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IDS Lecture Summary ~Week 19~

Outline
・Sustainable Policy Process (Zoonotic diseases)
・Impact Evaluation (RCT vs Quasi, Matching vs DiD)
・HIV protection in an emergency situation
・Casual pathway for rural-urban development
・Innovation for the limit of growth

Zoonotic diseases
パンデミックを引き起こすウイルスの感染源の多くは動物を介した経路により人体に侵入しているとされており、人類として細心の注意を払っていく必要がある。授業では鳥インフルエンザとラッサ熱をケーススタディとして扱い、政策面での予防とバックアップ体制を分析した。ラッサ熱はげっ歯類の尿や糞でウイルスに汚染された食物や日用品に触ることで人に感染する病気で、都市部スラムや農村部の衛生環境が悪い地域で多く発生する。病院内での感染も多くみられることから、患者の治療には特別な器具と環境が必要だ。蚊を介して感染する病気に対しては虫よけスプレーや蚊帳、刺された後の処置によって対応できるケースが増えてきた一方、ネズミに対しての対応は鳥やその他の家畜と違って人類が主体的に管理をすることができないため発生後の後処理しかできず、政策的な対応は衛生環境の改善と知識面の教育に焦点が当てられている。

鳥インフルエンザは人体に直接的な影響はないとされているものの、食事を通じて稀に感染した際にウイルス遺伝子の再集合がおこり、新型のインフルエンザが発生する可能性を秘めていることから、発見されたのちは同環境にいる個体の殺処分が日本でも世界でも実施される。殺処分は原則として鶏舎内で実施し、脊髄断絶炭酸ガス等を利用する。 死体の焼却、埋却または消毒は原則として発生場所に隣接した場所において実施され、都道府県が責任を有する。殺処分された患畜・疑似患畜の評価額の全額と死体、汚染物品の焼埋却に要した費用の1/2を国(1/2)と都道府県(1/2)の割合で補償する。鳥は直接的な食用としてのみならず、伝達手段としての利用(鳩)や農作物の発育における害虫駆除の役割(スズメ等)らを通して人類の生活に大きく関わっており、獣医学との知識共有(One health)を推進していく流れがトレンドだ。

RCT vs Quasi, Matching vs DiD
Impact evaluation4週目。データ収集方法として有名な分類を抑えた。RCTは試験者と被検者の双方が治療群と対照群をわからないようにして主観的な評価を避け、無作為に被検者を選んで介入効果を厳密に検証する試験手法。その分類は評価を始める前のタイミングで初めて行うことが重要で、属性やベースラインに至るまでの条件がほぼ同じことが利用不可を分ける。Quasi experimentは実験群と実施しない対照群にサンプルを分けて比較する手法で、内的妥当性外的妥当性の両面の条件を兼ね備える必要がある。こちらも事前にグループ分けをするので、脱落するサンプルや条件が変わる場合にも注意しなければならない。詳細に見るとさらにベースラインの類似するケースの比較検証を行うMatchingと、プロジェクト外の成長要因分の差分を見込んでプロジェクト分の効果を算出するDiDに分類される。ターゲットになりうる起業女性をどのように限定するか(地域、年齢、経験、ステータスなど)、そのインパクトの比較対象をどのように測定するか(利益、売上高、生活水準など)によって向き不向きが分かれる。グループワークで進めているmicrofinanceのプロジェクトの例でいうと、背景条件の類似性が二次データではわからないためQuasi、成長差分はQuantative questionで回収できる見込みがあることからDiDでの測定を行う方向性に決まった。

