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IDS Lecture Summary ~Week 17~

Outline
・Sustainability & Policy Process ~Water nexus~
・Sustainability & Policy Process ~Multi sectoral cooperation~
・Impact Evaluation ~Theory of change~
・IDS seminar ~displacement policy~
・IDS seminar ~Flooding ×project management~

Water Nexus
初Jeremyの授業。水×食料×エネルギーの関係性をPolicy process matrixにあてはめながら分析。水は食料とエネルギーのどちらにもインプットの立場をとるが、例えばダム建設によりエネルギーを得る場合、水量の変化により下流地域の農業生産状況を変化させることになり、地政学的バランス、調整、交渉が必要不可欠だ。エネルギーは水をインプットとして、食料生産をアウトプットとしての立ち位置を取るが、この際のエネルギーは水力に限らない。火力、原子力、太陽光も含めたほとんどの発電活動(温度調整)に水が使われており、その処理には技術力が必要。また電気・石油の価格と食品価格の推移が一致していることから、食料生産との関連性も非常に強い。部分横断的な開発政策が良好な関係構築に必要で、日常生活・文化習慣に関わる部分であるがゆえに、他分野でよくみられる税率や補助金といった価格調整によって人々の行動を変えることは難しい。

上記の点から開発機関によってNexusを構成する3要素への立ち位置が違っており、積極導入を進める開発銀行、環境影響評価により保護的プロジェクトを後援する研究機関、よりユーザーベースのニーズ、イシューに絞って活動を構築していく民間・NGOのバランスで現在の社会が成り立っている。政府は各アクターの国別援助施策や最終的なプロジェクト実施の意思決定に関わる立場にあるが、政権によって細かに立ち位置が変わる分野であり、かつ中長期的なアクティビティが多いことから政変後すぐに大きな変化を加えるのが難しいことも言われている。地域経済、国家関係、世界目標の3つのスコープに対応した政策を実施していくためには、より長期的に実施に関わる国家公務員のクオリティ(キャパシティビルディング)、フレームに基づいたリスク管理とモニタリングが必要不可欠だ。

Multisectoral Cooperation
Abbas先生の授業。プロジェクト目標、あるいはその上の上位目標の実現に向けて、アクションに関わる各実施機関が持つ異なる理念や強みをどのように生かすか、そのアクターたちをどう効率的効果的にまとめるかを過去の分野横断的プロジェクトの事例を交えて分析した。アクター同士の関係性に関しては意思決定(ToR、投資、投入への参加度)レベルによって、function- cooperation- collaboration- Integrationの4段階に基本分けることができる。一般的なプロジェクトに比べて、より緊急性必要性が高い災害やパンデミック、公害などのファクターが加わった時に分野間協力の割合が高まる。SDGsも分野横断と言えるがその当事者意識を企業レベル個人レベルまで持っていくことが構想当初からの課題であり、ムーブメント、倫理観とニューノーマルの構築のためにはインセンティブ、取り締まりなどを含めた法と政治のバックアップが必要との見方が強い。また様々なアプローチからのプロモーションがプロジェクト自体の認知を高めるためのカギとなるため、有名人の起用やイベントコラボといった作戦もよく見られる。

緊急支援のような短期プロジェクトにおいてもリーダーシップをとる機関の存在は必要で、Scale/ Scope/ Formality/ Strengthの4つを軸とした関係者分析と現場調整によるプロジェクト実行範囲の調査策定を初期対応として行う。国連機関の場合はOCHAがその役割を担うことが多く、調整調達機関としての強みを生かしたクラスターの招集とアジェンダの構築を行う。その他のプロジェクトにおいては主に政府機関が旗振り役を担うことが多く、その傘下である地方自治体、市民団体、協力企業のパイプ役となりながらインプットアウトプット情報を発信する。平時より過去のプロジェクトを軸とした関係性構築ができているかがプロジェクト評価結果に関わる重要な点であり、またそれらの意思決定の際のパワーバランスについても大いに配慮する必要がある。

