薬制薬事の雑記(6) 事務連絡「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)について」の改正(2023/03/09)

令和4年3月9日付け事務連絡「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)について」が発出され、令和3年9月10日付け事務連絡「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)について」が廃止されました。

https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2023/03/1678342080.pdf

https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/218220/r030910iyakuhintouyunyuuteudukiqanda.pdf

改正前後を比較してみると、単純にQ77が追加されたことが変更点のようです。

Q77
 医薬品等輸入確認要領や通関取扱要領によれば、医薬品等製造販売業者又は製造業者による業としての輸入において、税関に対して提出すべき医薬品等製造販売承認書(写)等の資料として、承認等を受け、又は製造販売の届出をした者と輸入申告書等通関関係書類の輸入者名と同一性を有することが必要、とされている。医薬品等製造販売業者又は製造業者が医薬品等を業として輸入する場合、輸入申告書等通関関係書類上は、当該製造販売業者等を輸入申告における代理人販売業者等の当該製造販売業者等以外の企業を輸入者として、輸入することは可能か。可能な場合、実際に輸入申告を行う際に税関に提出すべき書類は。
A77
 当該製造販売業者等が法における製造販売業者等としての輸入の責務を果たす範囲において、販売業者等の当該製造販売業者等以外の企業が輸入申告を行うことは、法の禁ずるところではありませんので、当該製造販売業者が輸入申告における代理人であっても、医薬品等を輸入することは可能です。
 また、その場合においては、医薬品等輸入確認要領第8 2(6)に準じ、承認等を受け、又は製造販売の届出をした者と輸入申告書等通関関係書類における代理人が一致している医薬品等製造販売承認書(写)等を税関に提出してください。
令和4年3月9日付け事務連絡「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)について」より

一読して何を言っているのかよく分からないので、輸入手続きの背景となる根拠法を整理していきます。

<薬機法について>

薬機法において、輸入に関する規定は次の条文に置かれています。手続きは2つに大別されます。
 ① 業としての輸入 ---製造販売業/製造業
 ② 業ではない輸入 --- 輸入確認証を用いた手続き

「① 業としての輸入」について

(製造販売のための医薬品、医薬部外品又は化粧品の輸入に係る手続)
製造販売のために医薬品、医薬部外品又は化粧品を、業として、輸入しようとする製造販売業者は通関のときまでに、輸入しようとする品目について、次のいずれかが行われていることを証する書類又はその写し有していなければならない
一 法第十四条第一項若しくは第十五項(法第十九条の二第五項において準用する場合を含む。)の承認又はその申請
二 法第十四条の九第一項又は第二項の届出
三 法第十九条の二第一項の承認又はその申請

(製造のための医薬品、医薬部外品又は化粧品の輸入に係る手続)
製造のために医薬品、医薬部外品又は化粧品を、業として、輸入しようとする製造業者は通関のときまでに、輸入しようとする品目について、次のいずれかが行われていることを証する書類又はその写し有していなければならない
一 法第十四条第一項若しくは第十五項(法第十九条の二第五項において準用する場合を含む。)の承認又はその申請
二 法第十四条の九第一項又は第二項の届出
三 法第十九条の二第一項の承認又はその申請
四 法第八十条の六第一項又は第八十条の八第一項(原薬等登録原簿 (MF))の登録
則94-95条(則104条の56〜57は医療機器等)

この規定は省令に置かれており、法律の委任も受けていないので、罰則は置かれていません。

「② 業ではない輸入 --- 輸入確認証を用いた手続き」について

(輸入の確認)
・第十四条(医薬品等の製造販売)
 第十九条の二(外国製造医薬品等の製造販売)
 第二十三条の二の五(医療機器/体外診断用医薬品の製造販売)
 第二十三条の二の十七(外国製造医療機器等の製造販売)の承認
・第二十三条の二の二十三(指定高度管理医療機器等の製造販売)の認証
受けないで、又は
・第十四条の九(医薬品等の製造販売)
 第二十三条の二の十二(医療機器/体外診断用医薬品の製造販売)の届出
しないで
医薬品を輸入しようとする者(申請者)は、厚生労働省令で定める事項を記載した申請書に厚生労働省令で定める書類を添付して、これを厚生労働大臣に提出し、その輸入についての厚生労働大臣の確認を受けなければならない。
法56条の2-1項を簡略記載

省略しますが、この規定の詳細は省令に定められています。

(輸入の確認の申請) 略
(輸入の確認をしない場合) 略
(輸入の確認を要しない場合) 略
則218条の2の2〜4

なお、輸入確認証を用いた輸入手続きは、①と異なり、罰則規定(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科)が置かれています(法84条)。

<関税法について>

前提として、薬機法に係る輸入通関の権限は、関税法70条によって税関に委任されています。

「輸入」:外国から本邦に到着した貨物
      or
     輸出の許可を受けた貨物
     を本邦に引き取ること。
「輸出」:内国貨物を外国に向けて送り出すこと
関税法2条1項1〜2号(簡略記載)

ここでポイントになるのは、輸出と輸入に関しては、売買や所有権移転について言及していないということです。つまり自分が所有権を有していないものを受け取ったり、送り出したりすることも輸出や輸入に該当すると言えます。

<再掲>
ここでQ77に戻りましょう。

Q77
 医薬品等輸入確認要領や通関取扱要領によれば、医薬品等製造販売業者又は製造業者による業としての輸入において、税関に対して提出すべき医薬品等製造販売承認書(写)等の資料として、承認等を受け、又は製造販売の届出をした者と輸入申告書等通関関係書類の輸入者名と同一性を有することが必要、とされている。医薬品等製造販売業者又は製造業者が医薬品等を業として輸入する場合、輸入申告書等通関関係書類上は、当該製造販売業者等を輸入申告における代理人販売業者等の当該製造販売業者等以外の企業を輸入者として、輸入することは可能か。可能な場合、実際に輸入申告を行う際に税関に提出すべき書類は。
A77
 当該製造販売業者等が法における製造販売業者等としての輸入の責務を果たす範囲において、販売業者等の当該製造販売業者等以外の企業が輸入申告を行うことは、法の禁ずるところではありませんので、当該製造販売業者が輸入申告における代理人であっても、医薬品等を輸入することは可能です。
 また、その場合においては、医薬品等輸入確認要領第8 2(6)に準じ、承認等を受け、又は製造販売の届出をした者と輸入申告書等通関関係書類における代理人が一致している医薬品等製造販売承認書(写)等を税関に提出してください。
令和4年3月9日付け事務連絡「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)について」より

従来は、業としての輸入を行えるのは、製造販売業者か製造業者であるとしか読めない記載がされていました。

今回追加されたQ&Aでは、次の場合でも医薬品の輸入が可能と読めます。
 ・輸入申告者(保税地域から引き取る者):販売業者等
 ・代理人:製造販売業者
ということは、製造販売業者が物流/商流のどちらにも介在しなくても代理人として輸入申告を行えば、輸入が可能ということになる・・・ということになるのでしょうか・・・。

うーん、業界団体が要望したのでしょうか。なかなか大きな変更だと思われるのですが・・・

<通関業法の問題>

しかし、ここで疑問が残ります。
通関業法2条1項1号より、「輸出又は輸入」の「代理又は代行」は「通関業」に該当し、財務大臣の許可を受けなければならないと考えられます。
となると、Q77の回答のように製造販売業者であることをもって、輸入の代理人にはなれないのでは・・・

どうなのでしょうか?





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