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「アラビアの夜の種族」を推理する(その①補足 アーダム×ジンニーアについて)



考察その①では、ジンニーアはアーダムを愛していなかったとは言い切れないと述べました。

1補足 アーダム愛され説


私の考察がどの程度正解かは分かりませんが、もし予想通りだとすれば物語は根底から覆ってしまうと思います。

これまでジンニーアは人間をアリのようにあしらい、用済みになった男をあっさり惨殺する冷酷な邪神だと考えていましたが、アーダムが彼女を愛したように彼女もアーダムを愛していたとすれば見方も変わって来ます。

1巻のラスト、ジンニーアの姦計を見破ったアーダムがジンニーアを詰問する時の発言に「告白してしまえば愛していたのは」とあります。

彼の口ぶりからするとジンニーアに愛を伝えたのは、いよいよ彼女に裏切りの代償を支払わせようというこのときが初めてのように思えます。アーダムはジンニーアと幾度となくベッドを共にしてきたにも関わらず、その期間彼女に愛を伝えたことはなかったのでしょう。

思い出して頂きたいのですが、アーダムやファラーのように力ある魔術師は人の言葉を真実かどうか見抜く力があります。強力な魔物であるジンニーアも当然、同じ力を持っていた事でしょう。

アーダムが愛を伝えれば、ジンニーアはそれが真実だと分かったのです。

ですがアーダムはそうしなかった。

多分ですが「おれブサイクだし、蛇神様に愛を伝えても絶対キモがられるだけだわ」……と思ったのでしょう。

モテた経験が皆無な彼は、ジンニーアに愛される自信がなかったと思われます。(全くモテた事がない私はそういう気持ちがよく分かります(^_^;))
たとえ愛されないとしても、愛するジンニーアの役に立てればそれで良い。それに願ってもない事に、ジンニーアはこんな自分に目を掛けて、あろうことか体を許してくれさえもする。それだけで身に余る幸せではないか。

非モテメン・アーダムは、そんなケナゲな事を考えていたのかも知れません。

……ですがジンニーアの方もアーダムを愛していたとすれば、彼が愛を伝えてくれない事にかなりヤキモキしちゃうと思います。

「わたしの事、ほんとに好きなの?」とか「愛してるならそう言ってよ」とか、恋する女の子として思うのではないでしょうか??

しかし、ジンニーアがアーダムにそういう事聞いても、彼ははぐらかすばかりで答えてくれなかったと思います。

それはアーダム的には「恥ずかしいから」だったり「自分の思いを伝えて嫌がられると傷つくから」という奥手な理由なのですが、ジンニーアは別の理由を思い浮かべるでしょう。

以下ジンニーアの気持ちを妄想

「わたしには嘘を見抜く力があるわ。だから愛の告白を受けたとして、愛が真実ならそうとすぐに分かるわ」

「でもその代わり、偽りだとしたらそれもすぐに分かってしまうのだわ」

「彼が愛を伝えてくれないのはそれが理由ね。——愛の告白によって愛がないことを自白する羽目になるのを恐れているのよ、きっと」

「つまり……わたし、アーダムに愛されてないんだわ」

……ジンニーアはこういう風に、アーダムの気持ちを誤解したのかもと想像します。

その後、彼女はアーダムを犠牲にしてジンニスタンの封印を解く計画に踏み切ったのだろうと思います。

そうしてアーダムに「もう私を抱かないで」「誰とでも、好きな女と寝なさい」と言って閨事を撥ねつけますが、アーダムはジンニーアが相手しなくなると、代わりにそこらの女を手当たり次第に抱くようになります。

彼がそうしたのはジンニーアのたくらみを知るために眠りを断つ必要があったためなのですが、事情を知らないジンニーアは「ほらね、やっぱり女なら誰だっていいんじゃない! 私が側にいる必要ないじゃない!」とアーダムへの怒りを募らせた事だろうと思います。

こうした悲しいすれ違いのせいで、二人は実は愛し合っていたにも関わらず永遠に離れ離れになってしまったのではないでしょうか。。



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