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IDS Lecture Summary ~Week16~

Outline
・Sustainability & Policy Process ⑥
・Mock Consultancy ~Urban network with transportation~
・Impact Evaluation ①
・Aid & Poverty ⑥
・Participatory network in Iraq

Sustainability & Policy Process ⑥
先週に引き続き気候変動がらみのトピック、今回は砂漠化と森林減少について。熱帯雨林を中心に年間730万haの森林面積が減少している中で、木材として使用するための伐採であれば植樹などで補うことができるが、農地利用は砂漠化の危険が高まる。森林伐採による砂漠化は、木々の減少により地中の保水力がなくなり、その後に雨水が土を流してしまう水食が原因で起きる。土にも水を蓄える力がありますが、雨のたびに流されてしまうと、その土地の保水力はどんどんと低下し、やがて岩肌が露出するほど土がなくなり、植物も生えない土地になる。アフリカで盛んな焼き畑農業は伐採した樹木などを燃やして肥料としながら作物を栽培する手法で、肥料がなくなると植生が回復するまで休耕期間とする必要がある。しかし近年の人口増加による食料不足から、休耕期間を短縮し土地が復元する前に耕作しなければならない状況に陥っているケースが目立つ。オーストラリアでは、ユーカリ林をはじめとする自然植生を伐採し一年生作物の農地や牧草に転換したことが要因で、塩害による砂漠化が進んでいる。植生の転換によって植物の放出する水蒸気量が減少し、土地の水分バランスが崩れ地下水位の上昇をもたらした。これにより、塩分を含んだ地下水が蒸発する場所が地表に生まれ、蒸発時に残った塩分が土壌表面に集積し、塩害が発生している。

上記の観点からすると、砂漠化の原因の中で人口増加に伴う食料危機が環境にもたらす影響が大きいことがわかる。中長期的な利益や展望を各個人やコミュニティーが考えリードすることは難しいことから、政策側が森林保護と農業増産政策の両立について積極的に関わりルール作りを進めていく必要がある。レンジャーの配置や衛星写真による監視といった適応策はもちろん、輸出入の規制やバリューチェーン全体の可視化など問題全体への倫理観を醸成し市民の価値観へ組み込んでいくための施策が求められる。また国際機関や研究所の役割として毎年のレポート発行による情報提供があるが、アウトラインを策定し、トピック・著者の選定や有識者会議を通して年間を通して進めていく流れの中で、いかに市民生活レベルの視点との接点を見出していくか、具体的アクションとその効果について魅力的にまとめられるかが課題である。

Mock Consultancy ~Urban network with transportation~
脱炭素社会構築への取り組み、新興国でより顕著となっている都市一極集中や交通渋滞による大気汚染の解決策として地下鉄やライトレールの整備が注目されている。2000年代からベトナム、インドネシアを筆頭とする東南アジア諸国で敷設計画がスタートし、長い年月を経て現在ようやく運転を開始する段階に至っている。1番の都市政策的目的は都市圏の拡大。地下空間を含む首都圏の土地容量が不足しており、用地買収も困難になる中、いかに経済成長、外資獲得を進めるための人口を確保するかという観点で、通勤通学圏を伸ばすことで郊外への人口の分散を狙っている。再編・新設の両面での都市計画や敷設運行上の技術協力では先進各国や開発銀行も積極的に計画のアクターとして関与し、現地社会に多大なニーズを創出している。その一方、行動経済学の観点で言えば人流の変化を産み出すにはさらに長い年月を要する。東京での移動手段のシェアは鉄道が55%、車バスバイクが3%なのに対し、地下鉄路線が開業したバンコク・ホーチミン・ジャカルタでは真逆の数字を示しており、遠方路線との接続や路線網の拡大を進めなければ目立ったプラスの効果が生み出せない傾向がわかる。投資対効果の面からも、ビジネス・観光部門と連動した行動変容策を打ち続けていく必要がある。

