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200626 コロナの影響で技能実習生が来日できない!先輩実習生が後輩を指導し、学びの機会を創出するウズベキスタン

 新型コロナウイルスの影響で、外国人技能実習生が来日できない状態が続いている。ウズベキスタンでは、来日予定だった農業関係の技能実習生に向けて既参加実習生が技術のレクチャーを行う対応がとられた。20年前からODA事業を中心に旧ソ連諸国への農業技術指導が盛んにおこなわれており、その歴史が国家間の移動制限による研修機会の損失を補っていると現地担当者は語る。

日本での学びを自ら次の世代へ

 来日する外国人農業従事者の多くは中国やベトナムの出身で、その数は全体の61万人の3分の2を占める。その一方で近年は南米やアジアの内陸部出身者も多く、出身国のレパートリーは多様化している。ウズベキスタンの場合、近年までは大学や研究機関への研修といった国家間交流の形が多かった。しかし2016年の政権交代以降、孤立主義外交を緩和し国家間の協力体制を強化した。その一環で日本への農業技術実習生の派遣が開始された。

 今回コロナの影響で来日のめどが立っていない実習生を指導するのは、国家間交流で来日し現場を視察したメンバーだ。農業大学の講師や農業法人経営者を中心に毎年10名程度が選出され、3カ月間研修を受ける。1999年から毎年来日しており、経営方法・品種別生育環境の知識・農業機器の使用方法など内容は多岐にわたる。彼らが来日時に教わった内容を、当時のテキストや自身の農場を使って実習生にレクチャーしている。

 実習生の一人は、「訪日できないのは残念だが、母国語で母国のフィールドで学ぶことができることを前向きにとらえている」と語った。技術や知識を移転し、最終的に来日した研修生の母国で自分たちの手で農業を発展させるのが本来の研修のゴールである。その目的は完全ではないにせよ達成されており、この緊急事態下において効果を発揮したといえる。

農業大国ウズベキスタンに広がる将来性

 ウズベキスタンは1991年にソビエト連邦より独立した国だ。中央アジアの肥沃な土地と日照時間が多く寒暖差が大きい気候を国土としており、綿花の生産量は現在世界2位に位置する。GDPの4分の1は農業によるもので、国民の3割は農業従事者だ。これらのデータから、農業大国であると世界から認識されている。

 しかしソ連時代は綿花のモノカルチャー経済&集団農業の仕組みがとられており、独立後は自給自足のため、農業政策の大幅な改革を迫られた。前述の日本のODA以外にも、ドイツやアメリカの国際協力機関、欧州復興開発銀行による支援が行われた。綿花や穀物類は国家が買い取るが、野菜や果物は個人の売り上げとなる仕組みがとられている。そのため野菜や果物を育てるためのノウハウやビニールハウス・農機に関する支援が多い。

 近年はその成果もあって農業従事者の経営も軌道に乗り、ロシアや近隣諸国への輸出を伸ばしている。新政権による外貨交換の自由化、関税・ビザ手続きの簡素化によって、貿易が活発になったのも大きな要因だ。農業以外でも、ウズベキスタンが有している豊富な天然資源(天然ガス・石油)や観光資源(シルクロード沿いの文化遺産)が大きな強みとなり、今後の国の経済成長を支えていくとみられる。

 コロナウイルス感染拡大の影響で輸出や経済に混乱は見られたが、現政権のこれまでの改革に対する国民の評価は高く、国内に大きな混乱は見られない。混乱の歴史が続いた中央アジアにおいて、将来性の高いウズベキスタンは日本にとっても世界にとっても重要な位置づけになろうとしている。

農業の人手不足に苦しむ日本

 その一方、若者の農業離れが進む日本では、コロナの影響で外国人技能実習生が来日できないことによって農業の人手不足に苦しんでいる。農業分野だけで6千人の実習生が日本の農業を支えており、20代の農業従事者の14人に1人は外国人だ。そのため日本全国の農村で農作業に支障が出ており、自治体が補助金や他業界からのリクルートなどの対応に追われている。

 「国際協力によって日本の農村が持つ経験や技術が世界に広まるのは非常に素晴らしいことだが、本来それらを伝えるべきは自国の若者たち。日本の現状から目を背けてはならない。」と現場の農業従事者たちは社会に向けて警鐘を鳴らす。ウズベキスタンとは対照的な現実だ。コロナウイルスによって、日本の農業の大きな課題が浮き彫りとなっている。

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