ロラン・バルトのインタビュー集「声のきめ」「わたしは影響を信じない」

ロラン・バルトのインタビュー集「声のきめ」の中に「わたしは影響を信じない」と題されるインタビューが収録されている。

あなたの本はどんな影響を持ち得ると思いますか?
 
それらの形式そのものによって、これらのエッセーは「教義的な」意図を持っていません。わたしの目にはこれらは文学やモデルニテに興味のある人たちを対象として批判的テーマの「目録」、素材の選集を成すのです。わたしにとって、読書は潜在的な創造者です。わたしは読者に仕事の道具を、さらには(なぜなら知識の本ではないのですから)「レファレンス」のコレクションを提供しているのです。
その上、より一般的にいって、わたしには「影響」というものがよくわかりません。わたしに言わせれば、伝わるのは「言語活動」です。つまり人によってまちまちに満たされる形式なのです。ですから<影響>という観念よりは<流通>という観念の方がより正当に思えます。本は「力」であるよりは「貨幣」なのです。

ロラン・バルト 「声のきめ インタビュー集 1962-1980」

バルトの言う「作品からテクスト」への考えが窺える。テクストはあくまで「書かれた」ものなのであって、「影響を与えるもの」ではないのだ。作者が「意味の起源」ではないのだ。

作者は「意味の起源」のように考えられがちであるが、そうではなく作者が過去のあるときに、機械制作される布のように、紡がれ、織られた、ものである。そう言う意味で、

読者の誕生は、作者の死によって贖われなければならない

ロラン・バルト 作者の死

のである。大雑把に言えば、テクストはテクストであって、そのバックに作者を想定するものではない。テクストはある時点で織られた編み物であり、テクストは読者の側が「使う」ものだ。すなわち、本は「道具」であり「貨幣」なのだ。

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