支払われない代わりに,基本給の4%に当たる「教職調整手当」が支給されている。この4%は当時,教職員の労働時間を調査した時に概ね4%時間外労働をしていたということで制定されたものである。
公務員の1日の勤務時間は7時間45分である。平均して22日出勤すると,月間労働時間は,7:75×22=170.5 約170時間である。
ということは,4%の残業時間は 170×0.04=6.8時間,1日に直すと19分である。先生方,1日19分の残業で退勤できていますか??
教職員にはやむおえない場合に限り時間外勤務が可能となのは以下4つである。(超過勤務4項目)
(1)児童生徒の校外実習
(2)修学旅行等の対外的学校行事
(3)職員会議
(4)非常変災時の児童生徒対応
なお,部活動は入っておりません。
教職員の仕事の線引きや領域の広さ,あいまいさがあるのは十分に理解できる。しかし,50年前の法律が時代に即しているであろうか。当時は,春休み,夏休み,冬休みが十分に確保されており,年間を通すと労働時間が想定の範囲内で収まっていたのだと思う。
令和時代は,少子化,高齢化,情報化,規範意識の低下,国際化,核家族化......。当時は,スマホ,i-Padなどありませんでした。2~3年で目まぐるしく変わる学校現場。
教育界の日本国憲法といわれている教育基本法も2006年に改正されている。今,新旧の教育基本法を読み比べているが,旧法とくらべて学校,家庭,地域の役割が具体的に明記された内容となっている。
第10条(家庭教育)「父母その他の保護者は,子の教育について第一義的責任を有するものであって・・・,」
第16条(教育行政)「教育行政は,国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下,・・・」
教育基本法の改正を受けて,学校教育法,学習指導要領,その他関係法令を柔軟に変更すると記載されている。給特法は改正の対象外なのか。
教員採用試験の倍率も下降の一途をたどっている。
ただし,この判決には一筋の光明を見いだすことができた。通常,裁判官が法律に関して情意的なコメントはしないはずであるが,
「給特法はもはや時代に即しておらず,時代に応じた給与体系の見直しに着手しなければならない。」
と踏み込んだことを述べてくれた。
教育は未来を担う人材の育成である。
「教員が自己の崇高な使命を自覚するために,待遇の適正が記せられる」ことが大切である。
原告は判決を受けて控訴する方針である。この先生は,後進のために学校現場をよくしようとここまで行動するこの先生には心から敬意を表したい。
同時に,文部科学省と連携して,教職が魅力的な仕事となるように改革を期待したい。
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