Theory-based evaluation
Skills weekで取り扱ったTheory of changeを小グループに分かれて実際に展開中のプロジェクトにあてはめて分析した。自身のグループはバングラディッシュにおけるマイクロクレジット展開を事例としてピックアップ。投入、事業、成果などはADBの業務計画書より抽出し、リスク要因や前提条件などは地域要因や関係者分析等でフレームにあてはめた。外的な文脈に関する仮定に関しては、介入がそのように計画されるのかの根拠となるように設定する必要があり、基本的にWhat-Who-Where系の質問によって形成される。PCM上では外的要因と表現され、地理的政治的条件などターゲットグループを取り巻く環境の中でプロジェクトの成果に関連しうる項目を洗い出す。自然災害に関するところや文化宗教に関わる部分などが代表的で、ベースラインの状況を明記する。一方因果関係の前提に関しては、関係が機能するためにほぼ必ず発生しなければならない事象や条件のことを指し、Why-How系の質問によって形成される。PCM上では前提条件と呼ばれ、プロジェクト構想時に投入と実施によって得られると仮定した成果、もしくは想定外としたリスクに関して明記する。能力強化トレーニングによるスキルの定着や対象者が継続的にプロジェクト目標に対するアクターであることなどミドルラインエンドラインに関わる部分を指す。

Displacement Policy
タイ・ミャンマー国境の難民キャンプ運営に関するゲストトーク。難民問題の長期化、それに伴う難民の生活の質向上に向けた取り組みと新たに発生するホストコミュニティや受け入れ国政府との問題解決について議論。本来の難民条約では母国を追われた理由の原因に改善が見られた際に速やかに帰国させるように明記されているため、受け入れ方針としてはこれまで短期プロジェクトの形態を取ってきた。しかし近年はパレスチナ難民など2世代3世代に及んで避難生活を続ける対象者も多く、ひとつの町、コミュニティとしてのニュアンスが強い。難民キャンプの多くは町はずれの、それまで利用されてこなかった空き地に建設されることが多く、食料や水、電気などの生活インフラは未整備で、限られた量の分配となる。食料のケースではフードバウチャーを与えられ、通貨の代わりとして食料入手に利用されるが、タイ・ミャンマーの難民キャンプでは難民同士、あるいはホストコミュニティとの交換や売買も盛んにおこなわれていたようだ。行為自体は栄養や治安等の面から称賛されることではないが、「尊厳ある暮らし」を望む当事者・運営側の思いから黙認されているという。

通常難民は固まって居住し子供も含め外部との関わりは薄いことが多いが、近年は長期化の影響もあって、教育や保健の分野でホストコミュニティと混ざりながら支援を受けるケースが多い。これはホストコミュニティの支援も含んでおり、受け入れ側のキャパ的な不安、到着順による不平等などを防ぐためでもあり、また難民のみが優先され手厚い生活保護を受けることでホストコミュニティとの関係性が悪化することを防ぐための動きでもある。難民キャンプ運営の場合、多くのホスト国は同様に貧困や情勢の不安を抱えているが、地理的な理由のみから保護の場所として選ばれた経緯があり、国際機関や地理的距離の離れた主に先進国のアクターがホスト国に受け入れ負担をお願いするのと引き換えに物資・資金両面のサポートを行う構造を形成している。また近年は最低限のニーズ対応だけでないWell-beingの視点を重視した支援が行われており、より難民に生活の選択肢を与え、個人の能力を最大限に生かし・伸ばし、自律と尊厳のある暮らしができるようNGOらと協力して支援の多様性を深めている。

Flooding ×project management
バングラディッシュの洪水災害についてのエスノグラフィー。気候変動の影響を最も多く受けている国の一つとして知られているバングラだが、洪水自体は毎2~3年発生しており、長い歴史の中で見れば流域の川の流れは大雨によってさまざまな形へと変化しながら今日まで至っていることがわかっており、洪水自体は気候変動との結びつきは弱いとされる。一方で気温の上昇は雨の降り方や時期に直結しており、これまでの予測にない雨の降り方によって危険性が高まることも事実である。バングラの洪水対策は、こういった観点から緩和策、生活アセットの喪失を防ぐことよりも人が死なないことを第一の目標に置いたプロジェクトが展開されていて、実際規模に対する死者数は以前に比べて大幅に低下してきている。ただ先進国で見られる災害保険の充実や復興後の生活水準向上のためのプロジェクトは、再び災害に見舞われる確率の高いバングラでは展開ができず、ダムや堤防の整備なども部分着手を進めてしまうとさらに災害発生時の被害を強めてしまう。そのため近年はソフト型の、コミュニティレベルでの能力強化に当たるプロジェクトが多くみられる。気候変動枠組みら先進国と開発途上国の対話は進めつつも、洪水への適応策についてはバングラから世界に発信し、南南協力・三角協力の形で国際河川の河口部に位置する農業国に技術移転するされることが期待されている。



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