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#09 ロックンロールは足早にならず、ゆっくり進む

10代後半から20歳の間に色んなことがあった。

専門学校在学中に初めて彼女と同棲をした。別れ話で包丁を突きつけられ、殺して私も死んでやると言われたのも初めてだった。

在学中にデザイナーとして仕事を受け始め、異業種交流会に行っては営業を繰り返した。バカにされたり、褒められたり、お金をもらったり、ダマされたり。色々あった。

大阪から茨城県に移住したのが20歳。深夜バスに9時間揺られた。レ・ミゼラブルの「夢破れて」を聞いて泣いた。不安だった。茨城県に着いた時、とても暑かった。それからひとり暮らし。

人生初の面接は坊主頭で受けた。晴れて会社員になった。会社員の一日は早い。1週間も、1ヶ月も早い。あっという間に過ぎる。業務に忙殺され、SNSの更新は止まった。タイムラインに流れるデザイナーの投稿。周りとの差に悩んだ。

慣れない車と、慣れない会社員。そして自分のスキルのなさを、まざまざと教えられる毎日。自己啓発本を立ち読みしては実践した。俺はまだやれる、俺はまだやれる。

ある日、上司にこんなことを言われた。
「なんでそんなに生き急ぐの?」

言われてやっと、自分が焦っていることに気づいた。

「若いんだから、ゆっくりやれよ」
肩が軽くなった気がした。そうだ、まだ23歳だ。もう23歳なのかもしれないけど、まだ23歳だ。先は長い。

自分はスキルが追いついていないことに焦ってる。紙に書いてみた。漠然としたモヤモヤを言葉にするだけで、自分がするべき事が見えた。上司には今でも感謝している。

ロックンロールは、くるりの中で1番好きな曲。「進めビートはゆっくり刻む 足早にならず確かめながら」という歌詞がとても好き。1歩ずつ1歩ずつでも、前に進んでいきたい。

そんな、始まりの歌。

お気持ちだけでも飛び上がって喜びます