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朝の表参道

中学二年生で九州から東京に来た私には、246とキラー通りの交差点が、新しい出発をしようとしている覚悟を応援してくれているように感じた。

青山ベルコモンズに入るのはどこか気恥ずかしいのだが、サンジェルマンのパンが🥐食べたくて、おしゃれな大人にまじって買っていたものだった。

父と2人の生活といっても父は週の半分は家にいなかった。実質的に14歳で一人暮らしのようだった。給食と週末の祖父母の家での食事で栄養を摂っていたのようなものだった。それでも過去のしがらみから解放されて、自由になった、という喜びをベルコモンズ前の交差点を渡るたび感じたものだった。

スーパーのPeacockも私にはちょっと気が引けた。商品が多すぎて何を買えばいいのか決めるのが難しかったのもあった。そこで、246を1本入った通りの小さなスーパーがお気に入りだった。中学からの帰り道をちょっとそれて寄ったこともあった。旬のいちご🍓を1パック買って、自分1人で食べた時は贅沢な気分になったものだった。

あれは、夏の臨海学校へ出かける朝だったと思う。表参道の交番の前あたりにバスが停まっているので、そこが集合場所となった。

朝早くまだ眠りから覚めたばかりの街を抜け、表参道に出た時、まるで子どもたちを見守るようにけやき並木が立って私たちを迎え、わいわいとバスに乗り込む私たちを見送ってくれたように感じられたのだ。

同潤会アパートも今はなく、それでも歩道橋やオリエンタルバザーの入り口、何よりけやき並木を見るとあの朝を思い出す。

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