HIV protection in an emergency situation
HIVは性交渉によって感染が広がるケースが多いため、コンドームの普及や性教育の観点から対策が進められているが、一方で母子感染に対しては依然として断絶へのハードルは高い。近年の研究によると妊娠中に感染が起こるのではなく、出産中出産後にリスクが高くなる傾向があるという(主に血や母乳、飛沫を通して)。経済的に余裕のある家庭、地域では、出産方法は破水前の帝王切開が推奨され、その前後は抗生剤等の投薬によってリスクを減らし、乳児には12か月~18か月ほど専用薬の投入を続ける。ただこのような特別な治療はスラムなどの低所得者居住区や難民キャンプなどでは対応ができず、感染が収まらない結果となっている。キャンプの場合は難民登録の際にいくつかの感染症も含めた検査と必要なケースでは予防接種も行われるため未然にリスクを防げるように見えるが、違反してHIV感染者が性行為を行ったとしても罰則があるわけではなく、加えて慣れない生活や過去のトラウマによって性交渉、DVの発生率は通常の生活に比べて増える傾向がある。以前は難民条約上の労働制限が厳しく、難民が多くの時間をシェルター内で暮らすことでそのような社会環境を作り出すていたが、最近では特に若年層に向けてコミュニティでの活動や労働環境を提供するプログラムも増えており、それらがHIV感染縮小へ一役買うことが期待されている。

Casual pathway for rural-urban development
地方から都会への人口流入について議論する際、就労教育の機会と平均賃金は直接的な要因として認識されている。特に開発途上国、新興国では観光・外資の両面でインバウンドを獲得するために首都から発展が進めていくため、地方との格差は非常に大きくなっている。人口の減少はそのまま税収の減少に寄与することから、インフラ整備や社会保障に充てられる資金も減少し、ますます地方の魅力度、ソーシャルパワーが下がる。その中民間投資に比べて国際協力プロジェクトでは地域限定ではありながらもその脆弱性にアプローチする方法のひとつであり、組織ガバナンスの機能強化を通して格差の是正を補助している。課題はプラスアルファの部分でIターン、Uターンをどう誘導していくかで、地域の特色(一村一品活動的な草の根から町民を巻き込んだ移住政策まで)を最大限生かせるプロモーションを各自治体ベースで行っていく必要がある。言い換えれば、現状の支援では首都に近いレベル、平均的な生活レベルを実現するためのアクションしか取れず、人流を産み出すような魅力度創出には寄与しないのである。現状の地方都市の中での勝ち負けの分水嶺は、高速道路・高速鉄道の誘致、大学の誘致、工場の誘致であり、知名度を上げまとまった関係人口を産み出すのに手っ取り早い手段である。一方、人口増・人口維持に着目せず、町民のWell-beingへの支援を通して農産物のブランディングや観光を含めた自然産業に活路を見出す自治体もあり、まとめると地元の民意、特性に沿ったプロジェクトを国・県レベルが理解し、必要に応じた国際的な技術移転・交流を推進していくべきである。

Innovation for the limit of growth
50年前に出された本のタイトルで、そこで推測されていた未来と現状の比較に対する議論を行った。情勢安定により後発途上国に属していた国が低所得国へ、低所得国が中所得国へ、中所得国が「新興国」として高所得国へと流れて世界は成長を続けているが、development=economic growthと結びつけるのは危険であり、実際は国内外の格差の拡大の連続である。トピックとなったのは国連などの国際組織、ASEANなどの地域経済組織がどこまでルールに強制力を持つかという点で、各国の内政事情や経済状況の違いがある中で関わるアクター間でパワーバランスが発生しないか、意味合いの薄い取り決めに終始していないかが疑問視されている。国際組織のおいても出資額や排出人員の差により発言力が国によって異なることは明らかであり、成長を妨げる最大要因の紛争防止に関しても連合の発言力はなく、各国政府の関係性によってここにアクションを取っている現状がある。資金・技術の両コンテクストで「協力」は「自国への利益」と結びついていることは明らかで、その意思決定に関わるレベルの人材が全体像を理解し、中長期的なインパクトを意識した政策を議論できるかにかかっている。地方政治も同様で、力関係上下関係がある中で、主張と妥協のバランスを取りながら関係構築を行う力が政務に関わる際に必要不可欠だ。その点では政治体制において民主化=善、独裁・社会主義=悪ではなく、どちらの場合でも意思決定の際の影響力に着目した評価がなされるべきだ。



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