インドは寒かった
2023年1月。
ひとり、念願のインドへ赴いた。
昔から何故かインド人と縁があり、フィジー留学中のホストファミリーもインド人の家庭で、英語の先生もインド人。成人後、今もたまにデッサンをしに行く教室の先生もインド人である。
フィジー留学中は毎日インドカレーでも苦では無かったどころか嬉しかったし、先生の影響で私の英語は少しインド訛りがある。
向かうはDelhi(デリー)。
首都であるため国内でも人口は多く、発展した都市である。
数ある街の中でデリーを選んだ理由は単純に飛行機が安かったから。観光地に興味は無いので、正直インドで過ごせればどこでも良かった。
エアインディアの良いところは機内食が必ずベジタリアンであること。わざわざ事前にオーダーしておく必要がない。
ベジ or otherといった感じで、ベジの方がブイブイ言っている(死語)。
街中でもそうだった。
よく通ったクラブ風のイマドキな飯屋でもベジ or other。
この時点で居心地の良さを実感する。
ちなみに左手を使わないという習慣を知っていたので右手で必死にロティ🫓を千切っていたが、周りの人々は左手も使っていた。それについて尋ねると本の読み過ぎだと笑われた。
勿論街は汚く、これぞインド!と楽しく闊歩していたが、その反面それを問題視した政府がゴミ処理及び生産物への取締りを強化し始めたそうだ。
世界的に問題になっているプラスチックゴミについても、生産の時点で制限がかかりはじめているようで、確かに外出チェーン店などでも木製の使い捨てフォークや紙ストローが広まっていた。
到着日はホテルに一泊し、翌日からホームステイ先へ移動。
場所は中心部から離れた、小さなスーパーや屋台がぽつぽつとある程度の場所を選んだ。しつこいようだが私は観光地が嫌いだ。ローカルの空気を吸い、ローカルの道を当てもなく歩く。これこそ旅行の愉しみ。
夜は危険なので基本的に出歩かずリビングで談笑していたが、ある日ナイトマーケットがあるからと連れ出してくれた。
ギトギトのパコラ(天ぷら)を山程喰らう。デザートもドーナツのような揚げた甘い小麦粉の塊に更にシロップがむせるほどかけてある。フィジー滞在中に体験したインドのお祭・ディワリで食べたような味だ。ノスタルジー。
そして激安の古着が山というか群れというか、無限にそこらじゅうに積まれている。派手な色のものばかり勧めてくるのも国民性を感じて良し。ダサかったので全て断ったが。
値段を尋ねるも恐らくそもそも決まっておらずその時の気分で答えていそうだが、ぼったくる気も無さそうな安心デリー価格だったのでイカしたストールを2枚買った。
ここまでの内容では、私はデリーという街がとても好きだ。
住めるなら住みたい。
食べ物は全部うまいし安い。
イージーでチルでファニーでカインド、程よくクレイジー。
頭狂-tokyo-に無いものがそこにはあった。
だが住みたいという点は非定形に訂正しておく。
あまりにも寒い。
とてつもなく寒かったのだ。
1月の平均気温や過ごし易い服装をしつこい程調べ、カーディガン一枚あればよいとのことで薄手のジャケットだけ持参したが裏切られた。
道行く人々、全員ダウンコート着用。子供は耳当てもしていた。
到着してすぐに裏起毛のパーカーを買った。
インドで極厚の裏起毛のパーカーを買うなんぞ、誰が予想したことか。
現地で色々と面倒を見てくれた友人には「結局UNIQLOのウルトラライトダウンが最高」と買うように勧められた。
インド人に現地でウルトラライトダウンの良さを熱弁される日本人は、私が知る限り、居ない。
そして夏はやはり暑いので、エアリズムが売れるらしい。
そしてもう一つ、
呆気なく死ぬ確率が高過ぎる。
交通ルールをまるで無視した国民全員が暴走族状態の車道。何度死を覚悟したことか。
道が空いていたら頭文字D状態。ぶっ飛ばさないと走れない仕様なのか?車線はあるようでないものとされていた。徐行という言葉のない世界。
そんな奴らが街中に集まると必要のない渋滞が起こる。少しでも隙間に入ろうとする後方車、そうはさせんと詰める前方車のせめぎ合いで、「いや普通に車線通り整列してたら渋滞しないでしょ」と、飛び交うクラクションのオーケストラの中で暫し困惑するしかなかった。
仕舞いには埒があかねえと堂々と逆走する友人。
これって捕まらないの?と驚くも、今まで捕まった事はないよ!と。答えになっていない。
こういう時に人は何故か笑いたくなる。ゲラゲラ腹をかかえたが、正面衝突したら命は無いと、とりあえず手に汗を握りつつ近くに眠るブッダに祈った。
飛行機は苦手な方だが、帰りの便はインドの車道に比べたら屁でも無い。意外な方法で克服してしまった。
マーケットで買ったイカしたストール(300円くらい)を抱き、帰りを強く惜しんだ。
インドは寒かった。
でもなんだか、確実にアツかった。
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