Impact Evaluation ①
後期モジュールもスタート。近年の評価部門の傾向として、その重要性は認識されていながらもパンデミックや援助借り入れ国の負担軽減から活動にかけられる費用・期間・人数が限られてきており、よりコンパクトな評価活動が要求されるようになった。モニタリング業務を別に請け負っている場合を除き、プロジェクト計画前の情報が欠けている場合も多くみられ、プロジェクトによるインパクトと社会的インパクトの判別が難しくなっている。その中で実施者・ドナー側の求める評価レベルをコミュニケーションによって正確に理解し、ToCをはじめとしたログフレームの活用やサンプル数を絞った調査を行うことで最善解を求めていくことが重要である。特に重要なのが評価レポートの活用のされ方で、先行事例としてのプロジェクト移転が考えられるケースやエスノグラフィー的に中長期的にフェーズを刻んでいくような場合は、その地域性、ステークホルダーや裨益者の特徴、社会情勢などの背景情報にも踏み込んだ調査が必要になる。本モジュールではセミナーパートでグループワークを行い、2か月後に現在進行中のプロジェクトの仮想評価発表を行う。

Aid & Poverty ⑥
前半モジュールで、今回がラスト。主にデジタルディバイド(デジタル化によって取り残される人々への対応)がテーマの講義。広告効果や顧客層のデータ収集、業務効率化の観点から官民両者ともにスマートフォンを利用することを前提としたサービスの展開が進んでおり、ハンディキャップを持つ人々、高齢者にとってはますます生きにくい世の中になっている。サービスにかかる人材と費用削減につながる利点も大きく、格差を生むとしてもこの傾向が止まることはないとされる。一方で公共政策側としては格差拡大を放置することはできず、学校教育を通じた子供への情報教育はもちろん、デジタル難民への講座やサポートの機会を提供しているが、その利用者は限られており、そもそも対象者にとっては参加意義が見いだせていない現実がそこにはある。核家族化が進む中、家族に一緒に対応してくれる人がいない場合は直ちに情報弱者となり、社会的不利益を被ることになる。その点コミュニティのつながりが強い地域弱い地域でも格差があり、対応としてはターゲットが現状どういった目的で情報ディバイスを利用しており、現状どのような機会を逃しどのような脅威があるのかを把握することが重要だ。AIを利用した会話形式のコミュニケーション技術の開発が一解決策として期待されている。

Participatory network in Iraq
メンバーズセミナー6週目。ILOバグダッド事務所での職務内容についての講演。イラクでは数十年に及ぶ紛争と多数の難民の発生によって何年もの間、人道支援のニーズの方が開発ニーズを上回ってきたが、紛争後再建活動の一環として復興・開発に取り組む緊急のニーズも徐々に増してきた。国内チームの育成、パートナーや政労使、他の国連機関との新たな関係の樹立、新規プロジェクト用の資金動員とその構築などを通して、古代文明と遺跡、天然資源などを有する潜在力を最大化させることが最大の狙い。具体的には、①民間セクターの開発が新規雇用の創出を支援②社会的保護の拡大と強化、児童労働への取り組み③就労に関わる権利の促進に向けた社会対話の改善、の3つが取り組みの柱で、地元の経済基盤構築をディーセントワークの視点を組み込んだ形で進めていこうとしている。ILOの基本理念である、「難民状況における脆弱な地域社会の自立の手助けを目的とし、雇用は尊厳であり、自立し、独立して暮らすことを希望し、家族を扶養することを望んでいる人々を支援する」という言葉に沿って、公共事業を通じた政府主導政策と並行する形で脆弱な集団が大いに必要としている民間雇用を創出するための出資を行っている。難しさでありやりがいでもある部分はカウンターパートや裨益者との関係構築で、数字や実績での説得力に加えて、関係者同士が同じビジョンを描き、理解し、動けるかを時間をかけて探っていく姿勢が大事。


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