1兆ドルコーチ 考察ノート

今回紹介するのは、

『1兆ドルコーチ』

です。

スティーブ・ジョブス、エリック・シュミット、ラリーページなどシリコンバレーでも著名な経営者たちには実は共通のコーチがいました。表舞台に立つことを好まなかった性格のためほとんど世に知られていませんが、シリコンバレー最大の秘密と呼ばれた伝説のコーチ

『ビル・キャンベル』

について語ったのがこの1兆ドルコーチです。ビルキャンベルはコロンビア大学で、NFLのプレイヤーとして活躍し、その後、フットボールのコーチを長い間勤めました。彼がカリフォルニアに来たのは40代になってからで、ビジネスの世界に入ったのもその数年前でした。しかし彼のシリコンバレーでの成功物語には人生何回分もの偉業が散りばめられています。

彼は業績が悪化していた頃のアップルで、スティーブジョブズのコーチとなりGoogle創業者達に対してもコーチとしてチーム作りを行いました。『一兆ドルコーチ』というのは大げさではなく彼が指導してきた企業の価値の合計は数兆ドルに及ぶのです。ビルの一番の信条は、

人がすべて

ということでしたマネージャーの一番大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、幸せになれるように力を貸すことです。ビルはコミュニケーションが会社の運命を握ると考えていたのでスタッフミーティングが始まると、まず1人ひとりに週末に何をしたのかを尋ね旅行帰りの人がいれば、旅の報告をしてもらいました。
この目的は二つあり一つ目はチームメンバーが仕事以外にも興味深い生活を持つ人間同士としてお互いを知り合えるようにすること。二つ目は、全員が決まった職務の担当者としてだけでなく1人の人間として最初から楽しんでミーティングに参加できるようにすることでした。

彼は信頼できない相手とは付き合いませんでした。もしビルが誰かを信頼し、相手も信頼を返せば信頼が2人の関係のすべての基盤になりました。ビルにとって信頼は常に最優先かつ最重要の価値観でした。ビルに何かをすると言ったら、それは守らなくてはなりません。彼もまたいつでも約束を守りました。スティーブジョブズが1985年にアップルを追放された時ビルは彼を会社にとどめようとした数少ない幹部でした。スティーブはビルが示した誠意を片時も忘れず、ふたりは固い友情と仕事上の関係を築きました。

信頼を確立することは最近の言葉で言うチームの「心理的安全性」を育むための主要な条件と言われています。心理的安全性とは、チームメンバーが安心して、対人リスクを取れるという共通認識を持っている状態でありのままでいることに心地よさを感じられるような雰囲気のことです。ビルはどうやってこれを作り上げたのでしょうか彼はコーチングを受けられると判断した人に対してはじっくりと耳を傾け偉大なことを成し遂げられると信じて誠意を尽くしましたコーチとの関係から最大の価値を引き出すには、教えられる側がコーチングを受け入れる姿勢でなくてはなりません。ビルのコーチングの根底には、人の価値は肩書きや職務ではなく心の持ちようで決まるという考え方がありました。ビルが求めたコーチされるのに必要な支出とは、

正直さ、謙虚さ、努力を厭わない姿勢、常に学ぼうとする意欲

です。
正直さがなぜ必要かといえば、コーチングの関係を成功させるには、ビジネス上の関係で一般に求められるよりもはるかに赤裸々に自分の弱さをさらけ出す必要があるからです。
謙虚さが重要な理由は、リーダーシップとは会社やチームという自分より大きなものに献身することだとビルが考えていたからです。ビルはコーチングセッションでいつでも相手に全神経を集中させてじっくり耳を傾けました。上の空でスマホのメールをチェックしたり、腕時計を確認したり、窓の外に目をやることは決してありませんでした。相手の発言を先回りして考えたりせず、とにかく耳を傾けることに重きを置いていました。彼が指図することはなく、彼はどんどん質問を投げかけて本当の問題に自分自身で気付かせました。そして、ビルはすべきことを直接教えるのではなく、なぜそれをやるべきかという物語を語りました。人は物語を理解すればそれを自分の身に置き換えて考えて何をすべきかを悟るといわれています。それが心の底から納得させることにつながるのです。
人を大切にするには、

人に関心を持たなくてはならない

と、ビルはプライベートの生活について尋ね、同僚の家族を理解し、大変な時には実際に駆けつけて手を差し伸べていました。ビルの小さな贈り物はほとんどの場合、

5分間の親切

と呼ばれるものに当たります。親切をする側にとっては簡単で負担もあまりかからないけれども受ける側にとってはとても大きな意味のあるもののことを言います。1人が絆で結ばれる時、チームはずっと強くなれるということをビルは信じ自ら実践をしていたのです。

今回は『1兆ドルコーチ』についての簡単な概略を説明しました。この投稿を読んで興味を持った方はぜひ詳しく読んでみてください。
ご精読ありがとうございました。

参考文献
エリック・シュミット他2名『1兆ドルコーチ』