トークセッション w/金井冬樹さん
昨年8月、高円寺のギャラリー”FALTH”にて行われた
カナイフユキさん個展”BE KIND”にて、ご本人と対談をさせて頂きました。
※お名前について:現在漢字表記"金井冬樹"さんとしてにて活動されておりますが、記事当時はカタカナでのお名前でしたので、その通り表記させて頂きます。
2023/8/18(金) - 8/20(日)
カナイフユキ個展”BE KIND”
In FALTH https://www.instagram.com/faith_koenji/
加藤翠
今回の個展タイトル「BE KIND」という言葉がとても直接的な表現だと思うのですが、なぜその タイトルに至ったことや今回の作品たちで伝えたいことはどのようなものなんでしょうか。 私がいつも思うのは、「BE KIND」という言葉はシンプルながらもとても難しいことだと思うん です。 人間は絶対的にグレーな存在で、私自身が宗教美術を通して気づいたのはそのグレーであるとい うことを認識させるために、キリスト教や仏教で”絶対的なホワイトである天国”と”絶対的なブラックである地獄”というものを創ったんじゃないかと考えています。なのでこの言葉についてはでき る限りホワイトに近付こう、という気持ちを感じました。
カナイフユキさん
展示が決まってから当日まで一ヶ月くらいという短期間で今回展示してある新作を制作しました。まず展示が決まった時にタイトルを先に決めたかったんです。そこであんまり考え込まずにインスピレーションで直接的な言葉を使おうと思いました。
そこでなにを伝えたいか。 加藤さんの言葉を借りると、僕的には「グレーであることを受け入れよう」。どちら側に寄ってしまうこともあるけど、それも自分自身であることも優しさの一つだと思うんです。
加藤翠
なるほどそっちなんですね。でも確かに、それに気付けるか気づけないかで、自分の人生が変わっ てきますよね。 その点で言えば、極端な例ですけどヒトラーにもホワイトの部分もあるし、ガンジーにもブラックの部分があったと思うんです。生きてる以上、誰かに優しくもできるし、搾取する側になり得る。利己的になったり利他的になったり。
作品の話になると、私がフユキさんの作品に惹かれる点としては、基本的に色彩がぺールトーンで 優く綺麗、そしてフォルムや線もミニマム。柔らかな印象があるにも関わらず、人物の目に光が無いものが多いな、と気づいてしまったんです。それがミニマムの果てなのか、それとももしかしたら人間の闇の部分を含めているのか。 グルメ的な意味で言うとあっさりしていて喉越しがいいのに、少しコクがあるみたいな(笑)。だ からちょっと惹きつけられる。そう思うとカナイさんの作品に対して正解に近づけたような気が します。
カナイフユキさん
あはは、いい例えですね! 自分に優しく、自分手や時間をかけて、ちゃんとお世話をして。自分の気持ちや欲望にに忠実であって欲しいと思っています。そう言う意味では当たってますね。 自分の作品が自分の欲望に忠実になれているかと言うと、絵だけ...だとそうでもないんですけど、描きたいものは描けていると思います。なのでメイン作品も絵だけじゃなくて直接的なメッ セージを文字で書き示してみました。
加藤翠
確かに。文字の配置や素材も素敵で、ゆっくりじっくり読んでしまう。絵画にも文字があって良いと思う。そのわかりやすい例ですね。
そう言えば、今回実際にお会いするのは初めてですが、Instagramなどでもたまに交流させていただいてありがとうございます。SNSではどのようなことを意識していますか?
カナイフユキさん
SNSではあまり私情を絡めずに作家としてやりたくて。「作家としてのカナイフユキ」としてやっ ています。僕を性的な目で見る人とかは、別のアプリで交流したいと言うか。
加藤翠
それって「ナイモン(9 monsters=ゲイ版のマッチングアプリ)」とかですか?あ、これオフレコに したほうがいいですかね?(笑)
カナイフユキさん
いや、全然いいですよ(笑)やっぱり色々お詳しいんですね。
加藤翠
もちろん使ったことはないんですよ。しかも私ってシスジェンダー(性自認”自分の性をどのように 認識するか”と生まれ持った性別が一致している)と生まれ持った性別が一致している)の異性愛者 なんです。仕事上グラビアやアダルトの写真を撮っているので、女性の体って素敵だな・綺麗だな と思うんですが、そこに性的な欲望は全く無くて。むしろチ●ポ最高!くらいのドストレートな んですよ(笑)。なのに、昔から不思議とドラァグクイーンや女装子さん、BLなどのカルチャー心惹 かれたりすることが多いんです。 でも強いて言えば、通っていた高校がスカートだけじゃ無くてスラックスも履いてもいいと言う 学校だったんです。だからレズビアンではないけど、たまにイケメンの格好したい!と言うノリ で、男子のファッションに憧れて男子高校生みたいな格好をして生活していた時期がありました。
カナイフユキさん
僕が思うにそう言う部分ってとても曖昧だと思うんですよね。 加藤さんは自分のことをシスジェンダーって言っていましたけど、そう言う面があるなら少しぼんやりしていますよね。それこそ自分をカテゴリーに仕分けなきゃいけない風潮があると思うんですけど、個人個人にグラデーションがあるはずなんです。グラデーションが広いか狭いかの差はあると思いますけど。
加藤翠
確かに!私もユニセックスなファッションが好きなんですよ。気分によって超ガーリーな服を着る 日もあれば、メンズライクなパンツスタイルの日もありますし。でもそれって個人の自由じゃない ですか。 だからそれこそスカートとか歩きやすいし蒸れないし、利便性と言う意味も含めて男性もどんど ん履いたらいいのにな、と思うことが多いです。女性だけのものだったら勿体ない。 ファッションだけじゃ無くて、私は少しフェミニスト的な部分があるんですがその逆でもありま す。男だから泣いちゃダメとか、クヨクヨするなとか言う人には絶対反対です。女性も強くたくま しくなっても良いんだし。性別なんて人それぞれですし、壁を作らずにその中で好きなように生き ればいいじゃん!!って強く願っています。
カナイフユキさん
そうですよね。心の有り様は個人の自由なんで、それこそカテゴライズしなきゃとか、マイノリ ティだから隠さなきゃみたいな自由であるべきなのに強制されている社会ではありますけど、多くの意味を含めて自由になっていいはずなんです。なりたいものになればいい。それをすんなり許 してくれる社会であって欲しい。人間ってこうしなきゃいけない・と言うルールに縛られると絶対 に疲れちゃうから、そこを切り拓いていくことが重要なんですよね。
加藤翠
なるほど!それが「BE KIND」という言葉というか問いの正解なのかもしれません。 私も自分に優しく甘やかしたり、他人にも同様にしよう。って今、決めました。
カナイフユキさん、今回は素敵な作品と共に、素敵なお言葉もたくさん頂きありがとうございました。 対談の前に、生きづらさやマイノリティへのバッシングなどで亡くなる著名人のお話にも至り、 こころが痛くなる反面、”Kind”なフユキさんの作品を実際に見て希望を抱くことができました。
私が私淑する画家達はとっくにこの世にいません。この時代にタイムスリップできたらと思うことが多々あります。私はこの時代、カナイフユキという柔らかく繊細な巨人と同じ時代に過ごし、言葉を交わせたことに深く深く感謝しております。この度は誠にありがとうございました。
個展「BE KIND」は既に終了してしまいましたが、今後も展示の情報や作品についてはぜひ皆さんチェックしてみてください。
金井冬樹さん
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